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『ギウマニールの豚骨ラーメン』7
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『プシュュュュ!』
辺りを囲むほどの蒸気が出る。
蒸気が晴れてシュリルを見ると、ミイラの様にガリガリになっていた。
シュリルが細くなってまずい状況に、龍拓は急いでボスを捌こうとする。
しかし、ギウマニールの屈強な肉体には簡単に包丁が入らなかった。
「筋繊維多いからどう捌くか……」
食い入る様に龍拓はギウマニールの体を見る。
「筋繊維に沿って切ってみるか!」
すると刃があっさりと入り、肉を捌けた。
直ぐに龍拓は火が通った表面の肉をシュリルの口に急いで突っ込む。
肉を食べると、元まではいかないがカサカサだった肌にハリが戻った。
そして、シュリルはうっとりとして顔がとろける。
「うめぇな、A級の肉は」
その光景に思わずリプイは涎を垂らしていた。
「リプイも食うか?」
龍拓が聞くとリプイは急いで涎を拭き、顔を赤らめてそっぽを向く。
「そ、そんな不気味なものいらないわ」
「そうか?こんな旨そうなのに」
そう言うと、捌いた肉を口に入れて龍拓も顔をうっとりさせる。
「こりゃ最高だぁ!」
リプイは杖を使ってシュリルに治療魔法を始める。
杖は緑色に光り、シュリルの萎縮した筋肉をほぐしていった。
「もう! こんな無茶しないでよね!」
「ハハハ! すまねぇ、レベルアップして得た新たなスキルを試したくてな!」
リプイの治療で直ぐに筋肉の萎縮がほぐれるとシュリルはすくっと起き上がる。
「ありがとな! リプイ」
「え、ええ・・・・・・」
リプイは笑みを浮かべるシュリルを見つめていた。
こんな、あっという間に治るなんて・・・・・・。
もしかして、以前よりも私の治療魔法が強化されてる!
龍拓はシュリルの方を見るとグッドジョブサインをする。
「今回はリクエスト通り、最高のラーメンを作ってやるからな!」
「おう! 俺を驚かせてくれ!」
龍拓は一体だけギウマニールを残して、それ以外をアイテムボックスにしまった。
そして、アルコール消毒液で手の消毒をすると、アイテムボックスから水が入った樽、まな板とさっき買った強力粉・薄力粉・重曹を取り出す。
「まずは、麺を作るか」
お椀に水を入れ、重曹と塩を加えて混ぜ始める。
打ち水はこんな感じで良さそうだな。
すると、どんぶりを取り出して強力粉と薄力粉を入れて混ぜ、打ち水を加える。
全体が馴染むまで混ぜるとまな板に移して力強く捏ねると纏まり、段々と生地になっていく。
『パァァァァァァアン!』
叩きつけながら生地の感触を愛でる様に龍拓は確認する。
「俺の愛に応えてくれよ」
そう言うと、生地に少しずつ強力粉を足して調節をした。
『クチュ・・・・・・』
龍拓は生地から発した音を聞き、顔をうっとりとさせる。
「応えてくれて、ありがとな」
リプイは生地に向かって喋りかける龍拓を不気味そうに眺める。
この先、私はこんなヤバイやつと一緒に居て大丈夫なの?
龍拓はリュックサックからサランラップを取り出すと優しく包む。
「よし。
可愛い生地を寝かせている間にスープ作りを進めないとな」
倒れているギウマニールの方へ行くと、龍拓は筋繊維に沿って黙々と捌き始める。
『ビシャアァァァ』
血しぶきが龍拓にかかる光景を見ていたリプイは思わず嗚咽する。
「もう、最悪・・・・・・」
血まみれになりながら骨と肉を分けると肉をアイテムボックスにしまい、水で豚骨の血や汚れを洗って次々と魔術鍋へ入れていく。
そして、ギウマニールのまるで巨大な鉄アレイのようなゲンコツを龍拓は持ち上げるとまな板に乗せる。
再びリュックサックの中を漁るとトンカチと醤油・塩・みりん、チューブの生姜・ニンニク・長ネギを取り出した。
『ドォォン!』
力いっぱい振り下ろしたトンカチはゲンコツに少しだけ傷を付ける。
一発では折れないか・・・・・・。
流石に普通のゲンコツとは違うな!
龍拓は何度も何度もトンカチを振り下ろし、漸くゲンコツが真っ二つになる。
「こりゃ、濃厚なスープが出そうだな!」
何とか割ったゲンコツから骨髄を出すと魔術鍋へ入れた。
× × ×
やっとの思いで龍拓はゲンコツから骨髄を出す作業を一体分行うと、魔術鍋にゲンコツと樽の水を適量入れる。
そして、魔術鍋の目盛を最大値に設定して蓋をした。
「リプイ! タヌーに火をつける呪文って何だっけ?」
龍拓の質問にリプイは地面に置かれたタヌーを眺めて不服そうな顔をする。
「ラロットよ・・・・・・」
「あ、もし良かったら手伝ってくれないか?
火加減も調整しないといけないし」
気持ちを察して龍拓が放った言葉にリプイは気を良くすると誇らし気な顔を浮かべる。
「しょうがないわね! 私が教えてあげるわ」
リプイが嬉しそうに龍拓の方へ向かうとラロットで火をつける。
すると、龍拓がギウマニール一体分入った重そうな鍋をタヌーに乗せる。
「それで、火加減はどうやって調節するんだ?」
「火を強くするならベッドケフ。
弱くするならハルーシと唱えるの」
龍拓はタヌーに向かって手をかざす。
「ベッドケフ!」
すると、燃え上がり魔術鍋全体を炎が包んでしまう。
「ハルーシ!」
急いでリプイが呪文を唱えて火を中火ほどに戻すと二人はため息を吐く。
「魔力のコントロールを近いうちに教えた方が良さそうね。
火力はこれで大丈夫?」
「ああ。ありがとな」
ふと龍拓がシュリルを見ると、ギウマニールのボスの体は既に八割以上食べられていた。
「おい、全部は食うなよ。
焼豚で使うから」
シュリルは残念そうに食べるのを止める。
「だいぶ復活したな」
シュリルの筋肉は元ほどではないが、動ける程度には復活していた。
「ああ! このギウマニールにはタンパク質が豊富に含まれているようだ!
だから、ラーメンを食べたらどれだけパンプアップするのか考えるだけで俺は・・・・・・」
『ぐぅぅぅぅ!』
シュリルの腹から大きな音が鳴ると涎を垂らす。
「なあ、ラーメンはどのくらいで完成するんだ?」
「そうだな。設定を最大値に設定したから一時間で良い出汁が出るだろう」
シュリルは思わず目を見開く。
「一時間も!
俺の胃袋が持つだろうか・・・・・・」
アイテムボックスから龍拓はもう一枚タヌーを出すと普通の鍋に水を入れる。
「それなら、今からトッピング用の煮卵を作る。それで少し食い繋いでくれ」
龍拓の言葉にシュリルは目をキラキラさせると、涎を滝のように垂らした。
「はぁ~煮卵か! 食べるのは久しぶりだ!」
「リプイ、火を頼む」
「火加減は?」
「最初は強火で頼む」
再びリプイはタヌーにラロットで火をつけると、強火ほどの火力に設定した。
「あ、そうだ!
リプイ、氷とかって出すことできるか?」
龍拓の質問で恥ずかしそうにそっぽを向く。
「氷の小さなかけらを四、五個しか出せないわよ。氷魔法は特に苦手だから・・・・・・」
すると、龍拓は満面の笑みを浮かべる。
「凄いじゃないか! それで十分だ」
リプイは意味が分からずに首を傾げた。
鍋の水が沸騰し、龍拓は卵を十二個入れた。
そして、七分茹でるとリプイがタヌーの火を消す。
「じゃあ、リプイ頼んだ」
誇らし気にリプイは笑みを浮かべると、杖を構えて水の入ったどんぶりの前に立つ。
「しょうがないわね!
ケマフ!」
リプイが呪文を唱えると、飲み物に入れる様な小さな氷が杖の先端から五個出てきた。
「ありがとう。 助かったよ」
そう言うと龍拓は氷が入ったどんぶりに煮卵を移した。
「な、なんて事ないわよ! ま、また何かあったら私を頼ってぇ・・・・・・」
リプイはたった五つの氷を出した反動で疲労から肩で息をしていた。
「おい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫よ。少し休めば元に戻るから……」
「わかった。じゃあ休んでくれ」
リプイはヨタヨタとシュリルの方へ移動すると力なく座り込む。
「ハハハ! 氷が無事に出て良かったな!」
「うるさいな・・・・・・」
煮卵を氷水でよく冷やし、龍拓が手慣れた手つきであっという間に全部の殻を剥くと一つを半分に割った。
すると、夕日のように綺麗なオレンジ色の見事な半熟の黄身を露にする。
龍拓は煮卵を口に運ぶと、その完璧な出来栄えに舌鼓を打つ。
「上出来だ」
直ぐに煮卵をリプイとシュリルに持っていくと、一つずつ渡した。
「食べてみてくれ」
「お! うまそうだな!」
「ありがとう」
二人は受けった煮卵を一口食べると目を見開く。
何、この卵・・・・・・。
白身と黄身が織りなす、ねっとりとしたハーモニー。
まるで干したての布団の様な心地よさが私を優しく包んでくれる。
リプイは自身の疲れが癒やされる心地良さから顔をうっとりとさせた。
「美味しい・・・・・・」
二人の反応に龍拓は満足気に笑みを浮かべる。
「そりゃ、何よりだ。
ラーメンでは二人をもっと驚かせるつもりだから期待してくれ」
「ああ、勿論だ! この煮卵が何よりの証拠だぜ!」
「そろそろだな」
龍拓は魔術鍋の方を見る。
『ピピピピピィ!』
シュリルは魔術鍋から聞こえた音に驚き、凝視する。
「一体、何の音だ!?」
「アラーム機能を早速使ったんだ。
設定した水位になると教えてくれる」
魔術鍋の方へ向かうとアラームを止め、龍拓はスープに浮かぶアクを取る。
そして、チューブの生姜・ニンニク・長ネギと醤油・塩・みりんをスープに加えて再び蓋をした。
「生地もいい頃合いだろう」
そう言うと、サランラップに包んで寝かせていた生地を取り出し、まな板に置くと強力粉で打ち粉をしながら伸ばしていく。
生地が薄く伸びると三つ折りにして、巧みな包丁さばきで均一な太さの細麺をあっという間に作った。
「これで麺の完成だな」
その後、シュリルに煮卵を摘まませながら味を調節して三十分煮込み、漸くギウマニールの豚骨スープが完成した。
To Be Continued…
辺りを囲むほどの蒸気が出る。
蒸気が晴れてシュリルを見ると、ミイラの様にガリガリになっていた。
シュリルが細くなってまずい状況に、龍拓は急いでボスを捌こうとする。
しかし、ギウマニールの屈強な肉体には簡単に包丁が入らなかった。
「筋繊維多いからどう捌くか……」
食い入る様に龍拓はギウマニールの体を見る。
「筋繊維に沿って切ってみるか!」
すると刃があっさりと入り、肉を捌けた。
直ぐに龍拓は火が通った表面の肉をシュリルの口に急いで突っ込む。
肉を食べると、元まではいかないがカサカサだった肌にハリが戻った。
そして、シュリルはうっとりとして顔がとろける。
「うめぇな、A級の肉は」
その光景に思わずリプイは涎を垂らしていた。
「リプイも食うか?」
龍拓が聞くとリプイは急いで涎を拭き、顔を赤らめてそっぽを向く。
「そ、そんな不気味なものいらないわ」
「そうか?こんな旨そうなのに」
そう言うと、捌いた肉を口に入れて龍拓も顔をうっとりさせる。
「こりゃ最高だぁ!」
リプイは杖を使ってシュリルに治療魔法を始める。
杖は緑色に光り、シュリルの萎縮した筋肉をほぐしていった。
「もう! こんな無茶しないでよね!」
「ハハハ! すまねぇ、レベルアップして得た新たなスキルを試したくてな!」
リプイの治療で直ぐに筋肉の萎縮がほぐれるとシュリルはすくっと起き上がる。
「ありがとな! リプイ」
「え、ええ・・・・・・」
リプイは笑みを浮かべるシュリルを見つめていた。
こんな、あっという間に治るなんて・・・・・・。
もしかして、以前よりも私の治療魔法が強化されてる!
龍拓はシュリルの方を見るとグッドジョブサインをする。
「今回はリクエスト通り、最高のラーメンを作ってやるからな!」
「おう! 俺を驚かせてくれ!」
龍拓は一体だけギウマニールを残して、それ以外をアイテムボックスにしまった。
そして、アルコール消毒液で手の消毒をすると、アイテムボックスから水が入った樽、まな板とさっき買った強力粉・薄力粉・重曹を取り出す。
「まずは、麺を作るか」
お椀に水を入れ、重曹と塩を加えて混ぜ始める。
打ち水はこんな感じで良さそうだな。
すると、どんぶりを取り出して強力粉と薄力粉を入れて混ぜ、打ち水を加える。
全体が馴染むまで混ぜるとまな板に移して力強く捏ねると纏まり、段々と生地になっていく。
『パァァァァァァアン!』
叩きつけながら生地の感触を愛でる様に龍拓は確認する。
「俺の愛に応えてくれよ」
そう言うと、生地に少しずつ強力粉を足して調節をした。
『クチュ・・・・・・』
龍拓は生地から発した音を聞き、顔をうっとりとさせる。
「応えてくれて、ありがとな」
リプイは生地に向かって喋りかける龍拓を不気味そうに眺める。
この先、私はこんなヤバイやつと一緒に居て大丈夫なの?
龍拓はリュックサックからサランラップを取り出すと優しく包む。
「よし。
可愛い生地を寝かせている間にスープ作りを進めないとな」
倒れているギウマニールの方へ行くと、龍拓は筋繊維に沿って黙々と捌き始める。
『ビシャアァァァ』
血しぶきが龍拓にかかる光景を見ていたリプイは思わず嗚咽する。
「もう、最悪・・・・・・」
血まみれになりながら骨と肉を分けると肉をアイテムボックスにしまい、水で豚骨の血や汚れを洗って次々と魔術鍋へ入れていく。
そして、ギウマニールのまるで巨大な鉄アレイのようなゲンコツを龍拓は持ち上げるとまな板に乗せる。
再びリュックサックの中を漁るとトンカチと醤油・塩・みりん、チューブの生姜・ニンニク・長ネギを取り出した。
『ドォォン!』
力いっぱい振り下ろしたトンカチはゲンコツに少しだけ傷を付ける。
一発では折れないか・・・・・・。
流石に普通のゲンコツとは違うな!
龍拓は何度も何度もトンカチを振り下ろし、漸くゲンコツが真っ二つになる。
「こりゃ、濃厚なスープが出そうだな!」
何とか割ったゲンコツから骨髄を出すと魔術鍋へ入れた。
× × ×
やっとの思いで龍拓はゲンコツから骨髄を出す作業を一体分行うと、魔術鍋にゲンコツと樽の水を適量入れる。
そして、魔術鍋の目盛を最大値に設定して蓋をした。
「リプイ! タヌーに火をつける呪文って何だっけ?」
龍拓の質問にリプイは地面に置かれたタヌーを眺めて不服そうな顔をする。
「ラロットよ・・・・・・」
「あ、もし良かったら手伝ってくれないか?
火加減も調整しないといけないし」
気持ちを察して龍拓が放った言葉にリプイは気を良くすると誇らし気な顔を浮かべる。
「しょうがないわね! 私が教えてあげるわ」
リプイが嬉しそうに龍拓の方へ向かうとラロットで火をつける。
すると、龍拓がギウマニール一体分入った重そうな鍋をタヌーに乗せる。
「それで、火加減はどうやって調節するんだ?」
「火を強くするならベッドケフ。
弱くするならハルーシと唱えるの」
龍拓はタヌーに向かって手をかざす。
「ベッドケフ!」
すると、燃え上がり魔術鍋全体を炎が包んでしまう。
「ハルーシ!」
急いでリプイが呪文を唱えて火を中火ほどに戻すと二人はため息を吐く。
「魔力のコントロールを近いうちに教えた方が良さそうね。
火力はこれで大丈夫?」
「ああ。ありがとな」
ふと龍拓がシュリルを見ると、ギウマニールのボスの体は既に八割以上食べられていた。
「おい、全部は食うなよ。
焼豚で使うから」
シュリルは残念そうに食べるのを止める。
「だいぶ復活したな」
シュリルの筋肉は元ほどではないが、動ける程度には復活していた。
「ああ! このギウマニールにはタンパク質が豊富に含まれているようだ!
だから、ラーメンを食べたらどれだけパンプアップするのか考えるだけで俺は・・・・・・」
『ぐぅぅぅぅ!』
シュリルの腹から大きな音が鳴ると涎を垂らす。
「なあ、ラーメンはどのくらいで完成するんだ?」
「そうだな。設定を最大値に設定したから一時間で良い出汁が出るだろう」
シュリルは思わず目を見開く。
「一時間も!
俺の胃袋が持つだろうか・・・・・・」
アイテムボックスから龍拓はもう一枚タヌーを出すと普通の鍋に水を入れる。
「それなら、今からトッピング用の煮卵を作る。それで少し食い繋いでくれ」
龍拓の言葉にシュリルは目をキラキラさせると、涎を滝のように垂らした。
「はぁ~煮卵か! 食べるのは久しぶりだ!」
「リプイ、火を頼む」
「火加減は?」
「最初は強火で頼む」
再びリプイはタヌーにラロットで火をつけると、強火ほどの火力に設定した。
「あ、そうだ!
リプイ、氷とかって出すことできるか?」
龍拓の質問で恥ずかしそうにそっぽを向く。
「氷の小さなかけらを四、五個しか出せないわよ。氷魔法は特に苦手だから・・・・・・」
すると、龍拓は満面の笑みを浮かべる。
「凄いじゃないか! それで十分だ」
リプイは意味が分からずに首を傾げた。
鍋の水が沸騰し、龍拓は卵を十二個入れた。
そして、七分茹でるとリプイがタヌーの火を消す。
「じゃあ、リプイ頼んだ」
誇らし気にリプイは笑みを浮かべると、杖を構えて水の入ったどんぶりの前に立つ。
「しょうがないわね!
ケマフ!」
リプイが呪文を唱えると、飲み物に入れる様な小さな氷が杖の先端から五個出てきた。
「ありがとう。 助かったよ」
そう言うと龍拓は氷が入ったどんぶりに煮卵を移した。
「な、なんて事ないわよ! ま、また何かあったら私を頼ってぇ・・・・・・」
リプイはたった五つの氷を出した反動で疲労から肩で息をしていた。
「おい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫よ。少し休めば元に戻るから……」
「わかった。じゃあ休んでくれ」
リプイはヨタヨタとシュリルの方へ移動すると力なく座り込む。
「ハハハ! 氷が無事に出て良かったな!」
「うるさいな・・・・・・」
煮卵を氷水でよく冷やし、龍拓が手慣れた手つきであっという間に全部の殻を剥くと一つを半分に割った。
すると、夕日のように綺麗なオレンジ色の見事な半熟の黄身を露にする。
龍拓は煮卵を口に運ぶと、その完璧な出来栄えに舌鼓を打つ。
「上出来だ」
直ぐに煮卵をリプイとシュリルに持っていくと、一つずつ渡した。
「食べてみてくれ」
「お! うまそうだな!」
「ありがとう」
二人は受けった煮卵を一口食べると目を見開く。
何、この卵・・・・・・。
白身と黄身が織りなす、ねっとりとしたハーモニー。
まるで干したての布団の様な心地よさが私を優しく包んでくれる。
リプイは自身の疲れが癒やされる心地良さから顔をうっとりとさせた。
「美味しい・・・・・・」
二人の反応に龍拓は満足気に笑みを浮かべる。
「そりゃ、何よりだ。
ラーメンでは二人をもっと驚かせるつもりだから期待してくれ」
「ああ、勿論だ! この煮卵が何よりの証拠だぜ!」
「そろそろだな」
龍拓は魔術鍋の方を見る。
『ピピピピピィ!』
シュリルは魔術鍋から聞こえた音に驚き、凝視する。
「一体、何の音だ!?」
「アラーム機能を早速使ったんだ。
設定した水位になると教えてくれる」
魔術鍋の方へ向かうとアラームを止め、龍拓はスープに浮かぶアクを取る。
そして、チューブの生姜・ニンニク・長ネギと醤油・塩・みりんをスープに加えて再び蓋をした。
「生地もいい頃合いだろう」
そう言うと、サランラップに包んで寝かせていた生地を取り出し、まな板に置くと強力粉で打ち粉をしながら伸ばしていく。
生地が薄く伸びると三つ折りにして、巧みな包丁さばきで均一な太さの細麺をあっという間に作った。
「これで麺の完成だな」
その後、シュリルに煮卵を摘まませながら味を調節して三十分煮込み、漸くギウマニールの豚骨スープが完成した。
To Be Continued…
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