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第弐章──過去と真実──
死せる君と。漆話
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或る時、私に従順な下僕である桃は用事から帰宅するや否や、両親と幼馴染の策略で私から舞子を引き離そうとしている事を密告してくれた。其の事を知った時は怒りで如何にかなりそうだったが、私の望む結果を見る為の舞台としては丁度良い。
自分でも驚く位に私の行動力は凄まじく、舞子を送り出した直後両親と幼馴染を恬淡と殺したが、私の思っていた様な結果は得られなかった。母親は顔を見る前に殺してしまったし、父親は鈍感過ぎて目を見開いた儘。この状態を見た桃は少し震えていたが、直ぐに死屍の処理を手伝ってくれたから有難い。今この状況で何かあれば自分も殺されるとでも思っているのだろう。今の私は人間の息が絶える瞬間の苦痛に歪む顔を見たいだけで、目の前に三人の標的が居たから三人殺しただけである。其れに、桃は大抵無表情である為に死に際でも私の望む顔は見られないだろう。然し、私は更なる欲望に心を支配されていた。其れは、私に絶大な信頼を寄せる愛しい妹の舞子は何の様な顔をするのかと言うことである。
行方知れずになった舞子を見つけるのは至難の業だった。探しても見つからず頭を抱えていたのだが、執務上偶然立ち寄った小さな街で舞子を見つけた事により連絡を取る事を可能にした為、舞子の行動が把握出来るようになった。舞子を見つけた時、最初は家に連れ帰り散々可愛がってから殺めるつもりで話を持ち掛けたものの断られ焦ったものだが、舞子が文通を提案してくれたのだ。あの紳士気取りの男の守りは堅く、少々望みの邪魔にはなるだろうが、最上の悲劇の終幕を飾るには欠かせない。打ち解けているかのように振る舞い警戒心を解く。
住んでいる場所は教えてくれなかった為、桃に頼んで時間をかけて見つけたものは家と呼ぶには小さく、古い小屋の様なものらしい。舞子があの男の手中にあると言うだけで吐き気がしそうな程なのにこれ以上耐えられない。其れに、そろそろ両親と幼馴染の屍を隠すのにも限界を迎えていた私は、直ぐに計画を練り実行に移すことに決めた。
私の代でこれ迄築き上げた円谷家を潰すのは躊躇ったが、仕方ない。火のついた燐寸を裏の薪の束に放り込むと瞬く間に燃え広がった。轟轟と音を立て朽ちていく様を見ながら桃と舞子の元へ向かった。
自分でも驚く位に私の行動力は凄まじく、舞子を送り出した直後両親と幼馴染を恬淡と殺したが、私の思っていた様な結果は得られなかった。母親は顔を見る前に殺してしまったし、父親は鈍感過ぎて目を見開いた儘。この状態を見た桃は少し震えていたが、直ぐに死屍の処理を手伝ってくれたから有難い。今この状況で何かあれば自分も殺されるとでも思っているのだろう。今の私は人間の息が絶える瞬間の苦痛に歪む顔を見たいだけで、目の前に三人の標的が居たから三人殺しただけである。其れに、桃は大抵無表情である為に死に際でも私の望む顔は見られないだろう。然し、私は更なる欲望に心を支配されていた。其れは、私に絶大な信頼を寄せる愛しい妹の舞子は何の様な顔をするのかと言うことである。
行方知れずになった舞子を見つけるのは至難の業だった。探しても見つからず頭を抱えていたのだが、執務上偶然立ち寄った小さな街で舞子を見つけた事により連絡を取る事を可能にした為、舞子の行動が把握出来るようになった。舞子を見つけた時、最初は家に連れ帰り散々可愛がってから殺めるつもりで話を持ち掛けたものの断られ焦ったものだが、舞子が文通を提案してくれたのだ。あの紳士気取りの男の守りは堅く、少々望みの邪魔にはなるだろうが、最上の悲劇の終幕を飾るには欠かせない。打ち解けているかのように振る舞い警戒心を解く。
住んでいる場所は教えてくれなかった為、桃に頼んで時間をかけて見つけたものは家と呼ぶには小さく、古い小屋の様なものらしい。舞子があの男の手中にあると言うだけで吐き気がしそうな程なのにこれ以上耐えられない。其れに、そろそろ両親と幼馴染の屍を隠すのにも限界を迎えていた私は、直ぐに計画を練り実行に移すことに決めた。
私の代でこれ迄築き上げた円谷家を潰すのは躊躇ったが、仕方ない。火のついた燐寸を裏の薪の束に放り込むと瞬く間に燃え広がった。轟轟と音を立て朽ちていく様を見ながら桃と舞子の元へ向かった。
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