社畜の彗星は銀髪の妖精と3つの難題(クエスト)に挑む

木蔦空

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第2章── Memory of the World──

第18話 最強装備

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いくら見た目が幼く体重の軽い少女だとは言え、体力の無い僕にとって背負い続けるのはキツかった。

「き、キコル……すまないがそろそろ降りてくれないか……。腕が限界だ……」

「テバット……寝てる女の子に降りろだなんてこくだと思わないの?」

すかさずナツメが煽ってくる。

「良いよなナツメは……飛んで移動出来るんだから……」

「いやぁ~それ程でも~」

若干嫌味を込めて言ったつもりなのだが、当の本人は満更でもない様子だ。

「別に褒めてないんだけどな……。ところで、そろそろ宿探さないか? 空も暗くなってきたしさ……」

「そうだね……でも見た感じ、どうやらアステル街は都会っぽいから、宿が見つかっても今持ってるリムスで足りるかどうか……」

「……忘れてた」

そうだった。宿を見つけるのはいいが泊まるためのリムスが足りなければ意味が無いのだ。

「とりあえず今どれくらい持ってるか確認してみるな」

一旦キコルを激しい西日からさえぎる為に近くの木陰に降ろし、ステボを起動させリムスのらんをタップする。

「……えっ?」

「テバット、どうかした?」

ステボをのぞき込み、目を見開いたナツメと思わず顔を合わせた。

「「増えてる!?」」

そう。最初に支給された5000リムスから飯代や宿代を差し引いて、約1300リムス程しか無かったはずなのに、目の前に表示されていた金額は予想もしていないものだった。

「5万1280リムス!?」

「す、すごいよテバット! これならどんな宿にも泊まれるよ! うーん、でもなんで増えたんだろう……」

「……恐らく難題クエスト攻略クリアしたからか……?」

「その可能性が高いね……。でも万々歳ばんばんざいだよ!」

興奮するナツメの横で僕はすでに違う事を考えていた。それはマキと2人きりになった時に言われた事についてだ。

『そのスーツとやらは少なくとも10の機能があるみたいだから、気になるならのぞいてみれば良いよ』

僕はその文言もんごんがどうも気になっていた。丁度ステボも開いているし見てみようと思い立った。

「ちょっ、テバット! 今見てたのに~!」

文句を言うナツメを他所よそに僕は今度は装備品の欄を開く。調べてみると、僕の今身に付けているスーツは『漆黒しっこく衣裳コスチューム』と言うらしい。

「はぁ……。本当にこの世界に連れて来た奴はどんな趣味してんだよ……」

「同意だね……。どう見てもただのスーツなのに」

だが、効果エフェクトの所をタップすると、ステボの画面をおおい尽くす程の文字が現れた。

「うおっ、なんだこりゃあ……。……なになに……? 『能力上昇アビリティエスカレーション』『聴覚上昇ヒアリングエスカレーション』『視覚上昇アイサイトエスカレーション』『持続回復サスティンドゥリカバリー』『覚醒補助エヴォークアシスタント』『能力補助アビリティアシスタント』『肉体強化インテンシフィションフィジカル』『危機察知クライシスディテクション』『感情制御エモーショナルコントロール』『認識阻害コグニティブオブストラクション』……」

他にも色々あったが、マキの言う通りこのスーツは途轍とてつもない機能が付与エンチャントされているらしい。

「何これ……文字が多すぎて酔いそうだよ……。でも、結構思い当たる節あるよね」

ナツメの言う通り、スーツのおかげでは無いかと思う所はある。例を挙げるなら、ルキによって傷つけられた首の傷は跡形もなく消え去っていたし、体力の無い僕が技能スキルの発動一発目に息切れだけで済んでいた。どれも普通は有り得ないから、きっとマキの言っていた事は正しいのだろうと思っていたが、まさかここまでとは……

「はは……そりゃあ狙われる訳だな……」

「え?」

「マキさんに言われたんだよ。どうやら僕の身に付けてるこのスーツ、恐らく世界最強装備だから存在が知られれば僕は殺害の対象になるんだってさ。それと、コイツが無けりゃ能力アビリティが暴走するんだとよ。全く物騒ぶっそうな話だよな」

「……さっきマキがテバットを連れて行ったのはその話をする為?」

「ああ……。あの双子……他の能力者アビリティアとは違う何かを感じる……」

「でも、悪い人達では無かったよ?」

「うん。多分僕達の味方だと思うから、懸念することは無いけど」

「そうだね」

益々ますますマキルキに対する謎が増えていく。僕はまだ新人の能力者だからあの人達と考える事が違うのだと思うが、何を考えているのかさっぱり読めない。

「……ナツメ、この話は誰にもするな」

「私話せる人テバットかあの双子くらいだよ……言いたくても言えないんだよね」

「確かに……」

「あーっ! キコル目覚めちゃった!! 今の話聞かれてないかな!?」

「うっそだろ……!?」

「……ん、おはよ。テバット慌ててるけどどうしたの?」

欠伸あくびをしながら尋ねるキコルを何とか誤魔化ごまかして小綺麗な宿に泊まった。背中は相変わらず悲鳴をあげた。
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