恐怖日和

黒駒臣

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風流声

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 マンション五階のベランダで爽やかな秋風に吹かれながらデッキチェアに座ってくつろいでいた。
 テーブルにはビールと好みのつまみ。
 朝っぱらからと妻は良い顔していないが、きょうは日曜だ。何の文句があろう。
 どこかで運動会をやっているのか、風に乗ってそれらしい音楽やプログラムを読み上げる高学年の少女の声が流れてくる。スピーカーの声に混じって父兄や子供たちの歓声も微かに聞えていた。
「がんばれがんばれ」という応援、かけっこやダンスなど次々変化する音楽、迷子のお知らせなど、いろんな声や音が流れて来て懐かしさが込み上げてくる。
 不思議なもんだ。運動が苦手な子供の頃は運動会が嫌で仕方なかったのに、それを懐かしく感じるとは。
 自分に苦笑しながら、やがてうつらうつら眠くなる。
 ぎゃあああああっ
 突然悲鳴が聞こえて目が覚めた。
 な、なんだ?
 風で流れてきたスピーカーの声だ。
 悲鳴だけでなく、逃げろという声や助けてという声、子供たちの泣き叫ぶ声も流れてくる。
 阿鼻叫喚。
 そんな言葉が浮かんだ。
 今まで聞いた事のない凄まじい叫び声が次々聞こえ、思わず耳を塞いだ。
 いったい何が起こっているのだろう。
「これなに?」
 不安な表情で妻が出てくる。
 隣人夫婦もベランダに顔を出したが、お互い顔を見遣るしかない。
 しばらくして何台ものパトカーのサイレンが鳴り響いてくるのが聞こえた。
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