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【天界編】

【19】天界に行き怒る勇者

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『ロイ、イルネスは下で待っててくれ。
 天界に行ってくる』

 ケッツァー、フール、ヴィスキは主天使祭以来、天界に戻ることになる。
 しかし今回は別の用件であった。

 ケッツァーがガブリエルを問いただす。

『ガブリエル様、お話があって参りました。
 今しがた2期生、3期生、4期生が全滅した知らせを受けました。
 更に現状を確認すれば1期生は我々のみ、あとは使えぬ5期生のみではありませぬか。この現状をどうお考えであるか?』

 ガブリエルはため息混じりに答える。

『その事か……
 死んでいった者に対しては大変残念に思う。
 だが、お前も知っている通り勇者とは、何時如何なる時でも勇ましく戦わなければならないもの!
 勇敢に戦い果てたのであれば本望であろう!』

 ガブリエルのこの発言でケッツァー、フール、ヴィスキの眼が変わる。

『本望だと……?』

『ヴィスキ待て!俺が話す!
 あんたら天使からしてみれば勇者1人が死んでも、取るに足らない事だろう。
 だがな、人1人が死んでんだよ!!
 それも大量に!!
 それが本望の1つで片付けられてたまるか!!
 俺達勇者にとって天使とは主でもあり、親でもあるんだよ!!
 産みの親に捨てられ、親と慕っていた天使にも見放されたら、何処に救いがあるんだ!』

『お前たち勇者は確かに子でもある。
 だが、勇者認定試験に合格した時点で天使から巣立ったのだ』

『巣立とうが、親だろうが!!』

 その時ウリエルとミカエルがケッツァーを制止する。
 ガブリエルは無言でその場をあとにしていった。

『ケッツァーごめんね。
 それにヴィスキ……ガブリエルは見放したんじゃないよ。本当は凄く悲しんでたの。
 だけど、主天使のトップに君臨する立場と不器用で上手く伝えれなかっただけ。
 天使の皆、凄く悲しんでた……』

『んなこと分かってるよ。
 でもね、時に人間は言葉を求めるものです。それはウリエル様もご存知でしょう。
 人間は些細な言葉で傷つき、些細な言葉で喜びます。
 主なら……その位してくれてもいいじゃないですか』

 ケッツァーの言葉に大粒の涙を流すフールとヴィスキ。

『俺たちの勇者としての異名は糞みてーなもんですが、実力は勇者最強と自負しております。
 結果としても出してますしね。
 1つだけ言っておきます。
 これからも勇者を排出し続けると言うのであれば、しっかりと面倒を見て、せめて戦えるレベルにしてください。
 はっきり言って使えませんし、魔王軍も嘗てより力を付けてきてます』

 ガブリエルがヴィスキへ謝罪をしに戻ってきた。

『ヴィスキさっきは、すまなかった。
 お前の気持ちを考えてない発言だった。
 ケッツァーもフールも、すまなかった。
 ウリエル、ミカエル、ありがとう』

 その姿を見てヴィスキは慌てて声をあげる。

『ガブリエル様!頭をお上げ下さい!
 子に頭を下げてはなりません!』

『ケッツァーよ、現状頼れる勇者は君たち以外に居ない。
 君の言うように、これからは勇者の育成に力を入れよう。
 そこで、これからの勇者たちの最強の模範勇者として君たちを勇者の三神に任命する。
 これは神イリス様より正式な任命だ』

 神イリスの名を聞き勇者たちは瞬時に平伏する。
 この世界のトップに君臨するのが女神イリスになり、天使であっても任命して戴く事だけでも、烏滸がましいものなのだ。
 それが勇者であっても人間に対し任命など有り得ないものであった。

 ガブリエルはケッツァーと話をし退室した後に神イリスへ現状報告と直談判に行っていたのである。
 このガブリエル、割といい奴なのであった。

『心して受けよ。
 神イリスより勇者ケッツァー、勇者ヴィスキ、勇者フールを神の名の元に三神に任命する。』

 勇者は平伏したまま一斉に答える。

『はっ!ありがたき!』

 天界と人間界に新たな英雄が誕生した。
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