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第1章──Captive World──
第10話 神の子(ギフテッド) 前編
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「神の子?」
重々しい雰囲気の中、口を開いたマキに気になって尋ねる。
「ええ、そうです。キコルという名を知っているのなら当然、彼女がこの世界で唯一の超回復能力者である事も知っているでしょう。」
「まぁそうですね…実際この目で見ましたし…」
「あの子が…?……何はともあれ、実はキコルに能力がある様に、我々2人にもそれぞれ生まれつき能力が備わっているのです。ここまでで察したでしょうが、神の子とはこの能力者の事です」
衝撃だった。キコルの超回復ってだけでも驚いたのに、更に能力者が居るとは思わなかったからだ。そしてさっき、この世界に7人居ると言っていた。
「貴方勘づいている様ね。7人神の子が居るってことはその7人みんな能力者なのよ」
「それに恐らく7人全員違う能力を持っています。まぁ…7人目はまだ現れていないんですけどね」
「え、じゃあなんで神の子が7人居るって分かるんですか?」
「この世界には7つの色があります」
…少しマキの言っている意味が分からない。
「見る限りキミはこの世界の住人では無いと思うのですがそうですか?」
「…え、あっ、そうです」
何もかも見透かされてる様だ。それにルキは僕を襲った時『貴方達』と言っていた。つまりナツメの姿が見えているのだろうか。
「それならば知らなくても仕方が無いですね。かつて、この世界が7つに分断されていた時代…始祖分裂時代とでも言いましょうか。それぞれ統治していた権力者は自分の領地を示す為に1人1つずつ色を決めたのです。朱色・青紫色・常磐色・金糸雀色・石竹色・白色・黒色の7色をね。」
「これに当てはめるなら、兄様は金糸雀色、アタシは青紫色、キコルは白色ね」
「なるほど…でもそれと神の子がどう関係するんですか?」
「いい所を突いてきますね。では続きと共にお話しましょう。勿論この世界が分断されているとはいえ、7人も支配者が居る訳ですから争いが起こりました。結局どの支配者もある1人の少年によって倒されたのですがね。」
「えっ、ならその後どうなったんですか…」
「その少年によって世界は統一され、今の世界が出来ました。でも彼は二度と無益な争いを起こさぬ様、当時人間離れした能力を持っていた7人の子供達に色を与え、神の子として世界を守る役目を託したのです。」
「ちょっと待って下さい!それならば統一する前の状態と同じでは無いですか!」
「煩いわね。黙って兄様の話を聞きなさい」
「す、すみません…」
「…話を続けますね。確かにキミが言った事と同じ事を危惧して反対した者も居たらしいですが彼らは賢かった。能力者同士で争えば世界は滅ぶと言う事を理解していたのでしょう、お互い干渉せず平和に暮らしてきたのです。ルキ、ここからは任せても良いですか?」
「お任せ下さい兄様。…だけど彼らは少年によって、世界を守るという重大な役目を任されただけでなく、ある代償を負ってしまう事になったの」
「代償…?」
「不老不死よ。守護者たるもの簡単に死なれたら困るからね」
代償だと言うものだから、若くして死ぬとかそういうものだと思っていたのだが、それとは逆に不老不死だと言う。
「貴方の事だから死なないなら良いじゃないかと思うかもしれないけどそれは間違い」
「何が間違いなんですか?」
「……アタシ達、産み育ててくれた親の顔をもう覚えていないわ」
「親の顔を…?冗談やめてくださいよ…」
すると突然マキは机を強く叩き立ち上がった。顔は俯いていてよく分からない。
「…冗談なんかじゃありません…!我々はこの世界が統一された……1200年も前から死ねない呪いにかかっているんです…!さっきルキが言った通り、我々は世界の守護者として生きる為に長い年月生き続け……大事な人の顔さえも忘れてしまった…」
泣いているのだろうか、マキが流したらしい涙が机の染みを作っている。それに思っていたよりも代償というのが苦しいものだと知らなかった。
「すみません…無神経でした」
「…良いんですよ。ボクも取り乱して申し訳無いです」
「…話を戻すわ。さっき不老不死と言ったけどそれは万能ではないとさっきの話で分かった筈よね?それに不老不死と言っても病気で老いたり死に至る事が無いだけで、外的要因があれば死ぬ。……例えば誰かに殺されたりとかね。」
「えっ……?」
「さっき兄様は7人目はまだ現れてないって言ったけど、半分合ってて半分間違ってるわ。7人目自体はアタシ達と同時期に守護者に任命され存在した。だけどちょうど1年前……自分の子孫に心臓を突かれて死んだ。勿論殺した奴は即刻死刑になったけどね」
「何故殺されたんですか!?」
「死体から能力を抽出して自分の物にしようと企んだのでしょうね。そんな事出来るわけないのに」
「先祖なのにそんな恐ろしい事が…?」
「…先祖だからですよ。自分にもその器があると勘違いしたのでしょう。とんだ愚か者だと思いませんか?」
「た、確かに…」
神の子の真相に少し近づく事が出来たが、残酷で哀しい過去を知り僕は余計この世界に堕とした黒幕に恨みを募らせていった。
重々しい雰囲気の中、口を開いたマキに気になって尋ねる。
「ええ、そうです。キコルという名を知っているのなら当然、彼女がこの世界で唯一の超回復能力者である事も知っているでしょう。」
「まぁそうですね…実際この目で見ましたし…」
「あの子が…?……何はともあれ、実はキコルに能力がある様に、我々2人にもそれぞれ生まれつき能力が備わっているのです。ここまでで察したでしょうが、神の子とはこの能力者の事です」
衝撃だった。キコルの超回復ってだけでも驚いたのに、更に能力者が居るとは思わなかったからだ。そしてさっき、この世界に7人居ると言っていた。
「貴方勘づいている様ね。7人神の子が居るってことはその7人みんな能力者なのよ」
「それに恐らく7人全員違う能力を持っています。まぁ…7人目はまだ現れていないんですけどね」
「え、じゃあなんで神の子が7人居るって分かるんですか?」
「この世界には7つの色があります」
…少しマキの言っている意味が分からない。
「見る限りキミはこの世界の住人では無いと思うのですがそうですか?」
「…え、あっ、そうです」
何もかも見透かされてる様だ。それにルキは僕を襲った時『貴方達』と言っていた。つまりナツメの姿が見えているのだろうか。
「それならば知らなくても仕方が無いですね。かつて、この世界が7つに分断されていた時代…始祖分裂時代とでも言いましょうか。それぞれ統治していた権力者は自分の領地を示す為に1人1つずつ色を決めたのです。朱色・青紫色・常磐色・金糸雀色・石竹色・白色・黒色の7色をね。」
「これに当てはめるなら、兄様は金糸雀色、アタシは青紫色、キコルは白色ね」
「なるほど…でもそれと神の子がどう関係するんですか?」
「いい所を突いてきますね。では続きと共にお話しましょう。勿論この世界が分断されているとはいえ、7人も支配者が居る訳ですから争いが起こりました。結局どの支配者もある1人の少年によって倒されたのですがね。」
「えっ、ならその後どうなったんですか…」
「その少年によって世界は統一され、今の世界が出来ました。でも彼は二度と無益な争いを起こさぬ様、当時人間離れした能力を持っていた7人の子供達に色を与え、神の子として世界を守る役目を託したのです。」
「ちょっと待って下さい!それならば統一する前の状態と同じでは無いですか!」
「煩いわね。黙って兄様の話を聞きなさい」
「す、すみません…」
「…話を続けますね。確かにキミが言った事と同じ事を危惧して反対した者も居たらしいですが彼らは賢かった。能力者同士で争えば世界は滅ぶと言う事を理解していたのでしょう、お互い干渉せず平和に暮らしてきたのです。ルキ、ここからは任せても良いですか?」
「お任せ下さい兄様。…だけど彼らは少年によって、世界を守るという重大な役目を任されただけでなく、ある代償を負ってしまう事になったの」
「代償…?」
「不老不死よ。守護者たるもの簡単に死なれたら困るからね」
代償だと言うものだから、若くして死ぬとかそういうものだと思っていたのだが、それとは逆に不老不死だと言う。
「貴方の事だから死なないなら良いじゃないかと思うかもしれないけどそれは間違い」
「何が間違いなんですか?」
「……アタシ達、産み育ててくれた親の顔をもう覚えていないわ」
「親の顔を…?冗談やめてくださいよ…」
すると突然マキは机を強く叩き立ち上がった。顔は俯いていてよく分からない。
「…冗談なんかじゃありません…!我々はこの世界が統一された……1200年も前から死ねない呪いにかかっているんです…!さっきルキが言った通り、我々は世界の守護者として生きる為に長い年月生き続け……大事な人の顔さえも忘れてしまった…」
泣いているのだろうか、マキが流したらしい涙が机の染みを作っている。それに思っていたよりも代償というのが苦しいものだと知らなかった。
「すみません…無神経でした」
「…良いんですよ。ボクも取り乱して申し訳無いです」
「…話を戻すわ。さっき不老不死と言ったけどそれは万能ではないとさっきの話で分かった筈よね?それに不老不死と言っても病気で老いたり死に至る事が無いだけで、外的要因があれば死ぬ。……例えば誰かに殺されたりとかね。」
「えっ……?」
「さっき兄様は7人目はまだ現れてないって言ったけど、半分合ってて半分間違ってるわ。7人目自体はアタシ達と同時期に守護者に任命され存在した。だけどちょうど1年前……自分の子孫に心臓を突かれて死んだ。勿論殺した奴は即刻死刑になったけどね」
「何故殺されたんですか!?」
「死体から能力を抽出して自分の物にしようと企んだのでしょうね。そんな事出来るわけないのに」
「先祖なのにそんな恐ろしい事が…?」
「…先祖だからですよ。自分にもその器があると勘違いしたのでしょう。とんだ愚か者だと思いませんか?」
「た、確かに…」
神の子の真相に少し近づく事が出来たが、残酷で哀しい過去を知り僕は余計この世界に堕とした黒幕に恨みを募らせていった。
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