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【青年期編】
【22】ハリネズミの正体
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「やっぱりあれだな、小さかろうが大きかろうが気色悪いものは気色悪いな」
「お前は本当に失礼な奴よの」
「しょうがねーだろ。感性は人それぞれじゃね?」
「ふん。それはそうと王国はこんなに遠かったかの?」
「さぁ、いつもは転移して来てるから距離的なもんは知らん」
「転移じゃと!?お主、転移ができるのか!?
バカな……それが許されるのは……」
「ん?何か言った?」
「お主、嘘偽りなく答えよ。
レベルはいくつだ?」
「85」
「んな訳あるか!私が150じゃぞ!」
「じゃー160」
「もういいから!答えてください」
「嫌だよ。なんで得体も知れんドブネズミに答えないといかんのや」
「ドブネズミではございません!見ての通りハリネズミですが!?目が腐ってらっしゃいますか!?」
「そんだけデカかったらドブだろうよ」
「ジャンガリアンハムスターも大きいですぅー!」
「あくまでもハムスターの中でって話な。
それもグラムだし、お前絶対トンあるじゃん」
「あるけども……しかーし!ドブネズミという単語には断固反対する!」
「はいはい。もう何でもいいよ。
どう見繕ってもネズミはネズミだし。
キモさは変わらん」
「元も子もないの」
「んでさぁ、転移したほうがいいのか?
俺はどっちでもいいんだが」
「転移が出来るのならそれに越したことはないの。
しかしいいのか?
妾を連れて行くという事は混乱を招く可能性が大いにあるということじゃぞ」
「だから言ってんだろ?お前が暴れたら俺が殺すって」
「ま、まぁ、こ、殺さなくても解決するとは思うのじゃが……」
「だったら大人しくしてろ。
今では女王は俺の大切な妻だ。
家族に害をなそうとするなら、俺もそれなりの行動をすると言うだけだ」
「なんと恐ろしく、無礼な奴じゃ……
よい。ならば転移を頼む」
ハリネズミからの依頼というのもあり、俺たちは王宮謁見の間まで転移した。
俺的にはのんびり日向ぼっこをしながら道草食って帰りたかったんだけどね。
まぁ仕方ない。
――王宮謁見の間――
「ああ、ディゼル君、女王は不在か?」
ちなみにディゼル君は俺の部下でもあり、今回俺に命令されて女王の護衛を申し付けてあった一人の将軍である。
「は!ザハル様お帰りなさいませ!
女王は現在庭園に行かれております!」
「そうなのね。ってお前はなんで行ってないわけ?そもそも護衛しろって言ったよね?」
「あの、その……」
ここは厳しく叱責しとかないといけないか。
「なに?」
「その、女王より付いて来るなと厳命を出され、ザハル様の命でと、お伝えしたんですが……」
「で?」
「最上級の下等生物を見る目をされまして、私の心は号泣しております!」
「知らねーよ!お前の心の号泣とか!」
「しかしですね、そうは言われますが、あの目は耐えれませんよ」
ディゼルという将軍は武勇において右に出るものは居ないと言えるほど、とてもとても優秀な将軍である。
だがしかし反面、メンタルが豆腐以下。
多分昔理科の実験の時に顕微鏡で使ったプレパラート並み脆く、既に虫の息に達しておりズタボロメンタルであった。
ポンコツばっかじゃねーか!
そんなディゼル君にはこれ以上強くは言えなかったってわけだ。
「わ、わかった。
良く頑張ったね。ディゼル君。
少し休みたまえ」
「ありがたき幸せ!」
一瞬で元気になったディゼル君ではあったが、背中には物凄い哀愁が漂っていたので、これ以上は何も突っ込まなかった。
「あのさぁ、あんたの部下……とてつもなくポンコツじゃない?」
「言ってくれるな、ハリネズミさん。
あれでも彼なりに職務は遂行してくれたのだよ。
それにディゼル君はね、戦場でこそ力を発揮する戦バカだから、普段はあのくらいのギャップがあっていいの。
これも彼の個性なんだから、認めてあげないとね」
「ふーん。妾なら切り捨てるわね」
「だろうな。
だからお前の統治は上手くいかなかったんだろうよ。
人の本質を理解しようともしないお前にはな。
人の悪い所を探すのは学校の勉強より簡単なことだ。だが、そんな人の中にも偉人になれるかも知れない人間もいる。
上に立つものは、可能な限りその人間のいい所を見つけて上げる必要があるんじゃないのか?」
「随分ご立派な事を言ってくれるじゃないの。
ではなに?あなたたちの統治は完璧とでも言うの?民草の性もない意見を聞き入れ、部下をコマにせず全ての人が幸せを感じれてるとでも?」
「いや、ないな」
「だったら私の考えも間違いではないでしょうが!」
「お前も転生者だよな?
そもそもあんなに近未来化した世界にいた俺たちは、当時からこの世の全ての人が満足していたか?
理屈と屁理屈は違うぞ。
何百年も生きておいて、小学生みたいなことを言ってるんじゃねーよ。
この世に全員が幸せになる体の良い話なんてないんだよ。
少なくとも守れる者だけは確実に守っていってやろうぜってことだよ」
「まぁよかろう。
お前たちもいずれわかる。
全てが無駄だということが」
「はいはい。もういいって。
そんなことよりも庭園に行くぞ」
何となくだけどさ。何となくコイツの弱さが分かった。
助けてくれる奴も当然いなかったのだろう。
こんな奴だ。周りから誰も居なくなってもおかしくはない。
全て無駄ねー……絶対抜け道あると思うんだよねー俺は。
まぁそれはレーニアに話してアイツが決めればいいことだな。
庭園を歩きティーテーブルがある所まで行くと、レーニアがお茶を飲みながら、少し退屈そうに仕事をしていた。
こういう時くらいリラックスして休んでればいいものを。
まったく……
「帰ったよ」
「お帰りー。早かったねー」
なんとなくレーニアの声が弾んでるように思える。
「見つかった?」
「ああ、見つけたよ。
それと、食材や物資もついでに色々持って帰ってきたから、何かに役立ててくれ」
「ほんとに見つかったの!?よかったー!
それにいつもいつも王国の為にありがとうね」
「気にするな。そんでお目当てのレジェンダがコイツだ」
そう言って俺はハリネズミをぶん投げた。
「わーー!何すんのよあんた!」
「うるせー!気色悪いんだよ!そのフォルムが!
ぶん投げられたくないなら人形になっとけよ!」
「ザハル……あんた安定して無茶苦茶するわね……」
「鳥肌MAX」
レーニアはハリネズミを丁重に起こし膝まずいた。
「我が夫が無礼を働き申し訳ございませんでした。
始祖さま」
なーにーーー!!!始祖さまだとーーー!!!
「お前は本当に失礼な奴よの」
「しょうがねーだろ。感性は人それぞれじゃね?」
「ふん。それはそうと王国はこんなに遠かったかの?」
「さぁ、いつもは転移して来てるから距離的なもんは知らん」
「転移じゃと!?お主、転移ができるのか!?
バカな……それが許されるのは……」
「ん?何か言った?」
「お主、嘘偽りなく答えよ。
レベルはいくつだ?」
「85」
「んな訳あるか!私が150じゃぞ!」
「じゃー160」
「もういいから!答えてください」
「嫌だよ。なんで得体も知れんドブネズミに答えないといかんのや」
「ドブネズミではございません!見ての通りハリネズミですが!?目が腐ってらっしゃいますか!?」
「そんだけデカかったらドブだろうよ」
「ジャンガリアンハムスターも大きいですぅー!」
「あくまでもハムスターの中でって話な。
それもグラムだし、お前絶対トンあるじゃん」
「あるけども……しかーし!ドブネズミという単語には断固反対する!」
「はいはい。もう何でもいいよ。
どう見繕ってもネズミはネズミだし。
キモさは変わらん」
「元も子もないの」
「んでさぁ、転移したほうがいいのか?
俺はどっちでもいいんだが」
「転移が出来るのならそれに越したことはないの。
しかしいいのか?
妾を連れて行くという事は混乱を招く可能性が大いにあるということじゃぞ」
「だから言ってんだろ?お前が暴れたら俺が殺すって」
「ま、まぁ、こ、殺さなくても解決するとは思うのじゃが……」
「だったら大人しくしてろ。
今では女王は俺の大切な妻だ。
家族に害をなそうとするなら、俺もそれなりの行動をすると言うだけだ」
「なんと恐ろしく、無礼な奴じゃ……
よい。ならば転移を頼む」
ハリネズミからの依頼というのもあり、俺たちは王宮謁見の間まで転移した。
俺的にはのんびり日向ぼっこをしながら道草食って帰りたかったんだけどね。
まぁ仕方ない。
――王宮謁見の間――
「ああ、ディゼル君、女王は不在か?」
ちなみにディゼル君は俺の部下でもあり、今回俺に命令されて女王の護衛を申し付けてあった一人の将軍である。
「は!ザハル様お帰りなさいませ!
女王は現在庭園に行かれております!」
「そうなのね。ってお前はなんで行ってないわけ?そもそも護衛しろって言ったよね?」
「あの、その……」
ここは厳しく叱責しとかないといけないか。
「なに?」
「その、女王より付いて来るなと厳命を出され、ザハル様の命でと、お伝えしたんですが……」
「で?」
「最上級の下等生物を見る目をされまして、私の心は号泣しております!」
「知らねーよ!お前の心の号泣とか!」
「しかしですね、そうは言われますが、あの目は耐えれませんよ」
ディゼルという将軍は武勇において右に出るものは居ないと言えるほど、とてもとても優秀な将軍である。
だがしかし反面、メンタルが豆腐以下。
多分昔理科の実験の時に顕微鏡で使ったプレパラート並み脆く、既に虫の息に達しておりズタボロメンタルであった。
ポンコツばっかじゃねーか!
そんなディゼル君にはこれ以上強くは言えなかったってわけだ。
「わ、わかった。
良く頑張ったね。ディゼル君。
少し休みたまえ」
「ありがたき幸せ!」
一瞬で元気になったディゼル君ではあったが、背中には物凄い哀愁が漂っていたので、これ以上は何も突っ込まなかった。
「あのさぁ、あんたの部下……とてつもなくポンコツじゃない?」
「言ってくれるな、ハリネズミさん。
あれでも彼なりに職務は遂行してくれたのだよ。
それにディゼル君はね、戦場でこそ力を発揮する戦バカだから、普段はあのくらいのギャップがあっていいの。
これも彼の個性なんだから、認めてあげないとね」
「ふーん。妾なら切り捨てるわね」
「だろうな。
だからお前の統治は上手くいかなかったんだろうよ。
人の本質を理解しようともしないお前にはな。
人の悪い所を探すのは学校の勉強より簡単なことだ。だが、そんな人の中にも偉人になれるかも知れない人間もいる。
上に立つものは、可能な限りその人間のいい所を見つけて上げる必要があるんじゃないのか?」
「随分ご立派な事を言ってくれるじゃないの。
ではなに?あなたたちの統治は完璧とでも言うの?民草の性もない意見を聞き入れ、部下をコマにせず全ての人が幸せを感じれてるとでも?」
「いや、ないな」
「だったら私の考えも間違いではないでしょうが!」
「お前も転生者だよな?
そもそもあんなに近未来化した世界にいた俺たちは、当時からこの世の全ての人が満足していたか?
理屈と屁理屈は違うぞ。
何百年も生きておいて、小学生みたいなことを言ってるんじゃねーよ。
この世に全員が幸せになる体の良い話なんてないんだよ。
少なくとも守れる者だけは確実に守っていってやろうぜってことだよ」
「まぁよかろう。
お前たちもいずれわかる。
全てが無駄だということが」
「はいはい。もういいって。
そんなことよりも庭園に行くぞ」
何となくだけどさ。何となくコイツの弱さが分かった。
助けてくれる奴も当然いなかったのだろう。
こんな奴だ。周りから誰も居なくなってもおかしくはない。
全て無駄ねー……絶対抜け道あると思うんだよねー俺は。
まぁそれはレーニアに話してアイツが決めればいいことだな。
庭園を歩きティーテーブルがある所まで行くと、レーニアがお茶を飲みながら、少し退屈そうに仕事をしていた。
こういう時くらいリラックスして休んでればいいものを。
まったく……
「帰ったよ」
「お帰りー。早かったねー」
なんとなくレーニアの声が弾んでるように思える。
「見つかった?」
「ああ、見つけたよ。
それと、食材や物資もついでに色々持って帰ってきたから、何かに役立ててくれ」
「ほんとに見つかったの!?よかったー!
それにいつもいつも王国の為にありがとうね」
「気にするな。そんでお目当てのレジェンダがコイツだ」
そう言って俺はハリネズミをぶん投げた。
「わーー!何すんのよあんた!」
「うるせー!気色悪いんだよ!そのフォルムが!
ぶん投げられたくないなら人形になっとけよ!」
「ザハル……あんた安定して無茶苦茶するわね……」
「鳥肌MAX」
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