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2.スイート・キング1

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 大好きな人の寝顔が、すぐ近くにある。
 朝、目がさめた時に。

 ずっと憧れていたシチュエーションが、先週末から、毎日のことになった。
 この寝室とは別に、わたしが使わせてもらってる部屋があって、そこに、わたしのベッドがある。でも、わたしから頼んで、一緒に眠るようになった。
 もし、狭いと感じるようだったら、わたしの部屋にあるベッドをいったんばらばらにして、寝室に持ってきて、セミダブルのベッドの横で組み直そうということになった。
 今のところ、わたしは、狭いとは思っていない。礼慈さんの感じ方は、どうなのか、わからないけれど。文句は言われていないので、大丈夫なんじゃないかと思ってはいる。

 起きてすぐに、トイレに行ったり、顔を洗ったりした。
 朝ごはんの用意をして、自分の分を食べてから、また寝室に戻ってきた。
 礼慈さんの寝顔を見ていたかったから。

 かわいい顔で寝ていた。
 長いまつ毛が、びっしり生えている。眉毛は、太くもなく、細くもなくといった感じ。形がとってもいい。
 高い鼻と、薄めの唇。黒いひげが、あごにちょっとだけ見えていた。

 ふっと目があいて、どきっとした。
 わたしを見て、礼慈さんの目が、少しだけ細くなった。
「おはよう」
「ふあー」
 かわいい返事だった。
「ねむたいの?」
「……ねむい。ねていい?」
「いいけど……。ごはん、できてるよ」
「ありがとう」
「どういたしまして」

 本当に、二度寝してしまった。少し、さびしかった。
 わたしも丸くなって、くっついた。あったかかった。


 うとうととしているうちに、眠ってしまったらしい。
 次に目がさめた時には、礼慈さんはいなかった。がっかりした。

「起こしてほしかった、です」
 リビングに言って、不満を伝えると、「ごめん」と言われた。
 礼慈さんは、しょっちゅう「ごめん」という。たぶん、口ぐせなんだろうと思う。
「わたしが、先に起きてたんです」
「うん。覚えてるよ」
「……ごはん、食べた?」
「もらった。ごちそうさま」
「おそまつさまでした」
「なあ。今日の午後、紘一と会うんだけど。祐奈も行かない?」
「えっ……。礼慈さんのお友達ですよね。いいんですか?」
「もちろん」
「時間、何時ですか? 準備しないと……」
「そんなに頑張らなくていいよ。カフェかどこかで、少し話をするだけ」
「どうしよう」
「どうもしない。大丈夫だから」

 お昼まで、家の中のことをしていた。洗濯とか、掃除とか。
 礼慈さんがお昼ごはんを作ってくれた。
 みそラーメンだった。おいしかった。

「時間。一時半になった」
「やっぱり、カフェですか」
「うん」
「わたし、着がえたり、お化粧したり……します」
「分かった」

 脱衣所の鏡で、鼻の下にうぶ毛が生えてないか、チェックした。大丈夫そうだった。
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