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2.スイート・キング1
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「やばい。恐竜がいるんだけど」
「うん。好きなんだって」
「へえー。いいじゃん。祐奈のパズルは?」
「わたしの部屋……。まだ、ほとんど、段ボールに入ってるの」
「なんで。ここに、置かせてもらえば?」
「いいのかな……。ここ、四畳半しかないの。パズルを置いたら、狭くなっちゃうんじゃないかなって、思って」
「そっか。あっちの十畳を、二人で使えばいいのに」
「だよね……」
「ここに、恐竜グッズをまとめたかったのかな」
「まとめるっていうか……。隠したかったの、かも」
「あー」
「パズルね、飾りたいとは思ってるけど……。邪魔に、なっちゃわないかなって。それが心配」
「おしゃれだけどね。地球儀とか、暗いと光るやつとか」
「うん。だけど、これはわたしの趣味で、礼慈さんの趣味じゃ、ないから……」
「そのことも、話し合った方がよさそうだね」
「そうだね。ね、座って」
「うん」
こたつの電源を入れて、歌穂を誘った。
布団の中に足を入れると、わくわくしてしまった。
「歌穂と、こたつに入ってるー。『こどもの家』の、談話室みたい」
「あー。あったね。なつい」
「これ、礼慈さんが買ってくれたの」
「いいじゃん。あの人、やっぱり、そういう人だったんだね」
「そういう人、って?」
「彼女か奥さんがいたら、めちゃくちゃ甘やかすタイプに見えた。いそうには、見えなかったけど」
「たしかに、甘やかしてもらってる……かも」
「いいと思うよ。これまでの人生が、ハードモードだったんだから。そろそろ、回収しないと」
「回収?」
「不幸がたまってる分、幸せになれるよってこと」
「ありがとう……。それは、歌穂もだよ」
「うん。そうだといいな。
正直、うらやましい。これだけ恐竜を愛してる人だったら、相手の趣味とかが、多少変わってても、全力で受けいれてくれそう」
「歌穂は? 今も、タロットカード、集めてるの?」
「ううん。欲しいものは、だいたい手に入ったし……。きりがないから」
「そっか。……あの、これ」
ボアジャケットのポケットから、歌穂へのプレゼントを出して、渡した。
「なに? タロット?」
「うん」
「あたしに? ありがとう……」
目じりが少し上がってる、歌穂の大きな目が、もっと大きくなった。
「開けてみて。ちょっと、かわいいの」
口もとが、にやついてしまう。
これは、特別なタロットカード。歌穂が好きそうな、ゆるい感じの猫が、ぜんぶのカードに描いてある。
「ね、ねこー!」
「ふふー」
「うける! こんなの、あった?」
「ない。大学の友達……ゆさぼんと、みっちゃんに頼んだの。すごいでしょ。
ゆさぼんはイラストレーターで、みっちゃんは、こういう、カードの印刷をしてる会社にいるの。会社の人に、わざわざ頼んでくれたんだよ。社長さんが、いい人で、格安で印刷してくれたの。
手作りだから、この世に、ひとつしかない」
「ゆさぼんと、みっちゃん……。遊佐さんと三ツ矢さんだよね?
そのあだ名、まだ有効なんだ。そっちも、うけるー」
「うん。わたしは、『しらいちゃん』のまま」
「そうなんだ。会ってる? 最近」
「ううん。半年くらい前に、これのことをお願いした時に、会っただけ……。
卒業してからは、歌穂と会った回数の方が、たぶん多いよ」
「すごいなー。これ」
歌穂は、タロットカードをこたつに並べて、ひとつずつ眺めていた。
「小アルカナは、コピペなんだって」
「コピペ?」
「えっと、コピーアンドペースト。つまり、聖杯とかは、ぜんぶは描かないで、ひとつのものをコピーして、それを貼っていったの」
「ああ……。そういうことか。いいよ、ぜんぜん。
かわいいなー」
ふと、まじめな顔になって、わたしを見た。
「お礼が言いたいな。祐奈のスマホから、LINEを送ってもいい?」
「うん。もちろん」
その場で、歌穂がLINEのメッセージを入力して、ゆさぼんとみっちゃんに送った。
「うん。好きなんだって」
「へえー。いいじゃん。祐奈のパズルは?」
「わたしの部屋……。まだ、ほとんど、段ボールに入ってるの」
「なんで。ここに、置かせてもらえば?」
「いいのかな……。ここ、四畳半しかないの。パズルを置いたら、狭くなっちゃうんじゃないかなって、思って」
「そっか。あっちの十畳を、二人で使えばいいのに」
「だよね……」
「ここに、恐竜グッズをまとめたかったのかな」
「まとめるっていうか……。隠したかったの、かも」
「あー」
「パズルね、飾りたいとは思ってるけど……。邪魔に、なっちゃわないかなって。それが心配」
「おしゃれだけどね。地球儀とか、暗いと光るやつとか」
「うん。だけど、これはわたしの趣味で、礼慈さんの趣味じゃ、ないから……」
「そのことも、話し合った方がよさそうだね」
「そうだね。ね、座って」
「うん」
こたつの電源を入れて、歌穂を誘った。
布団の中に足を入れると、わくわくしてしまった。
「歌穂と、こたつに入ってるー。『こどもの家』の、談話室みたい」
「あー。あったね。なつい」
「これ、礼慈さんが買ってくれたの」
「いいじゃん。あの人、やっぱり、そういう人だったんだね」
「そういう人、って?」
「彼女か奥さんがいたら、めちゃくちゃ甘やかすタイプに見えた。いそうには、見えなかったけど」
「たしかに、甘やかしてもらってる……かも」
「いいと思うよ。これまでの人生が、ハードモードだったんだから。そろそろ、回収しないと」
「回収?」
「不幸がたまってる分、幸せになれるよってこと」
「ありがとう……。それは、歌穂もだよ」
「うん。そうだといいな。
正直、うらやましい。これだけ恐竜を愛してる人だったら、相手の趣味とかが、多少変わってても、全力で受けいれてくれそう」
「歌穂は? 今も、タロットカード、集めてるの?」
「ううん。欲しいものは、だいたい手に入ったし……。きりがないから」
「そっか。……あの、これ」
ボアジャケットのポケットから、歌穂へのプレゼントを出して、渡した。
「なに? タロット?」
「うん」
「あたしに? ありがとう……」
目じりが少し上がってる、歌穂の大きな目が、もっと大きくなった。
「開けてみて。ちょっと、かわいいの」
口もとが、にやついてしまう。
これは、特別なタロットカード。歌穂が好きそうな、ゆるい感じの猫が、ぜんぶのカードに描いてある。
「ね、ねこー!」
「ふふー」
「うける! こんなの、あった?」
「ない。大学の友達……ゆさぼんと、みっちゃんに頼んだの。すごいでしょ。
ゆさぼんはイラストレーターで、みっちゃんは、こういう、カードの印刷をしてる会社にいるの。会社の人に、わざわざ頼んでくれたんだよ。社長さんが、いい人で、格安で印刷してくれたの。
手作りだから、この世に、ひとつしかない」
「ゆさぼんと、みっちゃん……。遊佐さんと三ツ矢さんだよね?
そのあだ名、まだ有効なんだ。そっちも、うけるー」
「うん。わたしは、『しらいちゃん』のまま」
「そうなんだ。会ってる? 最近」
「ううん。半年くらい前に、これのことをお願いした時に、会っただけ……。
卒業してからは、歌穂と会った回数の方が、たぶん多いよ」
「すごいなー。これ」
歌穂は、タロットカードをこたつに並べて、ひとつずつ眺めていた。
「小アルカナは、コピペなんだって」
「コピペ?」
「えっと、コピーアンドペースト。つまり、聖杯とかは、ぜんぶは描かないで、ひとつのものをコピーして、それを貼っていったの」
「ああ……。そういうことか。いいよ、ぜんぜん。
かわいいなー」
ふと、まじめな顔になって、わたしを見た。
「お礼が言いたいな。祐奈のスマホから、LINEを送ってもいい?」
「うん。もちろん」
その場で、歌穂がLINEのメッセージを入力して、ゆさぼんとみっちゃんに送った。
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