虹色浪漫譚

オウマ

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 どうしよう。初めてお客様に「指名したい」と言ってもらえた。
 でも、私は、まだ見習い……。
 あの御方は遊郭の理をあまり御存知ないのだろうか。……ないのだろうな。あんなに精悍な容姿をしているんだもの、遊ぶような人にはとても見えない。今日は大人のお付き合いか何かで仕方なく足を運んだと思うのが妥当かしら。
 嗚呼、背が高くて優しそうに微笑むとても素敵な人だった――。
 本当に、また、来てくれるのかな。何だろう、今、とても胸がムズ痒い。
 まさか、これが『恋』というもの?
 身売りされた時、もうそんな気持ちを抱くこともないんだろなって、諦めてたのに……。
「茶都ちゃーん! 銀次様また来て下さるって! あと今度、外で会う約束もしちゃった! えへへ、やったやったー!」
「まあ、香姉様ったら。いいなあ、何処へ遊びに行かれるんですか?」
 とても上機嫌に香姉様が帰ってこられた。遊びに、行っちゃうんだ……。あの人、押しに弱いのかな。優しそうだもんなあ。
 男の人なんてみんな怖いと思ってたのに、あの人からは全然そんな感じは受けなかった。こんなの、初めて……。
「それはまだ決めてないんだけどー、どうしよっかなー。迷っちゃうなー」
「香姉様、嬉しそう。羨ましいですっ」
 本当に、羨ましい。
 私、頑張らなくちゃ。早く座敷に上がれるようにならなくちゃ。
 瑛葉銀次さま。私、貴方の名前しっかりと覚えましたよ。
 せめて座敷に上がれたら、そして貴方に指名してもらうことが出来たら、お酌くらい――出来るよね?
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