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第弐章──過去と真実──
死せる君と。捌話
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桃を引き連れ彼の森に来た。腰に提げた布袋には布に包んだ小刀が二挺と、水で溶いた阿片を染み込ませた紙、厚めの面型。私は此処で全てを終わらせる覚悟だった。
街から裏道を使えば、何十分と経たずに其処に辿り着けることを桃から聞いていた。その為、目的地には直ぐに着いた。森の茂みを抜け開けた所に其れはあり、まるで人々から忘れ去られたかのような佇まいである。
桃を外に置いて、音を立てない様慎重に中に入る。あの男に勘づかれ見つかれば、いくら私でも歯が立たないからだ。だが、中に誰の気配も無かった。いや、部屋を覗いていくと寝間らしき場所に誰かが寝ている。見た感じあの男とは思えない。気になって近づくと、舞子が寝息を立てて寝ていた。
思わず顔が緩みかけるが堪える。そして面型を装着し、阿片の染み込んだ紙を小さな磁器に乗せ燐寸で火をつける。白い煙が上がり寝間に充満していく。まともに吸えば痛覚が無くなり、中毒症状に襲われる危険なものだ。舞子には痛みで殺される苦しみよりも、信頼していた姉からの裏切りによって殺される苦しみで歪む顔が見たかった。
そして寝ている舞子に跨り首に手をかけた。
顔が少し歪むが目を覚まさない。焦っていた私は両手に更に力を入れる。はっと目を覚ました舞子は私の顔を見るなり目を見開く。
「………ウィー……リ…」
か細い声で発せられた其れは私の期待を大いに裏切るものだった。
すると次の瞬間腹部に衝撃が襲った。其の一瞬の隙を突き、舞子は逃げ出す。少しでも足止めをする為に咄嗟に目に付いた斧を投げたが首を掠っただけで大した足止めにならなかった。だが、首から勢い良く血が噴出している。此の儘だと恐らく、私が何も手を出さなくても死ぬだろう。瞬間的に腕を酷使した為片腕は悲鳴をあげるが、厭わず後を追いかけ森を出た街で捕らえた。舞子の白かった襦袢は大部分が血で真っ赤に染まっているが関係無い。私は私の望みの為にこれから妹を手に掛けるのだ。
「さぁ、追いかけっこは終わりよ」
街から裏道を使えば、何十分と経たずに其処に辿り着けることを桃から聞いていた。その為、目的地には直ぐに着いた。森の茂みを抜け開けた所に其れはあり、まるで人々から忘れ去られたかのような佇まいである。
桃を外に置いて、音を立てない様慎重に中に入る。あの男に勘づかれ見つかれば、いくら私でも歯が立たないからだ。だが、中に誰の気配も無かった。いや、部屋を覗いていくと寝間らしき場所に誰かが寝ている。見た感じあの男とは思えない。気になって近づくと、舞子が寝息を立てて寝ていた。
思わず顔が緩みかけるが堪える。そして面型を装着し、阿片の染み込んだ紙を小さな磁器に乗せ燐寸で火をつける。白い煙が上がり寝間に充満していく。まともに吸えば痛覚が無くなり、中毒症状に襲われる危険なものだ。舞子には痛みで殺される苦しみよりも、信頼していた姉からの裏切りによって殺される苦しみで歪む顔が見たかった。
そして寝ている舞子に跨り首に手をかけた。
顔が少し歪むが目を覚まさない。焦っていた私は両手に更に力を入れる。はっと目を覚ました舞子は私の顔を見るなり目を見開く。
「………ウィー……リ…」
か細い声で発せられた其れは私の期待を大いに裏切るものだった。
すると次の瞬間腹部に衝撃が襲った。其の一瞬の隙を突き、舞子は逃げ出す。少しでも足止めをする為に咄嗟に目に付いた斧を投げたが首を掠っただけで大した足止めにならなかった。だが、首から勢い良く血が噴出している。此の儘だと恐らく、私が何も手を出さなくても死ぬだろう。瞬間的に腕を酷使した為片腕は悲鳴をあげるが、厭わず後を追いかけ森を出た街で捕らえた。舞子の白かった襦袢は大部分が血で真っ赤に染まっているが関係無い。私は私の望みの為にこれから妹を手に掛けるのだ。
「さぁ、追いかけっこは終わりよ」
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