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最終章
初めての共同作業
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そこには妹がいた。
雪の華に溶けるようにして立つ、セツナの幻影。
今度は本物だ。本物だが、幻だ。それがもっとも悲しい現実だ。
まるで一歩でも動いたら、呼吸ですら彼女の姿をかき消してしまいそうだ。
半透明に透き通るセツナは、俺に向かって悲しく微笑みかける。
「___もう、いいんだよ」
「っ!? なにが……」
「おにいちゃん。よく、がんばったね。だから……もういいの。きっとあの子も、心の中ではわかっているはずなの」
「アラガミのことを言っているのか?」
「……………おにいちゃん、ごめんなさい」
セツナの姿は言葉を発するたび、どんどん薄くなっていく。
雪が溶けていくように、うっすらと無くなっていく。
まるで世界に残っていた妹の記憶、最後の一片を使って姿を現したように。
「『殺し』てあげて……あの子のことを……」
「まってくれ!! 行くなっ!!」
空気に溶けるように消えてしまった。
感覚的に理解した。この世界の、妹の痕跡はこれで最後なんだと。
幻影の中でも二度と会えない。刹奈が残したものは、これで全部だ。
●………………。
俺のスキルも胸がつまるような沈黙を続けている。
わからない。俺はいったいどうすればいい。
教えてくれ『殺す』スキルよ。俺はいったい何と戦えばいいんだ。
「……ただいま」
家に戻ってきた。窓から人影が見える。
やれやれ。俺が一番最後だったらしいな。
女の子たちは皆、材料を揃えて戻ってきているらしい。有能過ぎる。
玄関の扉を開けると、想像していなかったような重い空気で迎えられる。
「ご主人さま!! 気を付けてっ!! 敵ですっ。アラガミの襲撃ですっ!!」
「きひっ。敵はあなたでしょレーネ」
テーブルに座っていたのは、俺の妹だった。
いや、妹にうり二つの姿をした最悪の敵……アラガミがそこにはいた。
女の子たちは距離をとり、アラガミを囲むようにして戦闘体制をとる。
当のアラガミはそんな女の子たちの殺意を意に介せず、巨大な熊のぬいぐるみを隣に座らせ勝手に紅茶を口に運んでいた。
刹奈を殺した張本人が目の前に堂々と座っている。
「あっおかえりなさい! おにいちゃん」
「……ああ。ただいま」
俺が返事をすると、意外だというように驚き、ぱぁっと顔を明るくするアラガミ。
レーネたち他の女の子はあわてて動揺している様子だ。
「あ、あのセツカ様っ。それはこの世界を支配する最大の敵、アラガミです!! 最大最強の敵です!!」
「知っているよスレイ。それよりも、今はシチューを作ろうか?」
「は、はい。ええええ!?」
大量の薪を取り出し、竈に放り込む。
しっかり作り込むならシチューは時間がかかるからな。
「楽しみ。おにいちゃんの料理!」
「何を言っている。お前も手伝うんだ」
「……ほぇ?」
「お前も野菜を切れアラガミ。俺の作ったシチューを食べるならな」
そう伝えると、心の底から驚いたといった顔でアラガミは笑った。
「…………ぷっ。あはははっ。ほんとうに、おにいちゃんはすごい。そうだね。終わらせに来たつもりだったけど……ちょっとだけ、付き合ってあげる」
こうして、俺たちは共同作業をすることになった。
アラガミは可愛らしいピンク色のエプロンを着用し。俺の家の台所に立つ。
隣に立つレーネは死にそうな顔で俺に助けを求めている。なにしろアラガミがうるさいのだ。
「レーネってば、ぜんぜん包丁の使い方がなってないのね。これじゃおにいちゃんのご飯作れないでしょ? だからあなたはダメなのよ」
「ご、ご主人さまぁ……」
「アラガミ。スキルを使って野菜を切るのは無しだ。お前もしっかり包丁を使って野菜を切れ」
「えーだって」
「レーネも爪を使えば簡単に切れる。そうしないのは道具の使い方を学び、綺麗に切る方法を身に付けたからだ」
「……レーネばっかり褒めるのね。いいですよーだ。おにいちゃんにはセツナの切ったやつあげなーい」
ふてくされているが、俺が言った通り、アラガミは包丁を使い上手に野菜を切れている。
手つきはまるで料理をしているときの妹にそっくりだ。
「…………アラガミ。やればできるじゃないか」
「えへへ。おにいちゃんに褒められた! どんなもんだい!」
頬を染めて笑ったアラガミは、照れ隠しのようにその場を離れる。
そして肉の下ごしらえをしていたスレイとハヤサカの元へとやってきた。
アラガミは身を固くしたスレイの背後に立つ。
「もちもちうさぎちゃんを残酷にお肉にしてくれるのはスレイちゃん?」
「……い、命をいただくのです。無駄にする部分はありません」
「へえ、そうなんだ。えいっ!」
唐突に、スレイに抱きつくアラガミ。
思わずスレイは悲鳴をあげた。
「ひぃっ!?」
「可愛い命……うふふ、柔らかいちいさなお胸にちいさなお尻。スレイちゃんも無駄な部分はなさそうね?」
「くっ……触らないでください。い、いやっ」
「やわらかぁーい。うふふ。それっ」
ひとしきりスレイの感触を楽しんだのか、隣にいたハヤサカに覆い被さるアラガミ。
やわらかクッションでもモフるかのように揉みしだいているが……さすがにやりすぎだ。
「もふもふ~。ハヤサカお姉さんは雌牛さんかな? シチューの牛乳はあなたから採れたのかな?」
「え、え、えっ!? せ、セツカくん~!?」
「セツカ様。助けてください……どっちが下ごしらえされているかわからなくなってきます」
「おい。仕事をしろ」
「はいはいー」
堂々とセクハラを繰り広げるアラガミを注意する。
こてんと頭を叩いて反省したふり。それも妹のしぐさをコピーしたものか、アラガミ?
小麦粉をふるいにかけているミリアは神妙な面持ちでアラガミの様子をうかがっている。
なにかあったら一瞬で斬りかかる用意はできているようだ。
アラガミはそんなミリアの元へと向かって。
「おにいちゃん、あの人ってだれ? あ、やっぱいい。興味なーい」
「アハハハハァァァァンなんでなんで!? あたしスルーなの!? おかしくね? アラガミ来いよ。こっちに来い!」
「うるさーい」
行かなかった。不幸中の幸いだなミリア。どうして悲しそうなんだ?
すっかりリラックスしたアラガミは、本当に楽しそうに笑う。
くるくると踊るように回りながら、鍋を火にかけ用意していたフローラの元へ。
「コトコト煮込まないとねフローラちゃん」
「……ぇせ」
「ん? なにか言ったの?」
「返せっ!! レイブンを返せっ。あの子には借りを返してない。まだまだ言い足りないことが沢山あったんだっ」
「んー? レイブン? ああ、あのことかー」
フローラの耳元に口を寄せたアラガミは、残酷な事実をささやいた。
「食べたパンの枚数なんて、覚えてないよ。そういうものでしょ?」
「…………っ。…………っつ!?」
静かに涙を流すフローラ。
俺はフローラの肩を抱き締める。するとアラガミは口を尖らせて離れていったのだった。
とにかくシチューは完成した。
テーブルについた女の子たち。俺の隣にアラガミが座っていることが異常事態だが、それ以外は普段の光景だ。
「たべようか」
「いただきまーす」
「い、いただきますご主人さま」
「「「「いただきます……」」」」
うん。こってりとしたシチューが、もちもちウサギのさっぱりしたお肉との相性抜群だ。
舌の上でとろけるような柔らかな肉がジューシーで、スレイとハヤサカの下ごしらえが上手だったことがわかる。
レーネとアラガミが切った野菜のサイズ感はばっちりで、ミリアががんばってふるいにかけた小麦粉がとろみをつけたソースに絶妙にからまってくれて口の中でほぐれる。
フローラの鍋の火加減もすごいな。肉や野菜が固くならず、舌で押すだけでとろけるくらいの柔らかさなのだ。
すごくうまい。一人で作ったときよりも何倍も美味しい。すごいな、みんな成長している。
「おいしい!! すごい。おいしいっ。暖かい。こんなの……久しぶりかも」
アラガミは掻き込むようにしてシチューを平らげた。
このアラガミという存在は食事を必要としているのだろうか? もしかしたら、孤独に過ごし何年も食事などしてこなかったのかもしれない。
最初は緊張していた女の子たちも、目の前のごちそうの魔力には勝てなかったみたいだ。
次第に敵を目の前にしているという意識が薄れていく。
「おいしいっ。ご主人さま、すごくおいしいです!」
「とろみがアクセントですね。さすがです……セツカ様の采配が生きましたね」
「セツカおかわり!」
「……アラガミが居なければもっとおいしいですぅ」
「よ、よかったぁ。あの状況でおいしく作れた」
食事を終えた俺たちは、一息つく。
しかしながら女の子たちは相変わらずアラガミに対して最大級の警戒をしているが。
「ねえ、おにいちゃん?」
アラガミは甘えるような声を出して言った。
「シチューごちそうさま。本当に美味しかった。今日、泊まっていっていいかな?」
しなだれかかってくる最大の敵。
何を言っているんだこの敵は。頭が可笑しくなったのか?
そう言いたげな女の子たちは愕然とした表情でアラガミを睨み付ける。それもそうだ。これまでされたことを考えたら、どうしてこいつを家に泊めなければいけない?
殺気を伴う女の子たちの視線を感じながら、俺は立ち上がって宣言した。
「ああ。もちろんいいぞ」
「えっ本当!?」
「嘘はつかない」
「…………やった。やったぁ!!」
花が咲いたように笑うアラガミ。
逆に、レーネたちの表情は彼岸花が植えられたような感じになっているが……俺は黙って喜んでいるアラガミを見下ろしていた。
雪の華に溶けるようにして立つ、セツナの幻影。
今度は本物だ。本物だが、幻だ。それがもっとも悲しい現実だ。
まるで一歩でも動いたら、呼吸ですら彼女の姿をかき消してしまいそうだ。
半透明に透き通るセツナは、俺に向かって悲しく微笑みかける。
「___もう、いいんだよ」
「っ!? なにが……」
「おにいちゃん。よく、がんばったね。だから……もういいの。きっとあの子も、心の中ではわかっているはずなの」
「アラガミのことを言っているのか?」
「……………おにいちゃん、ごめんなさい」
セツナの姿は言葉を発するたび、どんどん薄くなっていく。
雪が溶けていくように、うっすらと無くなっていく。
まるで世界に残っていた妹の記憶、最後の一片を使って姿を現したように。
「『殺し』てあげて……あの子のことを……」
「まってくれ!! 行くなっ!!」
空気に溶けるように消えてしまった。
感覚的に理解した。この世界の、妹の痕跡はこれで最後なんだと。
幻影の中でも二度と会えない。刹奈が残したものは、これで全部だ。
●………………。
俺のスキルも胸がつまるような沈黙を続けている。
わからない。俺はいったいどうすればいい。
教えてくれ『殺す』スキルよ。俺はいったい何と戦えばいいんだ。
「……ただいま」
家に戻ってきた。窓から人影が見える。
やれやれ。俺が一番最後だったらしいな。
女の子たちは皆、材料を揃えて戻ってきているらしい。有能過ぎる。
玄関の扉を開けると、想像していなかったような重い空気で迎えられる。
「ご主人さま!! 気を付けてっ!! 敵ですっ。アラガミの襲撃ですっ!!」
「きひっ。敵はあなたでしょレーネ」
テーブルに座っていたのは、俺の妹だった。
いや、妹にうり二つの姿をした最悪の敵……アラガミがそこにはいた。
女の子たちは距離をとり、アラガミを囲むようにして戦闘体制をとる。
当のアラガミはそんな女の子たちの殺意を意に介せず、巨大な熊のぬいぐるみを隣に座らせ勝手に紅茶を口に運んでいた。
刹奈を殺した張本人が目の前に堂々と座っている。
「あっおかえりなさい! おにいちゃん」
「……ああ。ただいま」
俺が返事をすると、意外だというように驚き、ぱぁっと顔を明るくするアラガミ。
レーネたち他の女の子はあわてて動揺している様子だ。
「あ、あのセツカ様っ。それはこの世界を支配する最大の敵、アラガミです!! 最大最強の敵です!!」
「知っているよスレイ。それよりも、今はシチューを作ろうか?」
「は、はい。ええええ!?」
大量の薪を取り出し、竈に放り込む。
しっかり作り込むならシチューは時間がかかるからな。
「楽しみ。おにいちゃんの料理!」
「何を言っている。お前も手伝うんだ」
「……ほぇ?」
「お前も野菜を切れアラガミ。俺の作ったシチューを食べるならな」
そう伝えると、心の底から驚いたといった顔でアラガミは笑った。
「…………ぷっ。あはははっ。ほんとうに、おにいちゃんはすごい。そうだね。終わらせに来たつもりだったけど……ちょっとだけ、付き合ってあげる」
こうして、俺たちは共同作業をすることになった。
アラガミは可愛らしいピンク色のエプロンを着用し。俺の家の台所に立つ。
隣に立つレーネは死にそうな顔で俺に助けを求めている。なにしろアラガミがうるさいのだ。
「レーネってば、ぜんぜん包丁の使い方がなってないのね。これじゃおにいちゃんのご飯作れないでしょ? だからあなたはダメなのよ」
「ご、ご主人さまぁ……」
「アラガミ。スキルを使って野菜を切るのは無しだ。お前もしっかり包丁を使って野菜を切れ」
「えーだって」
「レーネも爪を使えば簡単に切れる。そうしないのは道具の使い方を学び、綺麗に切る方法を身に付けたからだ」
「……レーネばっかり褒めるのね。いいですよーだ。おにいちゃんにはセツナの切ったやつあげなーい」
ふてくされているが、俺が言った通り、アラガミは包丁を使い上手に野菜を切れている。
手つきはまるで料理をしているときの妹にそっくりだ。
「…………アラガミ。やればできるじゃないか」
「えへへ。おにいちゃんに褒められた! どんなもんだい!」
頬を染めて笑ったアラガミは、照れ隠しのようにその場を離れる。
そして肉の下ごしらえをしていたスレイとハヤサカの元へとやってきた。
アラガミは身を固くしたスレイの背後に立つ。
「もちもちうさぎちゃんを残酷にお肉にしてくれるのはスレイちゃん?」
「……い、命をいただくのです。無駄にする部分はありません」
「へえ、そうなんだ。えいっ!」
唐突に、スレイに抱きつくアラガミ。
思わずスレイは悲鳴をあげた。
「ひぃっ!?」
「可愛い命……うふふ、柔らかいちいさなお胸にちいさなお尻。スレイちゃんも無駄な部分はなさそうね?」
「くっ……触らないでください。い、いやっ」
「やわらかぁーい。うふふ。それっ」
ひとしきりスレイの感触を楽しんだのか、隣にいたハヤサカに覆い被さるアラガミ。
やわらかクッションでもモフるかのように揉みしだいているが……さすがにやりすぎだ。
「もふもふ~。ハヤサカお姉さんは雌牛さんかな? シチューの牛乳はあなたから採れたのかな?」
「え、え、えっ!? せ、セツカくん~!?」
「セツカ様。助けてください……どっちが下ごしらえされているかわからなくなってきます」
「おい。仕事をしろ」
「はいはいー」
堂々とセクハラを繰り広げるアラガミを注意する。
こてんと頭を叩いて反省したふり。それも妹のしぐさをコピーしたものか、アラガミ?
小麦粉をふるいにかけているミリアは神妙な面持ちでアラガミの様子をうかがっている。
なにかあったら一瞬で斬りかかる用意はできているようだ。
アラガミはそんなミリアの元へと向かって。
「おにいちゃん、あの人ってだれ? あ、やっぱいい。興味なーい」
「アハハハハァァァァンなんでなんで!? あたしスルーなの!? おかしくね? アラガミ来いよ。こっちに来い!」
「うるさーい」
行かなかった。不幸中の幸いだなミリア。どうして悲しそうなんだ?
すっかりリラックスしたアラガミは、本当に楽しそうに笑う。
くるくると踊るように回りながら、鍋を火にかけ用意していたフローラの元へ。
「コトコト煮込まないとねフローラちゃん」
「……ぇせ」
「ん? なにか言ったの?」
「返せっ!! レイブンを返せっ。あの子には借りを返してない。まだまだ言い足りないことが沢山あったんだっ」
「んー? レイブン? ああ、あのことかー」
フローラの耳元に口を寄せたアラガミは、残酷な事実をささやいた。
「食べたパンの枚数なんて、覚えてないよ。そういうものでしょ?」
「…………っ。…………っつ!?」
静かに涙を流すフローラ。
俺はフローラの肩を抱き締める。するとアラガミは口を尖らせて離れていったのだった。
とにかくシチューは完成した。
テーブルについた女の子たち。俺の隣にアラガミが座っていることが異常事態だが、それ以外は普段の光景だ。
「たべようか」
「いただきまーす」
「い、いただきますご主人さま」
「「「「いただきます……」」」」
うん。こってりとしたシチューが、もちもちウサギのさっぱりしたお肉との相性抜群だ。
舌の上でとろけるような柔らかな肉がジューシーで、スレイとハヤサカの下ごしらえが上手だったことがわかる。
レーネとアラガミが切った野菜のサイズ感はばっちりで、ミリアががんばってふるいにかけた小麦粉がとろみをつけたソースに絶妙にからまってくれて口の中でほぐれる。
フローラの鍋の火加減もすごいな。肉や野菜が固くならず、舌で押すだけでとろけるくらいの柔らかさなのだ。
すごくうまい。一人で作ったときよりも何倍も美味しい。すごいな、みんな成長している。
「おいしい!! すごい。おいしいっ。暖かい。こんなの……久しぶりかも」
アラガミは掻き込むようにしてシチューを平らげた。
このアラガミという存在は食事を必要としているのだろうか? もしかしたら、孤独に過ごし何年も食事などしてこなかったのかもしれない。
最初は緊張していた女の子たちも、目の前のごちそうの魔力には勝てなかったみたいだ。
次第に敵を目の前にしているという意識が薄れていく。
「おいしいっ。ご主人さま、すごくおいしいです!」
「とろみがアクセントですね。さすがです……セツカ様の采配が生きましたね」
「セツカおかわり!」
「……アラガミが居なければもっとおいしいですぅ」
「よ、よかったぁ。あの状況でおいしく作れた」
食事を終えた俺たちは、一息つく。
しかしながら女の子たちは相変わらずアラガミに対して最大級の警戒をしているが。
「ねえ、おにいちゃん?」
アラガミは甘えるような声を出して言った。
「シチューごちそうさま。本当に美味しかった。今日、泊まっていっていいかな?」
しなだれかかってくる最大の敵。
何を言っているんだこの敵は。頭が可笑しくなったのか?
そう言いたげな女の子たちは愕然とした表情でアラガミを睨み付ける。それもそうだ。これまでされたことを考えたら、どうしてこいつを家に泊めなければいけない?
殺気を伴う女の子たちの視線を感じながら、俺は立ち上がって宣言した。
「ああ。もちろんいいぞ」
「えっ本当!?」
「嘘はつかない」
「…………やった。やったぁ!!」
花が咲いたように笑うアラガミ。
逆に、レーネたちの表情は彼岸花が植えられたような感じになっているが……俺は黙って喜んでいるアラガミを見下ろしていた。
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