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【幼少期編】

【13】人型魔物

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 魔物。
 数多くの種類がいる。
 雑魚から化け物級に強いものまで。
 魔物同士でも戦い喰い合ったりする事で、訳が分からない進化を遂げるものも存在する。

 進化の過程で存在自体を進化させるものもいる。
 所謂いわゆる存在進化だ。
 存在進化は魔物がなりたいものになるのか、元々決められたルートなのか……よくわからん。

 よくわからんが……今、目の前にいる奴らは全員が人型になっとる。

 人型?なぜ?更に全員イケメンと美女って……
 別にさぁブッサイクな奴が生まれても良くない!?

 マイムは可愛い系イケメン。
 レベル61
 適正:治癒魔術

 ナスビは妖艶な美女。
 レベル64
 適正:タンク

 クラーヌは細マッチョイケメン。
 レベル60
 適正:戦士

 なんだかなぁ……

「チッ」

 やべ……キアさんの機嫌が……だが気持ちは分かるぞ。
 なんか胸糞悪いよな?
 ナスビとか元々化け物みたいな見た目だよ。
 何でエロスが漂う大人の美女になってんかね?

 クラーヌに関しては骸骨だったし。
 なんで骸骨がフルモデルチェンジでシックスパックになるかね!

 マイムは……まぁそうなるよねって感じ。
 むしろ彫りの深いイケメンになってたら元の可愛さと釣り合わないから引いてたけど。

「あ、あのさぁ1つ聞きたいんだけども……もしかしてだけどー、お前らダンジョンから出れるんじゃないのー? 

「出れるよー」

「やっぱり」

「人間の住むところに行ってみたかだったんだぁ」

「条件がある。今はまだお前たちが単独で人の街を出歩くのは禁止だ。
 人の世界にはお前たちには理解できないルールが多く存在する。
 知識がなく出れば必ずお前たちの存在は厄災になる」

「えー何もしないよぉ」

「私は人間の男に興味があるだけよ」

「俺は筋トレと人間の女と遊びたいくらいだ」

「力の加減も何も分からないお前らがレベルの低い人間の前に現れてみろ。
 触れなくてもお前たちのメストで塵となり消えてしまうわ!」

「僕は甘いものをいっぱい食べたかっただけだよ」

「金は?」

「おかね?」

「な!そんな文化すら知らんだろ?稼ぎ方も使い方も。
 そこでだ。お前ら全員表向きは俺の護衛となり、裏では傭兵団を結成しろ。
 まずはここからスタートして色々学ぶんだ。
 お金とは何か?国とは何か?領地とは何か?
 そして人とは何かを学べ。
 気配の消し方やステータスの隠し方も教えてやる」

「いいの?」

「面倒くさいのね」

「俺は色々言われても分からん。ただ1つ言えるのはザハルは今までも正しかった。
 だから俺はお前の考えに従おう」

「面倒くさくてもしなきゃならん事はしなきゃならん。嫌ならお前だけここに残ってろ」

「ちょ、酷い!そんな事言わないでくださいよ旦那様」

「誰が旦那様じゃ!そういうとこやぞ!
 お前にそのつもりがなくても誤解を招く発言は禁止!今俺の物凄く近い所でブチギレ寸前のお方も居るんだから!」

「主、私からも1つ提案が」

「な、なにかな?」

「私もこの際、人型の分身を作りコイツらの教育係になろうかと思います。どうせこのままじゃダンジョンから出せませんし、かなり低い階層で気配の消し方とステータスの偽装を使いこなせるようになるまではと。
 その後はシガレット領土内にある未開拓の森。通常《灰の森》で傭兵団として拠点を構えようかと思いますがいかがでしょう?」

「うん。それでいいよ。
 クラーヌは俺の考えが間違いないと言ってたけど、俺にはキアの考えが何より間違いないと信じてるから、キアの好きなようにしてくれていいよ」

「主……たまには嬉しいこと言ってくれますね」

「たまに?俺から言わせてみたらいつも猛毒しか吐かないあなたにしては、すごく的確な事を言ってくれたなぁと驚いているんですけど?」

「主、私の言葉は愛のムチです」

「それあれだよ、DVするやつの理論だよ。
 まじで」

「そうですね。私も前世では酷いDVを旦那に受けてまして……」

「なんかごめーん!思い出させてしまってごめーん!」

「嘘ですけどね」

「その嘘必要ある!?ばかじゃねーのお前!?
 クソ腹立ったわ!」


 兎にも角にも魔物たちは理由の分からん進化を遂げ見た目は完全な人形に変貌したのである。
 しかもイケメンと美女という形で。

 キアの要請通り魔物たちを一旦5階層まで下げまずはメスとの収縮の仕方、それと人間と一緒に生きるには絶対に隠さなければいけない、ステータスの偽装工作を徹底的に覚えさせることにした。

 これにはまぁまぁの時間を費やすこととなってしまった。
 そりゃそうだよね。今までは生きる為に行ってた事を隠すんだもん。
 そりゃ大変だ。

 絶対に間違いが起きないように。
 自分の意志でメストをコントロール出来るように。
 ステータスはちょっと強めな冒険者として設定。
 この一連の教育には実に半年ほどの時間を費やした。

 そして今日は初めてダンジョンから人間界へ出る日。
 人間界に出て来ても基本的には灰の森が拠点となるが、護衛の任務を兼任してもらう為、一度シガレット家に来てもらうことになった。
 大手を振って自領に住まわせる為にね。


「うん。暫く見ないうちにいい感じに隠せるようになってるね。
 素晴らしいじゃないか」

「すっごく頑張ったんだよ」

「よく頑張ったね、マイム」

「これで町に行ってもいいよね?」

「そのためには俺の護衛って立場になってる方が動きやすくなるから、一度父上に面通ししておこう」

「まぁザハルの父上さまに?」

「いらん事考えるなよ」

「そんな何も考えてませんよ」

「いいかナスビッチ。俺の親父には妻がいる。
 誘うような真似をしたら絶対に許さんぞ」

「もう、ナスビは黙っててよ!
 ザハルたちが一生懸命、僕たちのために行動を起こしてくれてるんだ。
 ねぇ、ザハル。ナスビが変なことばかり言ってごめんね。
 悪気はないんだよ。ただ嬉しくてたまんないんだよ。
 グリースがここに居たならなぁ……」

「そうだな。グリースの思いの分も我々がザハルをお支えしようじゃないか」

「そうだね。ねぇザハル。これからも宜しくね」

「うん。こちらこそだよ。
 さっ、行こうか」

 その後、俺達は父上と会い父も母も凄く喜んでいた。
 設定としては飢えそうになっていた所を俺が助け、盗賊に襲われそうになった時に俺が助けてもらった。
 という、鬼のようなザックリとした説明で納得してくれた。

 流石は適当一族。

 こうしてマイムたち魔物はキアをリーダーとした傭兵団を作るべく灰の森に拠点を構え、護衛として週替わりでマイム・クラーヌ・ナスビの順番で人里で生活する毎日が始まった。

 そして俺は10歳になったのだった。
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