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怨水
しおりを挟む前を行く活魚運搬車の小さな窓に時折魚影が映る。
行方不明者の捜索から浮かび上がったこの車を追ってきたものの、行先は市場か魚屋ぐらいなものだろう。
このまま追っても無駄足なのでは? と迷う。
だが、信号待ちの時、黒く長いものがゆらゆらと揺蕩うのが見え、海草かと思いきや白くふやけた女の顔が窓を通過した。
やはり、この車だ。
俺は確信し、後をついていく決心をした。
ばれないよう距離を置きながら進むと人気のない山中に入り込み、やがて廃工場に行きついた。
これ以上は危険だと判断し、捜査に踏み込む準備を整えるため引き返そうとしたが白装束を着た男たちに囲まれ、車から引き摺り下ろされた。
連れてこられた廃工場内で有無を言わさず裸に剥かれると死体の入った水槽に投げ込まれた。
浮き上がろうともがく頭や体を棒で抑え込まれ、濁った水を飲みながら奴らに怨み言を吐く。
男たちは「怨め、怨め。怨めば怨むほど水は濃くなっていく」と笑い、「この怨水を日本中にばらまくことが我らの使命なのだ」と高らかに叫んだ。
最後の息がごぼっと肺から出き切り、鼻から口から大量の水が体内に流れ込んできた。
中に溶けている濃密な怨みや呪いを感じる。
俺の怨みもすぐに溶け、混じり合うだろう。
だが、この男たちの言う使命とは本物なのだろうか。頭のおかしな奴らの戯言でなければいいが。
でないとただの犬死にじゃないか。
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