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二章
宣戦布告を×そう!
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オリエンテールでの生活にも慣れ、数週間は平和な日々が続いただろうか。
今日はめずらしく城での仕事が無かった。
なので街に出てステマをして来ようと思う。
ステマとはステルスマーケティング。
本来は消費者に宣伝と気付かれないようにマーケティングすることを言うらしいが、今回はミリアの宣伝をする。
このままでは一生俺が国王代理を引き受けることになりそうなので、今のうちにミリアの人気を高めておこうと考えたのだ。
今日の相棒はレーネ。
スレイとフローラは留守番をしている。夜ご飯の当番は彼女たちだ。
隣を歩くレーネ。ケモ耳が歩くのに合わせぴょこぴょこ動いて可愛い。
こちらを見上げながら、彼女はつぶやいた。
「ご主人様、なんだか二人っきりで街に出るのひさしぶりですね……うれしい、です」
「そうだなレーネ。俺たち最初は二人だったもんな」
「ご主人様、あの、うぅ」
どうしたんだろう?
いつもなら何の抵抗もなく手を繋ぐレーネが、顔を真っ赤にして俺の指先に自分の指先をちろちろと当ててくる。
そういえば、最初にこの街を案内してくれた時は手を繋いで案内してくれて助かったな。
俺はその時を思いだし、レーネの手を取る。
「はうぅ!? ふ、ふたりっきりで繋いだらまるで……こい、びとというか」
「まるでなんだって?」
「い、いえ。ご主人様の手が好き、です。わたし、とってもこの手が好き……です」
握った手にぎゅっと力を込めるレーネ。
小さな暖かい手で柔らかいな。
俺もその手を握り返し。
「俺もレーネ(の手)が好きだぞ」
と伝えた。
するとレーネは目を白黒させこう言う。
「はうぅぅ!? ほ、ほんとうですか? スレイさんや、フローラさんより?」
「ん? まあ(スレイは抱っこすることが多いしフローラは肩車してくるからな。レーネが一番手を繋ぐことが多いし)好きだぞ」
「……わたし、今のまま死にます。幸せなまま止まりたいです!!」
「は!? 何を言っているレーネ?」
「ご主人様、レーネしあわせですっ!!」
「レーネが壊れた……」
多感な時期なのかな?
よしよしと頭を撫でレーネをなだめる。
すると逆に顔を真っ赤に爆発させ目を回すレーネであった。どうした?
さて、オリエンテールは大国で、いくつかの都市が組合わさりできた国家だ。
王都周辺が俺たちの行動範囲なのだが、辺境にも街はある。
■――脚力の限界を『殺し』ました。走行速度が向上します。
スキルを使えば高速移動できるので、近い街ならすぐに到着できるのだ。
レーネは俺の首に腕を回しお姫様抱っこの形になり、俺は走りだす。
……いつもよりレーネが俺の首もとへ密着してくるのは気のせいだろうか?
彼女の顔を見るとなんか泣きそうな感じでうるうるしてる気が。
何が原因かわからんが後で謝ったほうがいいだろうか?
そんなこんなで辺境の街へと到着した。
ここは王都に比べると、少し治安が悪い。
裏道に入ったところで、数人の男に囲まれる人影を見つけた。
カツアゲかな、あれは。
「げひゃひゃ、金を出しな兄ちゃん」
「俺たちは短気だぜ?」
「怪我したくなかったら出すもん出しなよ」
「す、すみません。何も持ってないんです。本当なんですよぉ」
気の弱そうな若者がワルにたかられてるって感じか。
ちょうどいいな。あんな感じの奴ならいい噂を立ててくれそうだ。
あいつを助けたら、ミリアの指示で助けてやったぜ! と言って立ち去るんだ。
そうすれば若者も助かる、ミリアの評判が上がり正当な王として認められる。結果俺が国王代理しなくてすむ。
まさにWINーWINーWINな関係だな。
すると、レーネがこんなことを言い出した。
「ご主人様、あの人たちはわたしに任せてくれませんか?」
「別に構わないが、実力的にはレーネに遠く及ばないだろ? あんなチンピラじゃ修行にもならないぞ?」
「違うのですご主人様。もし、あの悪い人たちに全く気づかれずに気絶させることができたら……いっこだけお願いを聞いてほしいのです」
「へぇ。ゲームってわけか。襲われている男が無事ならいいぞ。乗った! 何を賭けるんだ?」
「えへへ、わたしとご主人様の真剣なやくそくです。もしできたら……」
レーネは無邪気な微笑みを顔に浮かべこう言った。
「キスをしてほしいです」
ん?
なんて言ったこの子?
「ご主人様のキスがほしいのです」
「それってほっぺに?」
「いえ唇です」
食いぎみに否定されるほっぺチュー。
ものすごい真面目な顔で俺を見つめるレーネ。
今俺は袋小路に追い詰められている気がする。
乗った! じゃねえ数秒前の俺。
あんなチンピラ、レーネの実力じゃ首トン余裕だぞ?
「唇にする、大人のキスがいいです」
いや子供レーネさん!?
大人のキスって何? 子供のキスと違うのそれは!?
唇に手を当て、頬が真っ赤になるレーネは真剣な眼差しで俺を見ている。
これはごまかせない……。しかし、大人のキスを求めるとは。
「ダメですか? 真剣なやくそくでしたけど……」
「えーっと、そうだな。確かに約束した。けど……」
「ご主人様、わたしのこと嫌いですか?」
「いや全然! レーネはめちゃめちゃ可愛いし、いつも頑張ってる。頼りにしているぞ」
まずい。
大人のキス、俺知らない。
それにレーネはとても可愛らしいし将来は完全に約束されているけど、まだまだ子供だ。
だがここまでまっすぐと見つめられると、レーネの綺麗な顔に吸い込まれそうになる。
彼女の柔らかそうな唇が動く。
「では、あの悪い人たちを倒してきます!! ご主人様、約束ですからね!!」
「待って……」
レーネは気配を消し、獣人特有の圧倒的な身体のバネを使ってチンピラたちに接近しようとした。
今のレーネなら視認される前にあいつら殺しきれる。生かして気絶させるから少し難しいってだけだ。
やばい。このままじゃレーネとの賭けに負けてしまう。
レーネが飛び出すその瞬間。
「あーっ!?」
「なんだあいつは!?」
「おいおい、ヤベエんじゃねえか……?」
チンピラ三人がこちらを振り向いて、指を指していた。
「えっ、なんで……」
驚愕と落胆を顔に浮かべるレーネ。やつらに見つかってしまったのだ。
しかしレーネも見つかったが、チンピラが指差してるのはどうも俺たちの背後にいる奴らしいな。
「ほっほっほ。ゴミのような人間がこんなにもいらっしゃいます。まるでウジ虫ですな」
羽根が生えた紫色をした悪魔のような男が空中に浮いていた。
どうもこちらに……というかこの街全体に敵意があるようだ。
「この街にいる人間たち聞きなさい。これは宣戦布告です。魔王スリザリ様はオリエンテールを破壊しつくすと宣言しました。まずはこの小さな街を、街ごと地図から消してあげましょうほっほっほ……逃げても無駄ですよ。わざわざ皆に聞こえるようにして伝えているのは『死』の恐怖を与えるためです。決して、誰も逃がしませんからね」
なんかある意味すごい奴が出てきた。
しかし特有のオーラを放っているのか、チンピラたちは怯えて地面に転がり震えてしまっている。
この街を消し去るというのは本当だろう。それぐらいの力はありそうな感じだな。
仕方ない。俺のスキルで対抗するか。
スキル発動。
あいつの横顔を……。
「ぶげええええぇぇぇぇっっつ!?!?」
ふっとば、す?
まだスキルは発動していないが?
紫野郎は風を切る音をさせながら真横にふっとんでいく。
「ご主人様ーあの紫色はまかせてください。わたし、すこしだけ怒ってます。ほんのすこしだけ」
レーネがいつの間にか飛び出していて、空中にいる紫悪魔みたいな奴をぶん殴ってた。
あんなに怒ったレーネを見たことない。
握ったレーネの震える拳を見て、あーあいつ死んだなと俺は思ったのだった。
今日はめずらしく城での仕事が無かった。
なので街に出てステマをして来ようと思う。
ステマとはステルスマーケティング。
本来は消費者に宣伝と気付かれないようにマーケティングすることを言うらしいが、今回はミリアの宣伝をする。
このままでは一生俺が国王代理を引き受けることになりそうなので、今のうちにミリアの人気を高めておこうと考えたのだ。
今日の相棒はレーネ。
スレイとフローラは留守番をしている。夜ご飯の当番は彼女たちだ。
隣を歩くレーネ。ケモ耳が歩くのに合わせぴょこぴょこ動いて可愛い。
こちらを見上げながら、彼女はつぶやいた。
「ご主人様、なんだか二人っきりで街に出るのひさしぶりですね……うれしい、です」
「そうだなレーネ。俺たち最初は二人だったもんな」
「ご主人様、あの、うぅ」
どうしたんだろう?
いつもなら何の抵抗もなく手を繋ぐレーネが、顔を真っ赤にして俺の指先に自分の指先をちろちろと当ててくる。
そういえば、最初にこの街を案内してくれた時は手を繋いで案内してくれて助かったな。
俺はその時を思いだし、レーネの手を取る。
「はうぅ!? ふ、ふたりっきりで繋いだらまるで……こい、びとというか」
「まるでなんだって?」
「い、いえ。ご主人様の手が好き、です。わたし、とってもこの手が好き……です」
握った手にぎゅっと力を込めるレーネ。
小さな暖かい手で柔らかいな。
俺もその手を握り返し。
「俺もレーネ(の手)が好きだぞ」
と伝えた。
するとレーネは目を白黒させこう言う。
「はうぅぅ!? ほ、ほんとうですか? スレイさんや、フローラさんより?」
「ん? まあ(スレイは抱っこすることが多いしフローラは肩車してくるからな。レーネが一番手を繋ぐことが多いし)好きだぞ」
「……わたし、今のまま死にます。幸せなまま止まりたいです!!」
「は!? 何を言っているレーネ?」
「ご主人様、レーネしあわせですっ!!」
「レーネが壊れた……」
多感な時期なのかな?
よしよしと頭を撫でレーネをなだめる。
すると逆に顔を真っ赤に爆発させ目を回すレーネであった。どうした?
さて、オリエンテールは大国で、いくつかの都市が組合わさりできた国家だ。
王都周辺が俺たちの行動範囲なのだが、辺境にも街はある。
■――脚力の限界を『殺し』ました。走行速度が向上します。
スキルを使えば高速移動できるので、近い街ならすぐに到着できるのだ。
レーネは俺の首に腕を回しお姫様抱っこの形になり、俺は走りだす。
……いつもよりレーネが俺の首もとへ密着してくるのは気のせいだろうか?
彼女の顔を見るとなんか泣きそうな感じでうるうるしてる気が。
何が原因かわからんが後で謝ったほうがいいだろうか?
そんなこんなで辺境の街へと到着した。
ここは王都に比べると、少し治安が悪い。
裏道に入ったところで、数人の男に囲まれる人影を見つけた。
カツアゲかな、あれは。
「げひゃひゃ、金を出しな兄ちゃん」
「俺たちは短気だぜ?」
「怪我したくなかったら出すもん出しなよ」
「す、すみません。何も持ってないんです。本当なんですよぉ」
気の弱そうな若者がワルにたかられてるって感じか。
ちょうどいいな。あんな感じの奴ならいい噂を立ててくれそうだ。
あいつを助けたら、ミリアの指示で助けてやったぜ! と言って立ち去るんだ。
そうすれば若者も助かる、ミリアの評判が上がり正当な王として認められる。結果俺が国王代理しなくてすむ。
まさにWINーWINーWINな関係だな。
すると、レーネがこんなことを言い出した。
「ご主人様、あの人たちはわたしに任せてくれませんか?」
「別に構わないが、実力的にはレーネに遠く及ばないだろ? あんなチンピラじゃ修行にもならないぞ?」
「違うのですご主人様。もし、あの悪い人たちに全く気づかれずに気絶させることができたら……いっこだけお願いを聞いてほしいのです」
「へぇ。ゲームってわけか。襲われている男が無事ならいいぞ。乗った! 何を賭けるんだ?」
「えへへ、わたしとご主人様の真剣なやくそくです。もしできたら……」
レーネは無邪気な微笑みを顔に浮かべこう言った。
「キスをしてほしいです」
ん?
なんて言ったこの子?
「ご主人様のキスがほしいのです」
「それってほっぺに?」
「いえ唇です」
食いぎみに否定されるほっぺチュー。
ものすごい真面目な顔で俺を見つめるレーネ。
今俺は袋小路に追い詰められている気がする。
乗った! じゃねえ数秒前の俺。
あんなチンピラ、レーネの実力じゃ首トン余裕だぞ?
「唇にする、大人のキスがいいです」
いや子供レーネさん!?
大人のキスって何? 子供のキスと違うのそれは!?
唇に手を当て、頬が真っ赤になるレーネは真剣な眼差しで俺を見ている。
これはごまかせない……。しかし、大人のキスを求めるとは。
「ダメですか? 真剣なやくそくでしたけど……」
「えーっと、そうだな。確かに約束した。けど……」
「ご主人様、わたしのこと嫌いですか?」
「いや全然! レーネはめちゃめちゃ可愛いし、いつも頑張ってる。頼りにしているぞ」
まずい。
大人のキス、俺知らない。
それにレーネはとても可愛らしいし将来は完全に約束されているけど、まだまだ子供だ。
だがここまでまっすぐと見つめられると、レーネの綺麗な顔に吸い込まれそうになる。
彼女の柔らかそうな唇が動く。
「では、あの悪い人たちを倒してきます!! ご主人様、約束ですからね!!」
「待って……」
レーネは気配を消し、獣人特有の圧倒的な身体のバネを使ってチンピラたちに接近しようとした。
今のレーネなら視認される前にあいつら殺しきれる。生かして気絶させるから少し難しいってだけだ。
やばい。このままじゃレーネとの賭けに負けてしまう。
レーネが飛び出すその瞬間。
「あーっ!?」
「なんだあいつは!?」
「おいおい、ヤベエんじゃねえか……?」
チンピラ三人がこちらを振り向いて、指を指していた。
「えっ、なんで……」
驚愕と落胆を顔に浮かべるレーネ。やつらに見つかってしまったのだ。
しかしレーネも見つかったが、チンピラが指差してるのはどうも俺たちの背後にいる奴らしいな。
「ほっほっほ。ゴミのような人間がこんなにもいらっしゃいます。まるでウジ虫ですな」
羽根が生えた紫色をした悪魔のような男が空中に浮いていた。
どうもこちらに……というかこの街全体に敵意があるようだ。
「この街にいる人間たち聞きなさい。これは宣戦布告です。魔王スリザリ様はオリエンテールを破壊しつくすと宣言しました。まずはこの小さな街を、街ごと地図から消してあげましょうほっほっほ……逃げても無駄ですよ。わざわざ皆に聞こえるようにして伝えているのは『死』の恐怖を与えるためです。決して、誰も逃がしませんからね」
なんかある意味すごい奴が出てきた。
しかし特有のオーラを放っているのか、チンピラたちは怯えて地面に転がり震えてしまっている。
この街を消し去るというのは本当だろう。それぐらいの力はありそうな感じだな。
仕方ない。俺のスキルで対抗するか。
スキル発動。
あいつの横顔を……。
「ぶげええええぇぇぇぇっっつ!?!?」
ふっとば、す?
まだスキルは発動していないが?
紫野郎は風を切る音をさせながら真横にふっとんでいく。
「ご主人様ーあの紫色はまかせてください。わたし、すこしだけ怒ってます。ほんのすこしだけ」
レーネがいつの間にか飛び出していて、空中にいる紫悪魔みたいな奴をぶん殴ってた。
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握ったレーネの震える拳を見て、あーあいつ死んだなと俺は思ったのだった。
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