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第2章── Memory of the World──
第16話 RE START
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「ところで、技能は習得できたの?」
「なんとか一発目で成功しました……でも、発動後の体力の消耗が激しいんです……」
「えっ、い、一発目でですか……!? キミは相当筋が良いらしいですね……」
「テバット、一瞬で襲ってきた奴を倒したんだよ!」
「思っていたよりも使いこなせている様で良かったわ。最初の内は体力が追いつかなくて当然よ。兄様が習得に時間が掛かったのは、不器用ってだけじゃなくて、元々体力が無かったからだもの」
「ルキは幼少期から活発でしたからねぇ……僕は最初の頃はルキ相手に催眠すら掛けれず、よく吐血したものです」
吐血するマキを想像し吹き出しそうになったが、こちらを見るルキの目が完全に殺意に満ちていたため何とか堪える
「テバット、ここまで来て早々悪いけど早く立ち去った方が良いわ」
「えっ?」
「昨日話した時、アタシ達7人で世界を調和させていると言ったわよね?」
「そう言えば言ってましたね」
「あれ、アタシ達の身体に眠る能力が他の能力者の能力と良い具合に反発し合ってるからよ。どういう意味かと言うと……」
「ルキ、これじゃあ長居するのと同じ事ですよ。我々は長話しがちですから気を付けないと」
ルキの話が若干気になるが、ずっと聞いてると日が暮れてしまいそうなため少し助かった。
「すみません兄様。テバット、この話は他の人から聞いた方が良いわ。アタシじゃどうも日が暮れてしまいそうだものね……?」
不穏な笑みを漏らすルキに手を振って誤魔化す。
「いやいやいや! そんな事思ってませんって!」
「はいはい、ナツメちゃんもキコルも会話に着いていけてないから、この話は終わりですよ。あ、テバット君ちょっと」
不意にマキに手招きされ着いていくと、マキは木々が生い茂げ、影になっている場所で立ち止まった。
「テバット君、少し屈んでくれませんか?」
そう言うとマキは周りを見渡して人がいないのを確認し、僕の右耳に手を当てて来る。
「キミは気付いているか分からないが、今身に付けているその服、恐らく世界最強装備だと見ている。ボクは見たものの本質を見透す事が出来るから間違いないよ」
急に違う雰囲気をまとったマキは、まるで別人の様な口調で囁く。
「えっ、このスーツがですか……?」
「静かに。この会話は聞かれると非常にまずい。そのスーツとやらは少なくとも10の機能があるみたいだから、気になるなら覗いてみれば良いよ。……あと、この事はナツメちゃん以外には知らせない方がいい」
「どうして……?」
「この事が知られれば、今度はキコルでは無く君が狙われる可能性があるから。キミは能力を持ってるとはいえ、まだ使い始めたての赤ん坊の様な状態だ。恐らく技能が成功したのもその装備のおかげだから、奪い取られると何時暴走しても可笑しくはない」
「……そうだったんですか」
「勿論キミを否定している訳では無い。……心配なんだ。キミはこの世界に飛ばされて、まだこの世の理をほぼ知らない。それに、我々は良いが他の能力者がこの前黒色になったキミの存在を認めてくれるかは分からないんだよ」
「確かに……僕はまだ未熟者ですしね……」
「だからキミは目立つ様な行動を控えるべきだ。キミとナツメちゃんが危険な目に遭っても我々が助けに行ける保証は無いから。……おっと、ボクも長話しそうになってしまいましたね。早くしないとルキ達にどやされてしまいますから急いで戻りましょう」
「え、ええ、そうですね」
そう言ってマキは足早に戻っていく。マキは2人きりの時だと口調が変わるのだろうか。新たな一面を見た気がして、心がざわつく。
「テバット! 遅いよ!マキと何してたの!」
戻ってくるや否や、キコルが両手を腰に当てて怒ってくる。可愛い。
「多分兄様の長話に付き合わされたのよ。私には注意するのに」
ルキも顔を赤らめて腕を組む。
「すみませんルキ。重要な話がありまして……」
「……それなら仕方ないです。でも、あまりアタシから離れないでください!」
「分かっていますよ。本当にルキは甘えん坊ですね」
「……あの~、仲睦まじい所申し訳無いんですが僕達そろそろ……」
「そうでしたね。足止めみたいな形になってしまってすみません。何処か宛はあるのですか?」
「ええ、常磐色の能力者の元へ行こうと思います」
そう。マキ達の家に向かう際、2つ目の難題の試練を確認していると、『1.能力者全員と出会い、世界の記憶を呼び覚ませ』と書いてあったのだ。勿論訪ねる順番も丁寧に明記されていた。
「あら、サヴェの所ね。あの人は温厚だから多分すぐ打ち解けるわ」
「それなら良かったです!」
「キコルも一緒なのですか?」
「ええ、そうです」
「少し心配ですが大丈夫でしょう。場所は分かりますか?」
「いやぁ……自信は無いですね……」
「私もここに詳しい訳では無いので少し……」
「ならば、この近くのアステル街を北に抜け、ずっと進むとズィシアンという街に辿り着くと思います。まずはそこに向かうと良いでしょう。我々が教えられるのはそこまで。幸運を祈っていますよ」
「色々とありがとうございます。お2人も気をつけて!」
ナツメとキコルを連れてマキ達の元を後にすると、ズィシアン街に向けて歩き出した。
「なんとか一発目で成功しました……でも、発動後の体力の消耗が激しいんです……」
「えっ、い、一発目でですか……!? キミは相当筋が良いらしいですね……」
「テバット、一瞬で襲ってきた奴を倒したんだよ!」
「思っていたよりも使いこなせている様で良かったわ。最初の内は体力が追いつかなくて当然よ。兄様が習得に時間が掛かったのは、不器用ってだけじゃなくて、元々体力が無かったからだもの」
「ルキは幼少期から活発でしたからねぇ……僕は最初の頃はルキ相手に催眠すら掛けれず、よく吐血したものです」
吐血するマキを想像し吹き出しそうになったが、こちらを見るルキの目が完全に殺意に満ちていたため何とか堪える
「テバット、ここまで来て早々悪いけど早く立ち去った方が良いわ」
「えっ?」
「昨日話した時、アタシ達7人で世界を調和させていると言ったわよね?」
「そう言えば言ってましたね」
「あれ、アタシ達の身体に眠る能力が他の能力者の能力と良い具合に反発し合ってるからよ。どういう意味かと言うと……」
「ルキ、これじゃあ長居するのと同じ事ですよ。我々は長話しがちですから気を付けないと」
ルキの話が若干気になるが、ずっと聞いてると日が暮れてしまいそうなため少し助かった。
「すみません兄様。テバット、この話は他の人から聞いた方が良いわ。アタシじゃどうも日が暮れてしまいそうだものね……?」
不穏な笑みを漏らすルキに手を振って誤魔化す。
「いやいやいや! そんな事思ってませんって!」
「はいはい、ナツメちゃんもキコルも会話に着いていけてないから、この話は終わりですよ。あ、テバット君ちょっと」
不意にマキに手招きされ着いていくと、マキは木々が生い茂げ、影になっている場所で立ち止まった。
「テバット君、少し屈んでくれませんか?」
そう言うとマキは周りを見渡して人がいないのを確認し、僕の右耳に手を当てて来る。
「キミは気付いているか分からないが、今身に付けているその服、恐らく世界最強装備だと見ている。ボクは見たものの本質を見透す事が出来るから間違いないよ」
急に違う雰囲気をまとったマキは、まるで別人の様な口調で囁く。
「えっ、このスーツがですか……?」
「静かに。この会話は聞かれると非常にまずい。そのスーツとやらは少なくとも10の機能があるみたいだから、気になるなら覗いてみれば良いよ。……あと、この事はナツメちゃん以外には知らせない方がいい」
「どうして……?」
「この事が知られれば、今度はキコルでは無く君が狙われる可能性があるから。キミは能力を持ってるとはいえ、まだ使い始めたての赤ん坊の様な状態だ。恐らく技能が成功したのもその装備のおかげだから、奪い取られると何時暴走しても可笑しくはない」
「……そうだったんですか」
「勿論キミを否定している訳では無い。……心配なんだ。キミはこの世界に飛ばされて、まだこの世の理をほぼ知らない。それに、我々は良いが他の能力者がこの前黒色になったキミの存在を認めてくれるかは分からないんだよ」
「確かに……僕はまだ未熟者ですしね……」
「だからキミは目立つ様な行動を控えるべきだ。キミとナツメちゃんが危険な目に遭っても我々が助けに行ける保証は無いから。……おっと、ボクも長話しそうになってしまいましたね。早くしないとルキ達にどやされてしまいますから急いで戻りましょう」
「え、ええ、そうですね」
そう言ってマキは足早に戻っていく。マキは2人きりの時だと口調が変わるのだろうか。新たな一面を見た気がして、心がざわつく。
「テバット! 遅いよ!マキと何してたの!」
戻ってくるや否や、キコルが両手を腰に当てて怒ってくる。可愛い。
「多分兄様の長話に付き合わされたのよ。私には注意するのに」
ルキも顔を赤らめて腕を組む。
「すみませんルキ。重要な話がありまして……」
「……それなら仕方ないです。でも、あまりアタシから離れないでください!」
「分かっていますよ。本当にルキは甘えん坊ですね」
「……あの~、仲睦まじい所申し訳無いんですが僕達そろそろ……」
「そうでしたね。足止めみたいな形になってしまってすみません。何処か宛はあるのですか?」
「ええ、常磐色の能力者の元へ行こうと思います」
そう。マキ達の家に向かう際、2つ目の難題の試練を確認していると、『1.能力者全員と出会い、世界の記憶を呼び覚ませ』と書いてあったのだ。勿論訪ねる順番も丁寧に明記されていた。
「あら、サヴェの所ね。あの人は温厚だから多分すぐ打ち解けるわ」
「それなら良かったです!」
「キコルも一緒なのですか?」
「ええ、そうです」
「少し心配ですが大丈夫でしょう。場所は分かりますか?」
「いやぁ……自信は無いですね……」
「私もここに詳しい訳では無いので少し……」
「ならば、この近くのアステル街を北に抜け、ずっと進むとズィシアンという街に辿り着くと思います。まずはそこに向かうと良いでしょう。我々が教えられるのはそこまで。幸運を祈っていますよ」
「色々とありがとうございます。お2人も気をつけて!」
ナツメとキコルを連れてマキ達の元を後にすると、ズィシアン街に向けて歩き出した。
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