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『リヴァイアサンの魚介醤油ラーメン』6

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 その日の夜、リプイは自宅へ戻ると直ぐにシュリルへ電話を掛けた。
「もしもし?」
『おう! リプイ、元気にしているか?』
電話越しから聞こえるシュリルの応答にリプイは堪らず受話器を耳から離す。
「ま、まあね・・・・・・。
そっちはどうなの?」
『毎日、訓練で教官からしごかれているぞ! でも、日々自身が強くなっているのを実感出来て楽しい!』
「そ、そうなの! 良かったわね・・・・・・」
『それで、一体どうしたんだ?』
リプイは話すのを少し躊躇するが、さっき窓から見た景色を思い出して口を開く。
「実は、三日後の夕方に小隕石がロイアルワへ落ちるみたいなの。
それを貴方と一緒に協力して撃墜し、町を一緒に守って欲しい・・・・・・」
『ああ。いいぞ』
「えっ?』
シュリルの即答にリプイは目を点にさせる。
「疑わないの?」
『まあな。リプイが俺に頼んできたって事は、それなりの理由があるんだろう」
リプイは電話越しに笑みを浮かべる。
「ありがとう・・・・・・」
『気にすんなって! 俺も倒れてる時に助けてもらった借りがあるからさ』
「うん・・・・・・。
あ、作戦のためにシュリルへ渡したいものがあるんだよね。詳しい話もしたいし」
『じゃあ、明日の夜とか空いてるか?
十八時からは予定入ってないから』
「ええ。その時間なら会える筈よ」
『決まりだな!
じゃあ、ギルド前で集合な。
渡したいものってのはその時に頼む。
俺、明日早いからもう寝るぜ』
「うん。ありがとね!」
『おう! じゃあまた明日』
「また明日・・・・・・」
電話を切ると、リプイは受話器を見つめる。
私、良い友達を見つけていたんだね・・・・・・。

 次の日、少し肌寒い日がすっかり沈んだ夜。
厚着をしたリプイはギルド前にある広場へ着くと、時計塔の近くにあるベンチへ座る。
「少し早く着いたわね」
バッグの中に入ったネックレスを確認すると、聳え立つギルドの方を見た。
私に出来るのかな・・・・・・。
不安からリプイの脈が速くなる。
『ドクン、ドクン、ドクン、ドクン・・・・・・』
もし失敗したら、此処にいる人たちは・・・・・・。
辺りを見回すと、幸せそうなカップルや家族連れの姿があった。
絶対、皆んなを死なせるわけには行かない!
「待たせたな!」
声を聞いてハッとすると、目の前にシュリルの姿があった。
「どうしたんだ?そんな暗い顔して」
「いや、別に・・・・・・」
リプイは急いで立ち上がると、明るい表情を作る。
「じゃあ、どっか食べに行こうか!」
「飯!?
あ、でも・・・・・・」
俯くとシュリルは腹をさする。
『ぐうぅぅぅぅぅ!』
大きなため息を吐き、顔を上げてリプイの方を見ると両手を合わせる。
「なぁ、俺さ・・・・・・。
今金なくてよ。晩御飯奢ってくれねぇか?」
「フフフ・・・・・・。良いわよ。
そのくらいするわ!」
「本当か! よっしゃあ! 飯だぁぁぁぁ!」
シュリルが大声を出すと辺りに居た人たちが一斉に注目する。
「ちょっと! 恥ずかしいから大声出さないでよ!」
そう言うとリプイはシュリルの手を引っ張り、急いでその場を後にする。

 ギルドから少し離れたログハウス型のレストランの前でリプイとシュリルは立っていた。
「ここで良い?」
「勿論、ロイアルワで俺が一番好きな店だ!」
リプイがドアノブを掴むと、捻ってドアを開ける。
『カラン、カラン』
店内は仕事終わりの客で賑わっており、各々が酒を飲みながら談笑していた。
「いらっしゃい。
あ、シュリルにリプイちゃん!」
二人の声の先には背筋が伸びて、筋肉質なヤーハンの姿があった。
「こんばんは! マスター」
「マスター! いつもので!」
二人が辺りを見回すと、二人掛けのカウンター席しか空いていなかった。
「今日はカウンター席しか空いてないんだ。
それでも良いか?」
「えっと・・・・・・」
リプイが悩んでいると、シュリルがカウンター席に座ってしまう。
「リプイ、こっちだ!」
「もう! 何座ってんのよ」
「だって飯食うんだろ?」
ため息を吐くとリプイもカウンター席に座る。
ヤーハンはいつもと様子が違うリプイを眺めていた。
リプイがテーブルの上にあったメニューを広げると、ヤーハンが二人に水を置く。
「「「ありがとう」」」
二人が同時に礼を言うと、ヤーハンは優しく微笑んだ。
「リプイちゃん、なんかあったのかい?
今日はあんまり元気がないみたいだからさ」
「それは、えっと・・・・・・」
「リプイちゃんは嘘つけないんだから、無理に隠さなくて良いよ。俺も元は国代表勇者と冒険を共にした一人だ。
秘密は守る」
「その・・・・・・」
俯いて考えるリプイに対してシュリルが肩を叩く。
「ヤーハンが信用できるのはリプイ、お前が一番知っているだろ。
話しても良いんじゃないか?」
「分かったわ・・・・・・」
リプイはシファから聞いた話を二人に話し始めた。

×  ×  ×

 眉をひそめてヤーハンはリプイの話を聞きながらステーキを焼いていた。
「っていうわけなの・・・・・・」
リプイが話し終わると、様子を見てテーブルへ料理を置く。
「ミノタウロスのステーキ、一丁上がり!」
三キロはある肉塊の様なステーキを見たシュリルは目をキラキラさせて涎を垂らす。
「いただきまぁ~す!」
フォークとナイフを使ってがっつく姿を見てリプイは笑みを浮かべる。
「そんな急がなくても、ステーキは逃げないわ」
「リプイちゃんのも出来たぞ!」
すると、木の器に入ったミノタウロスのシチューが置かれる。
「うわぁ~美味しそう!」
「おかわりもあるから、遠慮なく言ってくれよ」
「ありがとう!」
早速、スプーンで一口飲むと顔をうっとりさせる。
「幸せ・・・・・・」
「相変わらず、二人とも旨そうに食うなぁ!
つい、作ってるこっちが嬉しくなっちまうよ」
二人はヤーハンの目を真っ直ぐ見ると満面の笑みを浮かべる。
「だって、ヤーハンの料理は最高だもの!」
シュリルはリプイの言葉に同意して、首が千切れそうな勢いで頷く。
「ハハハ! こりゃ嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか!」
三人は笑い合うと、和やかな食事の時間を過ごした。

×  ×  ×

 シュリルとリプイは食べ終えて、食事の余韻に浸っていた。
「リプイちゃん。渡したいものがあるんだ」
「えっ?」
そう言うと、厨房の奥にある金庫へ向かうと鍵を開けて何かを取り出す。
「正直さっきの話を聞いて、おじちゃんは行かない方が良いと思った。
どうにも、リプイちゃんの言ってた友達の事が信用できないんだよね」
表情を曇らせるとリプイは俯く。
「う、うん・・・・・・」
「でも、時に人は信じる者のために無茶をする生き物なのさ!」
リプイはハッとした表情で顔を上げた。
「これをリプイちゃんにあげる!
きっと、困った時に助けてくれるよ」
ヤーハンが手に持った物をみて、二人は目を見開く。
「それは・・・・・・」
「俺が冒険で世話になった魔力壊包丁だ」
「それは受け取れないよ!」
「良いんだ! 受け取ってくれ。
直感なんだが、いつか二人は何か凄いことを成し遂げてくれる気がするんだ!」
魔力壊包丁を木製のさやに納めると、リプイに手渡した。
「当日、必ずこれを持って行きなさい」
さっきまで笑っていた時とは雰囲気が違い、真剣な表情でリプイを見つめる。
「分かった。絶対に持っていくよ」
リプイが受け取ると、いつもの様に陽気なヤーハンへ戻った。
「俺は二人のこと応援してるから、これからも頑張ってくれよ!
じゃあ、最後にサービスのデザート」
ヤーハンは足元の冷凍庫からアイスクリームを取り出して二人に渡す。
「旨そう!」
 
 その後、二人は最後まで食事を堪能すると、ヤーハンに再び感謝の気持ちを伝えて店を後にした。

To be continued...
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