社畜の彗星は銀髪の妖精と3つの難題(クエスト)に挑む

木蔦空

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第2章── Memory of the World──

第22話 常磐色の能力者

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「この世界の支配者ロードの事ですよ。貴方ならお詳しいかと思いましてね」

 軽くサヴェータスを睨みつけると、彼は口をにぃっと歪ませた。

「……うむ。確かに他の能力者アビリティアよりかは近しいとは言えるな。でもそれがどうしたんじゃ?」

「しらばっくれないでくださいよ、この世界で他人に干渉出来る能力アビリティを持っているのは僕とマキと貴方です。僕は有り得ないとして、その能力を悪用するのは、マキか貴方のどちらかなんですよ!」

「……お前、さっき自分も能力者アビリティアと言っておったな……。妖精を侍らせているという事は黒色ノワールじゃろ。という事は、どうやらあいつ……ヤイカの後任かなんかじゃな?」

「……何が言いたいんですか」

「お前、ワシが能力を悪用してヤイカを殺したとでも思っとるんじゃろ。新参者の能力者アビリティア黒色ノワール……。お前の方が疑われても可笑おかしくないと言うのに……」

「違うのか……!?」

「結論から言おう。ワシは何も手を出しとらん。むしろ支配者ロードの殺害を企てる位には、彼奴あやつの事は憎んでおる」

「何だって……!?」

 知らなかった。僕は早とちりしていたのだ。

「お前さんがワシを疑うのも無理は無い。 確かにワシは他人との意思疎通テレパシー、無機物に触れその歴史を読み取るサイコメトリー、そして透視クレアボヤンスといった超能力の司る能力者アビリティアじゃからな。 じゃが、原点に戻って考えてみよ」

「原点……?」

「そうじゃ。 ワシら能力者アビリティアの他にアビリティアの情報を知る者と言えば一人しか居らぬわ」

「……! もしかして支配者ロードか……!?」

「フフっ、察しが良いな。ワシがその事に勘づいたのもつい最近の事ゆえ、あまり詳しくは分からぬが」

「どう……して……」

「ワシは唯一未だに支配者……イオと交信しておる。 歴史書じゃ能力者を任命してから消えたなんて書かれておるがな。 実はそうでは無いのじゃ」

 その時、僕は妙な不快感を覚えた。 『イオ』という名を耳にするのはなんだか初めてでは無い気がしたのだ。

「……という事は貴方は最も世界の真理に近い人物であるという解釈で大丈夫か?」

「左様。 だがイオは用心深い奴でな、滅多にこっちには来ない。 ワシらを避けるように」

「その言い方だと、まるで支配者イオは外界から干渉しているみたいだが」

「ほう……その考え方は無かったわい。 ……いや、お前さんが異世界から来たというのならば有り得ない話では無いのか……? 確かに会話しているとたまに妙な単語がしばしば出てくる時はあるのじゃが」

「それって今までの話を聞く限り、この世界じゃ聞き馴染みない単語って事になるよな……」

「そうなる。 ワシが長年調べ続けた結果、最近になってようやくバラバラになっていた情報が一つにまとまり始めてな。 どうやら、ワシらの頭脳や思考はイオのコピーに過ぎないと言う事じゃ。 無論自我はあるし性格も異なるがな」

「コピー? だけどさっき、聞き馴染みのない単語を偶に聞くと言ったよな? それだとその考察との辻褄つじつまは合わないのでは?」

「ハハハ、やはりお前さんは鋭い。 じゃがな、逆に考えるのじゃよ。 コピーというのは、今現在のイオの頭脳でなく遥か昔の記憶から抽出されたものだとしたら? ……例えばこのであれば彼奴の知識も未熟であろう」

「確かに言われてみればそうだ。 それなら合点がいく。 だとしたら、やはり外界から干渉しているのは濃厚だな」

「恐らく間違い無いじゃろうな。 奴はワシらが生まれるより前にこの世界の住人として紛れ、やがて支配者ロードとして君臨した。 そして守護者ガーディアンという名の能力者奴隷を生み出し、常にワシらを通して監視しているのじゃろうな。 自身にとって都合のいい世界を守り続ける為に」

 サヴェータスはその容姿に見合わない酷く冷淡な言葉を、吐き捨てるように僕に告げた。
 えも言われぬ雰囲気は、まるで終わりかけの蝋燭ろうそくのように徐々に僕の生気を奪ってゆく。

「テバット、震えてるけど大丈夫?」

 今まで口を閉じていたナツメから不意に話し掛けられ、少しびっくりしながらも応じた。

「ああ、なんというか核心に迫ったようでちょっと疲れてしまったみたいだ」

「無理もないよ。 あまりにも情報量が多いし濃すぎるからね」

「だけど、今の僕の能力値じゃ多分どうする事も出来ないと思う。 未熟過ぎるからな」

「ならば、今は時に備えて能力アビリティの強化に努めるべきじゃな」

「サヴェ、簡単に言うがそんな易しいものではないんだろ?」

「当然じゃろうが。 どうして苦労せずして強化できる? じゃが安心せい、ワシよりもその手に関して適任の者を知っておる」

 見た目に似合わぬ黒い微笑を浮かべ僕を見たサヴェの眼は、完全に楽しんでいる様に見えた。
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