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咲に見送られて帝国議会に向かう。やれやれ、俺の女房はなんて完璧な女なのだろう。おかげ様で午前中からあんなに頑張ってしまった。腰が痛いぜ。ハッハッハッ――なんちゃって、いつまでも浮かれてる場合じゃない。
今日、俺のやるべき仕事は決まっている。何がなんでも瑛葉銀次を捕まえること!
目的の人物は通路で擦れ違う議員達と挨拶を交わしていた。高貴な一族の出身だ、彼を狙っているのは俺だけではないのだろう。
「銀次くん! 今日は取って置きの女を紹介するよ」
人波が去ったのを見計らって声を掛ける。突然に「女」という言葉を投げかけられて驚いたのか、彼は目を真ん丸くさせた。
「え? 何ですか椿谷(ツバキヤ)さん、急にそんな」
「アカギでいいよ。遊郭、まだ行ったことないんだろ?」
「ああ、はい! アカギさん! 自分は遊郭に足を運んだことはないです! ああ良かった、そっちの話で。また新たな見合い話かと思いましたよ~。えっと、ひょっとして俺を遊郭に連れて行って下さると?」
色狂いだが遊郭へ足を運んだことは無し、か。彼のお父上は厳しい人だからな。目立った行動は一応謹んできたのか。なのに色狂いで有名ってどういうことだ。
「見合いねえ。もうそんな年頃かあー。……行くか? 絶世の美女を押さえてある。この椿谷アカギ、嘘は言わん」
「はい、お父様はもう身を固めろと。まあ気にしませんがね! と、いうことで、行きます! 行きます! 絶世の美女、信じてますよアカギさん!」
なんという輝く瞳。これは噂通りだな。黙っていれば実に精悍な青年なのに勿体無い。
ふと、苦笑いを押し殺していた俺の耳にカランカランと下駄の音が届いた。この議事堂において未だに下駄の音を響かしている、しかも天をも貫く大男! と、いえば雪村士郎(ユキムラ シロウ)しかいない。あの異国の文化を嫌う堅物さんに瑛葉を言いくるめられたら厄介だ。
「君は背も高いし目鼻立ちのはっきりとした顔だ、洋装のが似合うかもしれないなあー。じゃあ行こうか」
素知らぬ顔をして俺たちの後ろを通り過ぎようとしていたアイツにわざと聞こえるように言ってやった。
案の定、何か言いたげな顔をこちらに向ける。ただでさえ彫りの深い強面が更に――な、表情だ。しかし言い合いをする気分ではなかったのか、そのまま向こうへと行ってしまった。
いつかアイツの意志をへし折る。それが俺の目標。
銀次を連れて馬車に乗り込む。「どれほど美しい女性なのか」と、彼はとても期待を膨らませている様子。よしよし、出だし好調、と。
「遊女と言っても今日、君の為に用意した遊女はその辺の女とは格が違う。知識も教養も自分より上だと考えたほうがいい。客がクズだとわかると五分で上手く逃げられちまうぞ」
「ええ!? なんと難しそうな方だ、果たして僕に扱えるでしょうか!? 何か助言をいただきたいですアカギさーん!!」
おや、緊張しているのか? 意外だな。
「大丈夫、性格は砕けてて話も上手い。そう構えるな。ただー……、無礼な振る舞いをすると俺まで出入り禁止になるから気をつけろよ」
「えっと無礼な振る舞い……。まあ、とりあえず普通にしていれば大丈夫ですよね!?」
コイツ相当緊張している!? そわそわと実に落ち着かない様子だ。なんて初々しい。色狂いのくせに。
「大丈夫。会ったら最後、頭が真っ白で夢心地さ」
なんだかんだで普通の若者だな。俺も初めて遊郭に足を運んだ時はそれはもう……、などと思い出に浸って程なく馬車は遊郭に到着した。
門をくぐって敷地内に入ると屋敷の出入り口に馴染みの男が立っていた。遠目からでもよく分かる金色の頭が俺を見るなりお辞儀する。
「いらっしゃいませ」
「よお、蒼志(アオシ)! ……どうだ銀次くん、美人な混血だろ」
「椿谷さん、いらっしゃい。美人だなんて嬉しいな。そちらの方は?」
金色の髪に青い目、白い肌――美麗な容姿とは裏腹に遊郭の用心棒という物騒な職に就いているのが難点だが。普段はこんなに温和な顔をしているのに腰元に下げてる木刀が実におっかない。いざとなったらそれで何をしちゃうんだろうか。
「嗚呼、本当に美しい。もう頭が真っ白で夢心地だあ……って、これ男の人じゃないですか!!」
「うむ。良いノリツッコミだ。……蒼志、この実に元気のいい男は俺の大事な連れだ、丁重にな。さあ銀次君、行こう」
「そうですか。ごゆっくり」
朗らかに微笑む蒼志に見送られて遊郭内に入る。途中、見習いの娘達に「いらっしゃいませ」と出迎えを受ける度に「あ、どうも」と、恐縮した風に銀次は会釈をしていた。そして座敷に上がり支配人に出迎えられると、いよいよ彼の緊張は最高潮に達したようだ。物凄く動作がギクシャクしている。まあ、この支配人、顔スゲー怖いしな。
「椿谷アカギ様、いらっしゃいませ」
「おお、無理言って悪かったね潮田(ウシオダ)。こちら瑛葉銀次さんだ。お父上に続いて政界入りなされる」
「は、はい! 瑛葉銀次です! よろしくお願い致しますの初めまして!」
銀次君、如何にも初心者です、な感じだ。
「瑛葉銀次様、いらっしゃいませ。私はこの遊郭の支配人をしております潮田カンクローと申します。よろしくお願い致します。すぐに酒の用意をしますので」
「…………固くなり過ぎだから! もっとどっしり構えていいから!」
支配人が去ったのを見計らって銀次に耳打ちした。だが、……あんまり効果はないようだ。正座したままブルブル震えてしまっている。しかし――娘が一人、座敷に来た刹那、彼の目つきが変わった。
「失礼致します。香(コウ)と申します。モモ姉さんお色直しにお時間がかかりまして、その間、私でご勘弁を」
「おおおおおおおおお!! 可憐だ!! なんと可愛らしい!!」
「銀次……」
なんだその水を得た魚のような変わり身は。どんだけ女好きだよ全く。まあ、香は確かに可愛い娘だし思惑通りだし、いっか。
「おお、香! こちら瑛葉銀次さんだ! なかなか男前だろ?」
「アカギ様いらっしゃい。……銀次様? まあ、素敵な方」
俺たちに酒を注いで銀次にうっとりと寄り添う香。しめしめ、銀次め、上機嫌だ。笑顔でグイグイと酒を呷っている。さっきまでの緊張は綺麗に吹っ飛んでいったようだな。
「名前は香と言うのか。可愛らしい本当に可愛らしい実に可愛らしい!! アカギさん、貴方の申した通りだ!!」
「おいおい、もう頭が真っ白なのか? だけどモモに比べたら香はまーだまだ」
「アカギ様、酷い~! そりゃあ姉さんに敵う女なんていませんよ!」
香が頬を膨らませた。それがあからさまに媚びて見えないあたり、まあ彼女もなかなかの娘ではある、かな。
「この香ちゃんが敵わないとは、モモさんとは一体どれ程の女性なんですか?」
気になる、といった風に眉間に皺を寄せる銀次を「焦るな焦るな」と制す。女のお色直しってのは時間がかかるもんだ。それを黙って待てるか否かで男の良し悪しが出る。なんつってな。
――カタンッ。
音がしてゆっくりと襖が開いた。
「……ほら、来たぞ」
銀次に耳打ちする。が、コイツは聞いているのかいないのか、襖に目が釘付けになったまま固まっている。さては、やって来た艶やかな桃色の着物の花魁に頭が見事に真っ白になったか。
お役御免とばかりに香が銀次から離れて俺の隣に付く。
「遅くなりまして申し訳御座いません。私、モモと申します。香ちゃん、どうもありがと。さ、お飲みになって銀次様」
「……美しい方だ……。貴女のような美しい女性は初めて見ました……」
目と口をポカンと開けたまま銀次が喋る。
「そんな大袈裟やわ~! あら、いい飲みっぷりですこと」
モモが手を叩いた。なにせ何だか知らないが急に銀次の酒を飲む勢いが半端でなくなった。なんなんだ、お前のそのカラクリ人形のような不自然な動きは!? さっきまでの余裕は何処へ行った!? まあ、大柄な男だ、簡単には潰れないだろうが……。
さて、ここから先はモモに任せるか。
「後は二人きりにして欲しいか?」
「え? ………………はいっ」
断ったら男が廃るという意地だろう。銀次は素直に頷いた。
「銀次くん、ここの払いは俺持ちだ、気にせず遊んでいけ。香、違う部屋で飲もう」
後は任せたとモモに目配せをして座敷を出る。
「はい。……銀次様、またいらしてね」
襖を閉めながら香が微笑んだ。……この娘、さり気に銀次を気に入ったのだろうか、そんな様相だ――――ってのは、勘違いだったかなあ~?
別室に移るなり俺に纏わりつきだ。俺は嫁が命だと知っていながら!!
「香!! あんまりくっつくと女房が怒る!!」
「そんな見てもいませんのにー」
「匂いでバレるんだよ、匂いで!! 俺の女房は鋭いんだ、勘弁してくれ!!」
あしらいながら水を飲む。やれやれ、女房の顔がチラついて気が気じゃない。『知らせ』は、まだだろうか。知らぬ間に身体でも揺すっていたのだろうか「落ち着かない人だ」と香が笑った。馬鹿にすんじゃねーやいっ。
けど、その長い待ち時間を世間話で繋いで持たせてくれた彼女には感謝しなきゃいけないな。
どれくらい待っただろう。襖が開いて見習い遊女が「頷きました」とだけ俺に告げた。これは成功の知らせだ。モモは見事に銀次を俺の後ろ盾になるよう言い包めてくれたんだ。
「上手くいったのか!! やったああああ、香やったぞー!!」
嬉しいー!! なにせモモを押さえるのに俺は相当な金を使ったもんね!! ……じゃ、なくて!! これぞ新しい日本の幕開け第一歩って事だ!!
「やったー!! アカギ様、おめでとう御座いまーす!!」
「やったあああ!! ……って、チンコ触るなー!!」
「ケチッ!!」
ケチとは何だケチとは!! どさくさに紛れてドコに手を伸ばしてんだ俺のチンチンは女房にしか使わないって何度も言ってるだろが!!
今日、俺のやるべき仕事は決まっている。何がなんでも瑛葉銀次を捕まえること!
目的の人物は通路で擦れ違う議員達と挨拶を交わしていた。高貴な一族の出身だ、彼を狙っているのは俺だけではないのだろう。
「銀次くん! 今日は取って置きの女を紹介するよ」
人波が去ったのを見計らって声を掛ける。突然に「女」という言葉を投げかけられて驚いたのか、彼は目を真ん丸くさせた。
「え? 何ですか椿谷(ツバキヤ)さん、急にそんな」
「アカギでいいよ。遊郭、まだ行ったことないんだろ?」
「ああ、はい! アカギさん! 自分は遊郭に足を運んだことはないです! ああ良かった、そっちの話で。また新たな見合い話かと思いましたよ~。えっと、ひょっとして俺を遊郭に連れて行って下さると?」
色狂いだが遊郭へ足を運んだことは無し、か。彼のお父上は厳しい人だからな。目立った行動は一応謹んできたのか。なのに色狂いで有名ってどういうことだ。
「見合いねえ。もうそんな年頃かあー。……行くか? 絶世の美女を押さえてある。この椿谷アカギ、嘘は言わん」
「はい、お父様はもう身を固めろと。まあ気にしませんがね! と、いうことで、行きます! 行きます! 絶世の美女、信じてますよアカギさん!」
なんという輝く瞳。これは噂通りだな。黙っていれば実に精悍な青年なのに勿体無い。
ふと、苦笑いを押し殺していた俺の耳にカランカランと下駄の音が届いた。この議事堂において未だに下駄の音を響かしている、しかも天をも貫く大男! と、いえば雪村士郎(ユキムラ シロウ)しかいない。あの異国の文化を嫌う堅物さんに瑛葉を言いくるめられたら厄介だ。
「君は背も高いし目鼻立ちのはっきりとした顔だ、洋装のが似合うかもしれないなあー。じゃあ行こうか」
素知らぬ顔をして俺たちの後ろを通り過ぎようとしていたアイツにわざと聞こえるように言ってやった。
案の定、何か言いたげな顔をこちらに向ける。ただでさえ彫りの深い強面が更に――な、表情だ。しかし言い合いをする気分ではなかったのか、そのまま向こうへと行ってしまった。
いつかアイツの意志をへし折る。それが俺の目標。
銀次を連れて馬車に乗り込む。「どれほど美しい女性なのか」と、彼はとても期待を膨らませている様子。よしよし、出だし好調、と。
「遊女と言っても今日、君の為に用意した遊女はその辺の女とは格が違う。知識も教養も自分より上だと考えたほうがいい。客がクズだとわかると五分で上手く逃げられちまうぞ」
「ええ!? なんと難しそうな方だ、果たして僕に扱えるでしょうか!? 何か助言をいただきたいですアカギさーん!!」
おや、緊張しているのか? 意外だな。
「大丈夫、性格は砕けてて話も上手い。そう構えるな。ただー……、無礼な振る舞いをすると俺まで出入り禁止になるから気をつけろよ」
「えっと無礼な振る舞い……。まあ、とりあえず普通にしていれば大丈夫ですよね!?」
コイツ相当緊張している!? そわそわと実に落ち着かない様子だ。なんて初々しい。色狂いのくせに。
「大丈夫。会ったら最後、頭が真っ白で夢心地さ」
なんだかんだで普通の若者だな。俺も初めて遊郭に足を運んだ時はそれはもう……、などと思い出に浸って程なく馬車は遊郭に到着した。
門をくぐって敷地内に入ると屋敷の出入り口に馴染みの男が立っていた。遠目からでもよく分かる金色の頭が俺を見るなりお辞儀する。
「いらっしゃいませ」
「よお、蒼志(アオシ)! ……どうだ銀次くん、美人な混血だろ」
「椿谷さん、いらっしゃい。美人だなんて嬉しいな。そちらの方は?」
金色の髪に青い目、白い肌――美麗な容姿とは裏腹に遊郭の用心棒という物騒な職に就いているのが難点だが。普段はこんなに温和な顔をしているのに腰元に下げてる木刀が実におっかない。いざとなったらそれで何をしちゃうんだろうか。
「嗚呼、本当に美しい。もう頭が真っ白で夢心地だあ……って、これ男の人じゃないですか!!」
「うむ。良いノリツッコミだ。……蒼志、この実に元気のいい男は俺の大事な連れだ、丁重にな。さあ銀次君、行こう」
「そうですか。ごゆっくり」
朗らかに微笑む蒼志に見送られて遊郭内に入る。途中、見習いの娘達に「いらっしゃいませ」と出迎えを受ける度に「あ、どうも」と、恐縮した風に銀次は会釈をしていた。そして座敷に上がり支配人に出迎えられると、いよいよ彼の緊張は最高潮に達したようだ。物凄く動作がギクシャクしている。まあ、この支配人、顔スゲー怖いしな。
「椿谷アカギ様、いらっしゃいませ」
「おお、無理言って悪かったね潮田(ウシオダ)。こちら瑛葉銀次さんだ。お父上に続いて政界入りなされる」
「は、はい! 瑛葉銀次です! よろしくお願い致しますの初めまして!」
銀次君、如何にも初心者です、な感じだ。
「瑛葉銀次様、いらっしゃいませ。私はこの遊郭の支配人をしております潮田カンクローと申します。よろしくお願い致します。すぐに酒の用意をしますので」
「…………固くなり過ぎだから! もっとどっしり構えていいから!」
支配人が去ったのを見計らって銀次に耳打ちした。だが、……あんまり効果はないようだ。正座したままブルブル震えてしまっている。しかし――娘が一人、座敷に来た刹那、彼の目つきが変わった。
「失礼致します。香(コウ)と申します。モモ姉さんお色直しにお時間がかかりまして、その間、私でご勘弁を」
「おおおおおおおおお!! 可憐だ!! なんと可愛らしい!!」
「銀次……」
なんだその水を得た魚のような変わり身は。どんだけ女好きだよ全く。まあ、香は確かに可愛い娘だし思惑通りだし、いっか。
「おお、香! こちら瑛葉銀次さんだ! なかなか男前だろ?」
「アカギ様いらっしゃい。……銀次様? まあ、素敵な方」
俺たちに酒を注いで銀次にうっとりと寄り添う香。しめしめ、銀次め、上機嫌だ。笑顔でグイグイと酒を呷っている。さっきまでの緊張は綺麗に吹っ飛んでいったようだな。
「名前は香と言うのか。可愛らしい本当に可愛らしい実に可愛らしい!! アカギさん、貴方の申した通りだ!!」
「おいおい、もう頭が真っ白なのか? だけどモモに比べたら香はまーだまだ」
「アカギ様、酷い~! そりゃあ姉さんに敵う女なんていませんよ!」
香が頬を膨らませた。それがあからさまに媚びて見えないあたり、まあ彼女もなかなかの娘ではある、かな。
「この香ちゃんが敵わないとは、モモさんとは一体どれ程の女性なんですか?」
気になる、といった風に眉間に皺を寄せる銀次を「焦るな焦るな」と制す。女のお色直しってのは時間がかかるもんだ。それを黙って待てるか否かで男の良し悪しが出る。なんつってな。
――カタンッ。
音がしてゆっくりと襖が開いた。
「……ほら、来たぞ」
銀次に耳打ちする。が、コイツは聞いているのかいないのか、襖に目が釘付けになったまま固まっている。さては、やって来た艶やかな桃色の着物の花魁に頭が見事に真っ白になったか。
お役御免とばかりに香が銀次から離れて俺の隣に付く。
「遅くなりまして申し訳御座いません。私、モモと申します。香ちゃん、どうもありがと。さ、お飲みになって銀次様」
「……美しい方だ……。貴女のような美しい女性は初めて見ました……」
目と口をポカンと開けたまま銀次が喋る。
「そんな大袈裟やわ~! あら、いい飲みっぷりですこと」
モモが手を叩いた。なにせ何だか知らないが急に銀次の酒を飲む勢いが半端でなくなった。なんなんだ、お前のそのカラクリ人形のような不自然な動きは!? さっきまでの余裕は何処へ行った!? まあ、大柄な男だ、簡単には潰れないだろうが……。
さて、ここから先はモモに任せるか。
「後は二人きりにして欲しいか?」
「え? ………………はいっ」
断ったら男が廃るという意地だろう。銀次は素直に頷いた。
「銀次くん、ここの払いは俺持ちだ、気にせず遊んでいけ。香、違う部屋で飲もう」
後は任せたとモモに目配せをして座敷を出る。
「はい。……銀次様、またいらしてね」
襖を閉めながら香が微笑んだ。……この娘、さり気に銀次を気に入ったのだろうか、そんな様相だ――――ってのは、勘違いだったかなあ~?
別室に移るなり俺に纏わりつきだ。俺は嫁が命だと知っていながら!!
「香!! あんまりくっつくと女房が怒る!!」
「そんな見てもいませんのにー」
「匂いでバレるんだよ、匂いで!! 俺の女房は鋭いんだ、勘弁してくれ!!」
あしらいながら水を飲む。やれやれ、女房の顔がチラついて気が気じゃない。『知らせ』は、まだだろうか。知らぬ間に身体でも揺すっていたのだろうか「落ち着かない人だ」と香が笑った。馬鹿にすんじゃねーやいっ。
けど、その長い待ち時間を世間話で繋いで持たせてくれた彼女には感謝しなきゃいけないな。
どれくらい待っただろう。襖が開いて見習い遊女が「頷きました」とだけ俺に告げた。これは成功の知らせだ。モモは見事に銀次を俺の後ろ盾になるよう言い包めてくれたんだ。
「上手くいったのか!! やったああああ、香やったぞー!!」
嬉しいー!! なにせモモを押さえるのに俺は相当な金を使ったもんね!! ……じゃ、なくて!! これぞ新しい日本の幕開け第一歩って事だ!!
「やったー!! アカギ様、おめでとう御座いまーす!!」
「やったあああ!! ……って、チンコ触るなー!!」
「ケチッ!!」
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