生まれたからにはアイデンティティ壊されたくないよね!

虹の番人兼シチ

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ガイル編

1.初めての旅

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1.初めての旅

この世界では3つの性がある。皆も知っている女性と男性。そして、無性。この3つの性別がこの世界の『人間』を分けているのである。そう。『人間』だけ。他の生物にはそのような傾向が見られない。発見されているのは『人間』だけなのである。しかし、その発見はごく最近で無性という性別の人間が存在はあまり知られていない。普通の人間は無性の存在を知らずに一生を終える。無性の人間は数が最も少なく。本人たちも隠していることが多い。一部では人間ではないのではという意見も出てきた。その結論に辿り着くのもわからなくもない。無性の人間はそれぞれ何かの能力を持っている。人間としてはありえない能力。例えばそれは瞬間移動だったり念力だったり、炎を自在に操ったり。例えばの話だがわかりやすく言えばこうなる。無性の人間は他の性別者たちからして恐怖の対象である。能力を持ち、性別がない。そして、無性の人間たちは人間とは思えないほど



─────狂っている。





「うわぁ!海だぁ!」
1人の子供が今にも落ちそうなほど船から乗り出していた。
「おいっ、セシル!危ないって!」
「大丈夫大丈夫!僕、そんな簡単に落ちないもん」
1人の少年がセシルと呼ばれた子供に注意を呼びかけるがセシルは気にせず水平線を眺めた。
「僕、海好きなんだぁ」
「でも、危ないよ。落ちたらサメさんたちに食べられるかもしれないよ?」
近くで船の掃除をしていた少女がセシルを優しくなだめる。
「さ、サメ!?やだ!僕、サメ怖い!」
「じゃあ、さっさと離れろよ!そして、お前も掃除しろ!リリーにばっかり押し付けやがって」
リリーと呼ばれた少女は落ち着いた雰囲気で顔をそばかすがある。普段あまり怒らないためセシルは甘えてしまうのだ。
「だって、水冷たいもん」
「『だって』とか、『もん』とか使ってあざとくしなくていいんだよ!可愛くねぇから!」
「えっ!ライアン、酷くない!?僕のガラスの心臓が今パリンッていったよ!?」
「だったらそのまま砕け散れ!」
ライアンは先程リリーが掃除していた場所とは別のところをやっていたがセシルの声が聞こえたためリリーのところにやってきたのだ。
「ていうかお前出発してからずっと騒いでるよな。うるせぇよ。遠くにいるのに鼓膜が破れそうだ」
「海は初めてなんだってば!」
「あー、うるさいうるさい」
ライアンは鬱陶しいと言わんばかりに自分の耳を塞ぐ。セシルは悔しそうにライアンを睨みつける。
「じゃあ、セシル。その辺泳いできたら?きっと楽しいよ」
それを見ていたリリーはまったく悪気がないような顔でセシルに微笑む。
「ごめんなさい。掃除します」
セシルはサーッと顔を青くしたわしとバケツを持って掃除を始めた。
「えっ」
リリーは親切心で言ったのでセシルがどうして謝ってきたのかわかっていない。
「お前さ、天然なのかサイコパスなのかわかんないな」
「えぇっ」
ライアンも呆れながら自分の仕事に戻る。その場でリリーだけだ困惑していた。

雲ひとつない空に広がる海。その中でセシルたちの船は目的もなく船旅を楽しんでいた。
昼の時間になってセシルは食堂に一目散にかけ出す。
「ルーナ!ごはん!ごはん!」
「うるさいんですけど」
ルーナと呼ばれた少女はテーブルに料理を運んでいた。眉間に皺をよせながらセシルを見る。
「別にいいじゃん!旅だよ!旅!楽しもうよ!」
構わず大きな声でルーナに話すがルーナは冷たい目でセシルを見るだけだった。
「あなたは勝手についてきただけじゃないですか」
はぁとため息をしながらルーナは食事の準備をする。ルーナは料理の腕前はプロ並みである。
「僕を仲間外れにするのが行けないんだろ!」
セシルは抗議するが出された料理に食らいつき美味しそうに食べ始めた。
「おう。もう昼か」
寝室の方から1人の男が入ってくる。大きな欠伸をしながらだらしない格好で椅子に座る。
「ジェームズおはよう!ずっと寝てたの?」
「朝っぱらからうるせぇな。俺は二日酔いだっつの」
「ジェームズ!もう昼だよ!」
だるそうにセシルと話している男はこのメンバーのリーダーである。この船には5人しか乗っていなかった。1人はリーダーのジェームズ・バトラー。毎日のように酒を飲み昼までずっと寝ているのだ。本当にリーダーなのか怪しいところだ。
「リーダー。もう少しシャキッとしてください」
誰に対しても敬語を使うルーナ・ウォーレス。彼女は常に落ち着いていて毎日美味しい料理を作っているのだ。
「うぉっ今日も美味そうだな!さすがルーナだ!」
次に食堂に入ってきたのはライアン・マルティネス。彼は暗器を扱うのが得意で色んな情報を取り扱ったりしている。いつもセシルとケンカばかりしていた。
「美味しそうだね。お腹すいちゃった」
優しそうな笑顔で入ってきたのはリリー・フローレス。彼女は医学に精通しており薬草や薬物に詳しい。とても優しいが天然なところがありメンバーを困らせるところがある。
「ルーナ!おかわり!」
セシル・シー。子供っぽくイタズラ好きでライアンにいつも怒られる。セシルは危ないことを毎回するが並外れた身体能力で本人が大怪我したことは無い。しかし、いつも周りはヒヤヒヤしていた。
この5人は目的もなく旅をしているが最初に向かう場所は温泉地帯の街。ガイルへと向かっていた。
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