虹色浪漫譚

オウマ

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 今日は仕事も予定も何もなし。よって、まだ昼間といえる時間だったけれども茶都ちゃん目当てで遊郭に足を運んだ。話だけでも出来たらという思いだった。なのに何故か入り口に顔を出した途端「まあ、私に会いに来てくれたのね!」と香ちゃんが出てきちゃって「せっかくまだお日様が出ているから」とかなんとか言われてなんか断る間もなく腕を引っ張られーの、そのまま二人で街を巡ることになってしまった。
 なんで、こうなるのー!?
 こんな着物が欲しい、こんな髪飾りが欲しいと強請られつつ呉服屋を連れ回され、いつまで連れ回されちゃうんだろかと心配になってきたので、そういや香ちゃんは新しい髪飾りが欲しい~、お勉強代だと思って買って買って~って言ってたから髪飾りだけでも買ってあげたら満足するかと好きなものを選ばせてみた。
「これがいい! 花飾りがとても綺麗! でも、ちょっと高いわね……」
「ううん。いいよ、それくらいなら。約束だったもんね。お勉強代だと思って買ってあげる」
 女性に何か買ってあげるのは嫌いじゃない。
「本当!? 嬉しい!! 香、これ凄く大事にする!!」
 作戦成功、香ちゃんは凄く喜んだ。俺の財布は泣いた! けど、まあ、女性の笑顔には代えられない。とにかく気を良くしてもらったところで少し休憩しようと提案し、やっとのことで茶店に入ったのはいいものの、嗚呼、何故こうなってしまったのか。分からん! 俺には分からん! 俺は茶都ちゃんに会いたかったのに!
 まあまだ香さんも可愛い女性だからいいけど、いいけどー……、俺の頭はずっと上の空。これじゃ香さんにも失礼だよな。だから、ちゃんと言わなきゃ、いけない――ん、だろう、けど……けど……。嗚呼、俺って本当に意気地なしだ。
「銀次さん。香ね、今度ね、歌舞伎が見たい!」
 俺の横にべったり張り付いて上機嫌に紅茶を口にしながら香ちゃんが言う。買ってあげた髪飾りをとても気に入ったらしく、早速頭に付けたそれを度々手で触ってる。今もまた触った。
「歌舞伎~? なんでい、また藪から棒にぃ。目当ての役者でも?」
「司馬翠(シバ ミドリ)って役者が凄く色男なの。うちの姉様達が買うくらいなのよ」
 男を御買い上げ、わーお!! 全く、女性を金蔓にするとは、これだから歌舞伎者ってヤツは解せん。
「ほお~。俺より色男なのかな? まあいいや。では早速に席を手配しよう。俺はいつ仕事があるかも分からないから、もしかしたら一緒に行けないかもしれないけど~……」
「いやあね! 香は銀次様のが断然好き! って、え~!? 嫌だ一緒がいい~~!! ……あっ」
 他に客が入ってきたのを見て香ちゃんが俺から少し身体を離した。ちゃんと常識のある子なんだよな。流石、評判の良い遊女だけある。それとなく約束をはぐらかそうとした俺の胸がキュンと痛んでしまった……。
「分かった、一緒に行けるよう努力はするから。何せ不規則な仕事だからねー。いつ行きたい? せっかくだから最前列の席を取りたいもんだなあ」
「銀次さんの御都合に合わせます。だから一緒に行こう?」
 か、可愛い女の子に笑顔でそんなこと言われたら俺、断れないよ……。しかもテーブルの下でこっそり貴女、ドコ触ってんのナニ触ってんの!? それ俺のチンポコだよ、フニフニ触っちゃダメ~!!
「わわわわわ、分かった一緒に行こう。だからそこはダメだ触っちゃダメだよ、うんっ」
「エヘッ。……あ。もうこんな時間。香そろそろ行かなきゃ。浮気しちゃ嫌よ? またね」
「あ……、ああ、うん。それじゃあまたね」
 手を振り、歩き去っていく香ちゃんを見送る。……いけないぞ俺。食われかけてんじゃないかコレ!? どーしましょ!? うおおおおおお、どうして俺はこんなにも押しに弱いんだあああああー!!
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