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二章
vs不死の魔王を×そう02
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じりじりと焼けつくような視線がスリザリから送られてくる。
奴は右手を俺に向けかざしながら、無表情でこちらの様子を探っているらしい。
どうやら俺が奴の攻撃で死なないことに本格的な疑問を感じているみたいだ。
スリザリは首をかしげてみせる。
「……スキルを使用した反応がない。魔法か? いや、こちらの世界の能力では測れないということか? まったく異常な男だなレイゼイ=セツカ。これが『殺す』スキルの効果だというのか」
「数十種類の即死攻撃を同時に使役する。チートスキルも真っ青の反則攻撃だ。あいさつもなしで殺しにくるとは異常だぞ? 魔王スリザリ」
「ふん。グリフィンの言葉もあながち嘘ではなかったか。しかし、想定の範囲内だ」
「お前は不死者の王らしいが。予想よりも対処しやすく想定の範囲内だ」
「口が減らないな。私の姿を見て畏怖しないのだけは褒めてやろう。だが……」
ズリザリは燕尾服のネクタイを軽く整えると、ゆっくりと歩き出した。
広いホールを弧を描くようにして、王座に座る俺の方へと足音を鳴らしながら近づいてくる。
静かな挙動はまるで奴の周囲だけ暗闇になったと勘違いするほどの静寂さをまとっている。
一方の俺は微動だにしない。相変わらず椅子に座ったまま足を組んでいた。
じれたスリザリは口を開く。
「先ほどの発言、取り消してもらおう」
「なぜだ? 事実を言っただけだが?」
ズリザリは勢いよく右手を払う。
すると俺のスキルが反応して対応してくれる。
■――状態異常・即死効果攻撃88種を『殺し』ました
まったくダメージのない俺の姿に、スリザリはうんざりしたような顔でつぶやく。
「ちっ。複合的に効果を絡めても通らないのか? 化け物め……魔王と呼ばれる私たちはこの世界の理から外れた力を持つ。レイブンやハウフルは貴様を倒すことでこの件を穏便に済ませるつもりで接触したつもりらしいが。私が本気を出した場合、多方面に被害が及ぶからな。グリフィンも走り回って戦争回避を工作しようとしたが、奴では私には敵わん。だからこうしてオリエンテールは戦火に包まれる」
「ごちゃごちゃうるさいぞ? 理屈を並べても、お前が攻めてきた理由は変わらないんだろう?」
「ふん。人間の国家との争いは永きにわたって続いていた。あるときから、古(いにしえ)の勇者とされている強き者の存在が消えてしまったため、聖女が代わりになる『勇者』となる存在を『召喚』するようになった。それが貴様たちだ。古の勇者に比べると貧弱で、まったくの無力。それでも魔王である私たちとの均衡が保たれていたのには理由があると知ってそれを言うというのか?」
「アリエルを俺に『殺さ』れて、復讐してきたんだろ?」
「黙れ!!!」
声を荒らげ、険しい表情で怒鳴るスリザリ。
はぁ。ようやく人間らしい顔をするようになったじゃないか。
「聖女の役割はアリエルでなければならんのだ。あやつでなければ……魔神計画は完遂しなかった。だというのに……貴様のようなひよっこにたった一度の邪魔をされ3000年の計画を水の泡にされるとは。私の気持ちがわかるか? あやつが『殺し』てくれる日を待ち望んだ私の、希望に満ちた数千年を貴様はぶち壊しにしてくれた。恋だの愛だの、人間の感情で計ろうとするな。私の感情は底無しの渇望だよ。私は死にたいんだ。不死の私は、死が訪れないことが何よりも恐ろしい」
「知らないな」
「くくっ。わかるはずがない。私のこの恐れは生者である貴様に理解できるものか。生者のなかでも、アリエルだけは……あやつだけは特別だった。魔神計画を完遂させ、私を殺してくれると約束したのだ。あのとき約束、したのだ……」
スリザリはこぶしを握りしめ、どこか昔の記憶に思いを馳せている様子だ。
だが、そんなことは俺には関係がない。
静かな暮らしの邪魔をしていた原因が自ら飛び込んできてくれたのなら、喜んで迎えうつ。
「くだらないな。人を踏み台にする望みなど、静かに暮らせないことに繋がる。『殺さ』せてもらう」
――バチバチィィィッ!!
空中で稲妻のような火花が散る。
俺のスキルとスリザリの能力が相殺された効果だ。
いくつもの爆発的な衝突が連続して引き起こされる。
不死者の王とのたまうだけあって、即死効果つきのベクトル操作攻撃のようなものまで行うのか。
つまり、スリザリの身体から延びている不可視の伸びる槍にすこしでも触れたら即死だということだ。
まったくやっかいな攻撃だし、反則的だ。
――バガァン……ッ!
俺の座っていた王座はスリザリの能力に触れたため破壊されてしまった。
透明な何本もの槍に貫かれたようになった椅子は粉々に弾けとんで原型をなくす。
椅子ごと俺を貫いたと思ってほくそ笑むスリザリ。
だが、俺はそこにはいない。
「なっ!?」
「重力を『殺せ』ばこんなこともできる」
「逆さに浮いているだと!? 魔力も使わずにか!?」
「魔力を使わないと浮けないのか?」
逆に尋ねた俺の問いに、スリザリは無言で押し黙る。
どうやら魔力を使わないと浮けないらしいな。
歯をくいしばったスリザリはすべての見えない槍を上空にいる俺に向け発射する。
これがいくつもの即死効果を放つカラクリだ。物理ダメージはないが触れれば死ぬ。
なので俺はこれらを空中でひょいひょいとかわした。
「おっと」
「ば、馬鹿なっ!? 見えるはずがない……いや、即死の概念を可視化できるはずがない。どういうことなんだ……レイゼイ=セツカ。いったい何をやっているんだ!!」
「見ての通り、お前の攻撃を避けている。タネがわかればたいしたことないマジックだったな」
「ふ、ふざけている。このような存在を許すわけにはいかない。即死攻撃を避けるなどとは、考えられない!」
俺としては即死させる攻撃なんてものが考えられないが。
やはりどんなものにも抜け道はあるということで、今回は『殺す』スキルで奴の能力を見えるようにできたので簡単に対応が可能だった。
もし対応できるスキルがなかったら、確かに強力だろう。スリザリの攻撃は見えないし音もしないからな。
俺はスキルに命じる。
■――魔王スリザリを『殺し』ます
スリザリは俺のスキルを受け、途端にグラついた。
かた膝をつき、腕を抑え愕然としている。
「…………くっ、かはっ。レイゼイ=セツカ……っ。貴様、いったい何をした!?」
「死んでないらしいな。不死者というだけはある」
「いったい、何をしたぁっ!! 私の身体に……ダメージが、ヒビが入った。ヒビが入ったじゃないかぁっ!!」
「はぁ。見ればわかる」
タンスに小指すらぶつけたことがないのか?
いちいちごちゃごちゃ騒ぐなと注意してやりたい。
やれやれだが、スリザリの表情から察するに相当お怒りの様子らしい。
奴は右手を俺に向けかざしながら、無表情でこちらの様子を探っているらしい。
どうやら俺が奴の攻撃で死なないことに本格的な疑問を感じているみたいだ。
スリザリは首をかしげてみせる。
「……スキルを使用した反応がない。魔法か? いや、こちらの世界の能力では測れないということか? まったく異常な男だなレイゼイ=セツカ。これが『殺す』スキルの効果だというのか」
「数十種類の即死攻撃を同時に使役する。チートスキルも真っ青の反則攻撃だ。あいさつもなしで殺しにくるとは異常だぞ? 魔王スリザリ」
「ふん。グリフィンの言葉もあながち嘘ではなかったか。しかし、想定の範囲内だ」
「お前は不死者の王らしいが。予想よりも対処しやすく想定の範囲内だ」
「口が減らないな。私の姿を見て畏怖しないのだけは褒めてやろう。だが……」
ズリザリは燕尾服のネクタイを軽く整えると、ゆっくりと歩き出した。
広いホールを弧を描くようにして、王座に座る俺の方へと足音を鳴らしながら近づいてくる。
静かな挙動はまるで奴の周囲だけ暗闇になったと勘違いするほどの静寂さをまとっている。
一方の俺は微動だにしない。相変わらず椅子に座ったまま足を組んでいた。
じれたスリザリは口を開く。
「先ほどの発言、取り消してもらおう」
「なぜだ? 事実を言っただけだが?」
ズリザリは勢いよく右手を払う。
すると俺のスキルが反応して対応してくれる。
■――状態異常・即死効果攻撃88種を『殺し』ました
まったくダメージのない俺の姿に、スリザリはうんざりしたような顔でつぶやく。
「ちっ。複合的に効果を絡めても通らないのか? 化け物め……魔王と呼ばれる私たちはこの世界の理から外れた力を持つ。レイブンやハウフルは貴様を倒すことでこの件を穏便に済ませるつもりで接触したつもりらしいが。私が本気を出した場合、多方面に被害が及ぶからな。グリフィンも走り回って戦争回避を工作しようとしたが、奴では私には敵わん。だからこうしてオリエンテールは戦火に包まれる」
「ごちゃごちゃうるさいぞ? 理屈を並べても、お前が攻めてきた理由は変わらないんだろう?」
「ふん。人間の国家との争いは永きにわたって続いていた。あるときから、古(いにしえ)の勇者とされている強き者の存在が消えてしまったため、聖女が代わりになる『勇者』となる存在を『召喚』するようになった。それが貴様たちだ。古の勇者に比べると貧弱で、まったくの無力。それでも魔王である私たちとの均衡が保たれていたのには理由があると知ってそれを言うというのか?」
「アリエルを俺に『殺さ』れて、復讐してきたんだろ?」
「黙れ!!!」
声を荒らげ、険しい表情で怒鳴るスリザリ。
はぁ。ようやく人間らしい顔をするようになったじゃないか。
「聖女の役割はアリエルでなければならんのだ。あやつでなければ……魔神計画は完遂しなかった。だというのに……貴様のようなひよっこにたった一度の邪魔をされ3000年の計画を水の泡にされるとは。私の気持ちがわかるか? あやつが『殺し』てくれる日を待ち望んだ私の、希望に満ちた数千年を貴様はぶち壊しにしてくれた。恋だの愛だの、人間の感情で計ろうとするな。私の感情は底無しの渇望だよ。私は死にたいんだ。不死の私は、死が訪れないことが何よりも恐ろしい」
「知らないな」
「くくっ。わかるはずがない。私のこの恐れは生者である貴様に理解できるものか。生者のなかでも、アリエルだけは……あやつだけは特別だった。魔神計画を完遂させ、私を殺してくれると約束したのだ。あのとき約束、したのだ……」
スリザリはこぶしを握りしめ、どこか昔の記憶に思いを馳せている様子だ。
だが、そんなことは俺には関係がない。
静かな暮らしの邪魔をしていた原因が自ら飛び込んできてくれたのなら、喜んで迎えうつ。
「くだらないな。人を踏み台にする望みなど、静かに暮らせないことに繋がる。『殺さ』せてもらう」
――バチバチィィィッ!!
空中で稲妻のような火花が散る。
俺のスキルとスリザリの能力が相殺された効果だ。
いくつもの爆発的な衝突が連続して引き起こされる。
不死者の王とのたまうだけあって、即死効果つきのベクトル操作攻撃のようなものまで行うのか。
つまり、スリザリの身体から延びている不可視の伸びる槍にすこしでも触れたら即死だということだ。
まったくやっかいな攻撃だし、反則的だ。
――バガァン……ッ!
俺の座っていた王座はスリザリの能力に触れたため破壊されてしまった。
透明な何本もの槍に貫かれたようになった椅子は粉々に弾けとんで原型をなくす。
椅子ごと俺を貫いたと思ってほくそ笑むスリザリ。
だが、俺はそこにはいない。
「なっ!?」
「重力を『殺せ』ばこんなこともできる」
「逆さに浮いているだと!? 魔力も使わずにか!?」
「魔力を使わないと浮けないのか?」
逆に尋ねた俺の問いに、スリザリは無言で押し黙る。
どうやら魔力を使わないと浮けないらしいな。
歯をくいしばったスリザリはすべての見えない槍を上空にいる俺に向け発射する。
これがいくつもの即死効果を放つカラクリだ。物理ダメージはないが触れれば死ぬ。
なので俺はこれらを空中でひょいひょいとかわした。
「おっと」
「ば、馬鹿なっ!? 見えるはずがない……いや、即死の概念を可視化できるはずがない。どういうことなんだ……レイゼイ=セツカ。いったい何をやっているんだ!!」
「見ての通り、お前の攻撃を避けている。タネがわかればたいしたことないマジックだったな」
「ふ、ふざけている。このような存在を許すわけにはいかない。即死攻撃を避けるなどとは、考えられない!」
俺としては即死させる攻撃なんてものが考えられないが。
やはりどんなものにも抜け道はあるということで、今回は『殺す』スキルで奴の能力を見えるようにできたので簡単に対応が可能だった。
もし対応できるスキルがなかったら、確かに強力だろう。スリザリの攻撃は見えないし音もしないからな。
俺はスキルに命じる。
■――魔王スリザリを『殺し』ます
スリザリは俺のスキルを受け、途端にグラついた。
かた膝をつき、腕を抑え愕然としている。
「…………くっ、かはっ。レイゼイ=セツカ……っ。貴様、いったい何をした!?」
「死んでないらしいな。不死者というだけはある」
「いったい、何をしたぁっ!! 私の身体に……ダメージが、ヒビが入った。ヒビが入ったじゃないかぁっ!!」
「はぁ。見ればわかる」
タンスに小指すらぶつけたことがないのか?
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