7 / 120
中古物件
しおりを挟むいわくつきの中古物件を手に入れ、住める程度にリフォームし引っ越した。
不動産屋の担当者も工務店の大工たちや引っ越し業者も物好きなオレを笑っていたが気にしなかった。
本物の事故物件に住み、心霊現象をずっと配信し続けるという夢がやっとかなうのだ。
引っ越し早々、各部屋にカメラを仕掛けた。まだ昼間だからか何も映ってはいない。明るい日の下でも何か現象が起きるなら嬉しいのだが、やはりそうはいかないか。
夜は元凶といわれる部屋に布団を敷いて寝た。
深夜二時まで胸を躍らせ起きていたが、昼間と同様、何事もなく、その後も「何かの気配に起こされた!」ということもなく朝までぐっすり眠った。
がっかりしながらも引っ越し疲れで気付かなかっただけかもしれないとビデオをチェックしたが、布団を敷いた部屋はもとより各部屋のどれにも何も映っていなかった。
ま、初日だからなと気持ちを切り替え、二日目も三日目もあきらめずにビデオカメラを回し続け、徹夜もしてみたが期待したことは何一つ起こらない。
その後も何も起こらず、ネットに配信もできなかったが、引っ越しして二か月、奇異の目で見ていたご近所とも挨拶を交わす仲になり、オレはごく普通のただの住人になっていた。
クレームをつけてやろうと不動産屋に電話をかけた。
呼び出し音が鳴っている最中、心霊現象が出るならまだしも、出ないと文句垂れるのはおかしいよなと思い直し、本来の価格より家を安く手に入れられたのだからこれはこれでいいじゃないかと、何も起きない事だけ報告することに決めた。
だが電話に出た受付嬢は、オレを担当した社員はじめ大工や引っ越し業者など、この家に入った関係者全員が既に亡くなっていることを伝え、オレが生きていることにひどく驚いていた。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる