19 / 23
第2章── Memory of the World──
第18話 最強装備
しおりを挟む
いくら見た目が幼く体重の軽い少女だとは言え、体力の無い僕にとって背負い続けるのはキツかった。
「き、キコル……すまないがそろそろ降りてくれないか……。腕が限界だ……」
「テバット……寝てる女の子に降りろだなんて酷だと思わないの?」
すかさずナツメが煽ってくる。
「良いよなナツメは……飛んで移動出来るんだから……」
「いやぁ~それ程でも~」
若干嫌味を込めて言ったつもりなのだが、当の本人は満更でもない様子だ。
「別に褒めてないんだけどな……。ところで、そろそろ宿探さないか? 空も暗くなってきたしさ……」
「そうだね……でも見た感じ、どうやらアステル街は都会っぽいから、宿が見つかっても今持ってるリムスで足りるかどうか……」
「……忘れてた」
そうだった。宿を見つけるのはいいが泊まるための金が足りなければ意味が無いのだ。
「とりあえず今どれくらい持ってるか確認してみるな」
一旦キコルを激しい西日から遮る為に近くの木陰に降ろし、ステボを起動させリムスの欄をタップする。
「……えっ?」
「テバット、どうかした?」
ステボを覗き込み、目を見開いたナツメと思わず顔を合わせた。
「「増えてる!?」」
そう。最初に支給された5000リムスから飯代や宿代を差し引いて、約1300リムス程しか無かったはずなのに、目の前に表示されていた金額は予想もしていないものだった。
「5万1280リムス!?」
「す、凄いよテバット! これならどんな宿にも泊まれるよ! うーん、でもなんで増えたんだろう……」
「……恐らく難題を攻略したからか……?」
「その可能性が高いね……。でも万々歳だよ!」
興奮するナツメの横で僕は既に違う事を考えていた。それはマキと2人きりになった時に言われた事についてだ。
『そのスーツとやらは少なくとも10の機能があるみたいだから、気になるなら覗いてみれば良いよ』
僕はその文言がどうも気になっていた。丁度ステボも開いているし見てみようと思い立った。
「ちょっ、テバット! 今見てたのに~!」
文句を言うナツメを他所に僕は今度は装備品の欄を開く。調べてみると、僕の今身に付けているスーツは『漆黒の衣裳』と言うらしい。
「はぁ……。本当にこの世界に連れて来た奴はどんな趣味してんだよ……」
「同意だね……。どう見てもただのスーツなのに」
だが、効果の所をタップすると、ステボの画面を覆い尽くす程の文字が現れた。
「うおっ、なんだこりゃあ……。……なになに……? 『能力上昇』『聴覚上昇』『視覚上昇』『持続回復』『覚醒補助』『能力補助』『肉体強化』『危機察知』『感情制御』『認識阻害』……」
他にも色々あったが、マキの言う通りこのスーツは途轍もない機能が付与されているらしい。
「何これ……文字が多すぎて酔いそうだよ……。でも、結構思い当たる節あるよね」
ナツメの言う通り、スーツのおかげでは無いかと思う所はある。例を挙げるなら、ルキによって傷つけられた首の傷は跡形もなく消え去っていたし、体力の無い僕が技能の発動一発目に息切れだけで済んでいた。どれも普通は有り得ないから、きっとマキの言っていた事は正しいのだろうと思っていたが、まさかここまでとは……
「はは……そりゃあ狙われる訳だな……」
「え?」
「マキさんに言われたんだよ。どうやら僕の身に付けてるこのスーツ、恐らく世界最強装備だから存在が知られれば僕は殺害の対象になるんだってさ。それと、コイツが無けりゃ能力が暴走するんだとよ。全く物騒な話だよな」
「……さっきマキがテバットを連れて行ったのはその話をする為?」
「ああ……。あの双子……他の能力者とは違う何かを感じる……」
「でも、悪い人達では無かったよ?」
「うん。多分僕達の味方だと思うから、懸念することは無いけど」
「そうだね」
益々マキルキに対する謎が増えていく。僕はまだ新人の能力者だからあの人達と考える事が違うのだと思うが、何を考えているのかさっぱり読めない。
「……ナツメ、この話は誰にもするな」
「私話せる人テバットかあの双子くらいだよ……言いたくても言えないんだよね」
「確かに……」
「あーっ! キコル目覚めちゃった!! 今の話聞かれてないかな!?」
「うっそだろ……!?」
「……ん、おはよ。テバット慌ててるけどどうしたの?」
欠伸をしながら尋ねるキコルを何とか誤魔化して小綺麗な宿に泊まった。背中は相変わらず悲鳴をあげた。
「き、キコル……すまないがそろそろ降りてくれないか……。腕が限界だ……」
「テバット……寝てる女の子に降りろだなんて酷だと思わないの?」
すかさずナツメが煽ってくる。
「良いよなナツメは……飛んで移動出来るんだから……」
「いやぁ~それ程でも~」
若干嫌味を込めて言ったつもりなのだが、当の本人は満更でもない様子だ。
「別に褒めてないんだけどな……。ところで、そろそろ宿探さないか? 空も暗くなってきたしさ……」
「そうだね……でも見た感じ、どうやらアステル街は都会っぽいから、宿が見つかっても今持ってるリムスで足りるかどうか……」
「……忘れてた」
そうだった。宿を見つけるのはいいが泊まるための金が足りなければ意味が無いのだ。
「とりあえず今どれくらい持ってるか確認してみるな」
一旦キコルを激しい西日から遮る為に近くの木陰に降ろし、ステボを起動させリムスの欄をタップする。
「……えっ?」
「テバット、どうかした?」
ステボを覗き込み、目を見開いたナツメと思わず顔を合わせた。
「「増えてる!?」」
そう。最初に支給された5000リムスから飯代や宿代を差し引いて、約1300リムス程しか無かったはずなのに、目の前に表示されていた金額は予想もしていないものだった。
「5万1280リムス!?」
「す、凄いよテバット! これならどんな宿にも泊まれるよ! うーん、でもなんで増えたんだろう……」
「……恐らく難題を攻略したからか……?」
「その可能性が高いね……。でも万々歳だよ!」
興奮するナツメの横で僕は既に違う事を考えていた。それはマキと2人きりになった時に言われた事についてだ。
『そのスーツとやらは少なくとも10の機能があるみたいだから、気になるなら覗いてみれば良いよ』
僕はその文言がどうも気になっていた。丁度ステボも開いているし見てみようと思い立った。
「ちょっ、テバット! 今見てたのに~!」
文句を言うナツメを他所に僕は今度は装備品の欄を開く。調べてみると、僕の今身に付けているスーツは『漆黒の衣裳』と言うらしい。
「はぁ……。本当にこの世界に連れて来た奴はどんな趣味してんだよ……」
「同意だね……。どう見てもただのスーツなのに」
だが、効果の所をタップすると、ステボの画面を覆い尽くす程の文字が現れた。
「うおっ、なんだこりゃあ……。……なになに……? 『能力上昇』『聴覚上昇』『視覚上昇』『持続回復』『覚醒補助』『能力補助』『肉体強化』『危機察知』『感情制御』『認識阻害』……」
他にも色々あったが、マキの言う通りこのスーツは途轍もない機能が付与されているらしい。
「何これ……文字が多すぎて酔いそうだよ……。でも、結構思い当たる節あるよね」
ナツメの言う通り、スーツのおかげでは無いかと思う所はある。例を挙げるなら、ルキによって傷つけられた首の傷は跡形もなく消え去っていたし、体力の無い僕が技能の発動一発目に息切れだけで済んでいた。どれも普通は有り得ないから、きっとマキの言っていた事は正しいのだろうと思っていたが、まさかここまでとは……
「はは……そりゃあ狙われる訳だな……」
「え?」
「マキさんに言われたんだよ。どうやら僕の身に付けてるこのスーツ、恐らく世界最強装備だから存在が知られれば僕は殺害の対象になるんだってさ。それと、コイツが無けりゃ能力が暴走するんだとよ。全く物騒な話だよな」
「……さっきマキがテバットを連れて行ったのはその話をする為?」
「ああ……。あの双子……他の能力者とは違う何かを感じる……」
「でも、悪い人達では無かったよ?」
「うん。多分僕達の味方だと思うから、懸念することは無いけど」
「そうだね」
益々マキルキに対する謎が増えていく。僕はまだ新人の能力者だからあの人達と考える事が違うのだと思うが、何を考えているのかさっぱり読めない。
「……ナツメ、この話は誰にもするな」
「私話せる人テバットかあの双子くらいだよ……言いたくても言えないんだよね」
「確かに……」
「あーっ! キコル目覚めちゃった!! 今の話聞かれてないかな!?」
「うっそだろ……!?」
「……ん、おはよ。テバット慌ててるけどどうしたの?」
欠伸をしながら尋ねるキコルを何とか誤魔化して小綺麗な宿に泊まった。背中は相変わらず悲鳴をあげた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
丘の上の嘆き岩
森羅秋
ファンタジー
とある街のとある孤児院の裏の丘の上に突然現れた大きな岩。
毎日深夜になると嘆き声を響かせる岩に恐れ、次々と家族が去ってしまう。
家族はきっと戻ってくる、と孤児院で待ち続けるフェール。
そんなある日、嘆き岩の様子を見に行った帰り道で、フェールは奇妙な魚と出会うことになる。
*****************
中編小説くらいの長さです。
こちらの作品はpixivに載せているものを加筆&修正したものです。
*****************
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる