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ガイル編

11.同じだから

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11.同じだから

「気持ちよかったね~」
「次どこ行こっか」
温泉に入ってリリーとセシルはすっきりしていた。
のんびりとガイルの街を歩いていると遠くから声が聞こえた。
「あ、ライアン!」
セシルが嬉しそうに声を上げる。ライアンは何か慌てたように走ってきていた。
「はぁ…はぁ…っ、セシルっ無事か?」
「何かあったの?」
リリーはライアンの様子が普通ではないことに気づく。
「僕は無事だよ?」
「そうか…何でもない。旅館に戻らないか?」
「えー!僕まだ観光したい!」
「いいからっ」
「ライアン、どうしたの?」
「話は後だ。旅館に戻ろう」
何かを警戒しているライアンにリリーは不思議に思ったが言う通りにした。セシルは不満そうだ。
「リリー」
ライアンがセシルに聞こえないように声を潜めてリリーに話しかける。
「セシルの…目…変わったりしたか?」
「目?」
それを聞いてリリーは港での出来事を思い出す。
「そういえば私たちの近くで殺人があったんだけどその死体見てセシルの様子が変だったわ」
「殺人!?誰が殺された!?」
初耳だったらしくライアンは驚いた。
「どうしたの?」
その声にセシルが振り向く。
「なんでもないよ」
それにリリーは微笑んで返す。
「ほら、私たちの船を受付してた人」
「なんで殺されたんだ?」
「わからない…ピストルで撃たれて海に落ちたらしいけど…」
「そうか……セシルの目、何色かに光ったか?」
「うん……真っ赤に…」
それを聞くとライアンは顔を青くした。
「話しかけると戻ったけど…あれなんなの?」
「……とりあえずジェームズたちと合流しよう」
「わかった」
そう言って前を見る2人。しかし、2人して血の気が引いた。
「セシルがいないっ……?」


「キース?どこ行くの?」
リリーとライアンが話し込んでいる間に待ち伏せしていたキースがセシルを裏路地へ連れ込んだ。
「うん、セシルに見せたいものがあって」
「見せたいもの?」
キースを怪しい笑顔を浮かべながらセシルの手を引く。薄暗い路地を通りだんだんと異臭が漂う。
「ねぇ、キース。臭いよ」
「そうだね」
そうして目の前の角を曲がる。
「ひっ…」
セシルは驚き尻もちをついた。
「綺麗だろ?恐怖を浮かべながら死んでるんだ。僕はこれが1番好きなんだ」
大人しいクールのイメージのキースが怪しく笑いながら血まみれの死体を触る。男女の死体だ。
「この2人ね。この前喧嘩してて。愛するもの同士。オレが操って殺し合わせたんだよ。そしたらもう最高で最高で……っ正気に戻った時の絶望の顔が今でも忘れられない♡」
キースは息を荒くしながら女性の方の髪を触る。セシルは腰が抜けたのかその場でブルブル震えていた。
「こ、殺さないで………」
茶色の瞳に涙をいっぱい溜めながら懇願する。それをキースは愛おしそうにセシル見つめる。
「大丈夫だよ。オレとセシルは同じだから」
「えっ…」
「セシルは無性でしょ?オレたちのエクスはこういう他人の絶望とか恐怖とかだぁい好きなんだ♡」
「そ、そんなことないっ」
「本当だよ?だから早くこっちにおいでよ♡楽しいよ?」
「やだ!やだ!……っ来ないでよ!」
じりじりとキースはセシルに近づく。セシルは這いながらもその場から逃げようとした。
「ふふっ怖い?泣きたい?逃げたい?」
キースはとても楽しそうにセシルを見つめる。
「無駄だよ」
いつの間にかすぐ後ろにキースがいた。キースを這っているセシルの上にのしかかりセシルの耳元で囁く。
「オレたち無性は必ずこの道を進むんだ。セシルは狂ってる。ただの人間じゃないよ。狂人なんだから」
「……っ、いやだ!」
セシルはキースを振り払いやっとの思いで立ち上がりその場から逃げた。
「あれ?おかしいな」
しかし、それに慌てた様子を見せずキースはセシルの後をのんびりと追いかける。
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