10 / 23
第1章──Captive World──
第9話 マキとルキ
しおりを挟む
「知ってるのか!?」
寝ていたはずのキコルが突然口を開いた。難題攻略の手掛かりとなる双子の事を知っていると言う。
「多分隣街の外れに住んでるマキとルキの事だと思うんだけど…それがね……」
起き上がったキコルは声を詰まらせた。
「どうかしたのか…?」
「話聞いていたけど、今日の夜までなんでしょ?今から行って間に合うか…」
「何だそんな事か。大丈夫だよ心配しなくても。」
キコルの肩に手を添えて励ますと少し顔が綻んだ。
「…だけどそうなると、キコルを1人にしなきゃいけなくなるんだよなぁ……」
「それなら心配ないよ。お爺ちゃんに来てもらえば良いから」
完全にあの老人のことが頭から抜けていた。だが、連絡ツールがないこの世界ではどうすれば良いのか。
「この宿お爺ちゃんのものだから大丈夫だよ」
「え"っ」
あまりの衝撃発言に喉から変な声が出た。
「テバット、此処がお爺ちゃんのものだから連れて来てくれたのかと思ってたんだけど違うの?」
「う、うん…知らなかった…でもどっちにしてもあの爺さんが近くにいるなら安心だな。で、今何処にいるか分かるか?」
「お爺ちゃんよくどっか行っちゃうからね…その辺で彷徨いていると思うんだけど」
「分かった…。見つけたらキコルのお守りしておくように言っとくよ」
そう言って肩を落としながら部屋を出ると、意外にもあっさり見つかった爺さんに要件を伝え、足早に隣街目掛けて走り出した。
「ステボじゃ地図展開出来ないから私が案内するね。一応補助係だし」
「そういやお前補助係だったな…案内頼むぜ!」
珍しく頼もしいナツメを頼りに走り続けると、小一時間程で目的の場所に着くことが出来た。
隣街であるアステル街から少し外れた場所に、蔦で覆われこじんまりとしたレンガ造りの家がそびえ立っている。ノックを4回鳴らすと、どうぞと中から少しハモった様な返事が来た。
「ごめんくださーい……」
ドアを開け、恐る恐る入るとすぐ近くに双子のマキとルキらしき2人がその先を塞ぐように横に並んで立っていた。
右側にはセンター分けの前髪で高めのシニヨンの金髪、髪とは対称的な青紫色の瞳、黒を基調とした聖職者の様な服装の子供が、左側には黄金色の瞳に掛かるくらい長い前髪に少しウェーブのかかった青紫色のマッシュショートで、これまた白を基調とした聖職者風の子供。見た所、どちらも10歳前後の子供の様だ。
「「ようこそ。私達の 栖へ」」
さすが双子と言えるほど完璧なハモり。まるで予め設計されたかのような不気味ささえ感じた。
「導かれし来訪者よ、此方はマキ。」
「汝はルキ、何用でここまで到ったか」
見た目相応の高い声なのに何故か古風な言い回しが余計不気味に感じた。どうやら黄金色の方がマキ、青紫色の方がルキらしい。声はよく似ており、姿を隠されたらきっと聞き当てるのは難しいだろう。
「実はキコルという名の女の子を助ける為に、貴方たち二人の力が必要なんです」
『キコル』というワードを出した瞬間二人の目の色が変わった。先に口を出したのはマキの方だ。
「キコルを知っているなら話は別。こんな堅い言い方はしなくても良いですね」
急に雰囲気の変わったマキに鳥肌が止まらなくなった。
「怖がらないで、アタシたちは貴方達を襲うつもりは無いから」
ルキも口調が変わり何が何だか分からなくなってきた。透かさず両手を上げ情けない声で返答する。
「ぼ、僕達キコルを助ける為にお二人の力を借りないといけないんです…」
「「寵愛」」
震えていた僕にマキとルキは唯其れだけを告げた。
「…え?」
「なんかヤバそうな人達だよね…」
ナツメも囁いてくる。僕も同じことを考えていた。
「私を馬鹿にするのは良いけど、マキ兄様の事を侮辱するのなら容赦しない」
目にも留まらぬ速さで眼前に迫って来たルキは、長い袖で隠れていた右手の青紫色の長い爪を首に当ててきた。当てられた部分から一筋の血が流れる。
「……やめなさいルキ。らしくないですよ」
「……私とした事が…どうにかしていた様です。お許しください兄様」
何とか制止したマキはルキの右手を首から払う。
「申し訳ございません。ルキは人の心情を読むのに長けているのですが、接するのは苦手で…」
「そ、そうだったんですね…アハハ……」
完全にビビりあがった僕は平常心を保つので精一杯で、この2人に余計な事を思ってはならないと心に決めたが、ルキが目を見開いてこちらを見ていたのでもう考えるのをやめた。
「ところで…お二人の寵愛を受けるというのはどうしたら良いのですか…?」
「キミの左腕に我々の呪文と共に刻印を刻めば良いのです」
呪文や刻印という響きに胸をワクワクさせていると、ルキが口を挟んだ。
「兄様、儀式の前にキコルや私達の事をお話になっては?」
「おや、そうですね。少々焦らす様な形になってしまいますが、我々の話を聞いて頂けますか?」
顔は笑っているが妙な威圧感があり、拒否権は無いと見える。
「分かりました…」
半ば押される形で答えると、2人は椅子に腰掛けるよう催促する。レンガ造りの家の中は意外にも木がふんだんに使われた様式で、ログハウスを連想させる。席に着き姿勢を整えると、マキは重い口を開いた。
「ではお話致しましょう。我々やキコルを含めたこの世界に7人存在する神の子の事を」
寝ていたはずのキコルが突然口を開いた。難題攻略の手掛かりとなる双子の事を知っていると言う。
「多分隣街の外れに住んでるマキとルキの事だと思うんだけど…それがね……」
起き上がったキコルは声を詰まらせた。
「どうかしたのか…?」
「話聞いていたけど、今日の夜までなんでしょ?今から行って間に合うか…」
「何だそんな事か。大丈夫だよ心配しなくても。」
キコルの肩に手を添えて励ますと少し顔が綻んだ。
「…だけどそうなると、キコルを1人にしなきゃいけなくなるんだよなぁ……」
「それなら心配ないよ。お爺ちゃんに来てもらえば良いから」
完全にあの老人のことが頭から抜けていた。だが、連絡ツールがないこの世界ではどうすれば良いのか。
「この宿お爺ちゃんのものだから大丈夫だよ」
「え"っ」
あまりの衝撃発言に喉から変な声が出た。
「テバット、此処がお爺ちゃんのものだから連れて来てくれたのかと思ってたんだけど違うの?」
「う、うん…知らなかった…でもどっちにしてもあの爺さんが近くにいるなら安心だな。で、今何処にいるか分かるか?」
「お爺ちゃんよくどっか行っちゃうからね…その辺で彷徨いていると思うんだけど」
「分かった…。見つけたらキコルのお守りしておくように言っとくよ」
そう言って肩を落としながら部屋を出ると、意外にもあっさり見つかった爺さんに要件を伝え、足早に隣街目掛けて走り出した。
「ステボじゃ地図展開出来ないから私が案内するね。一応補助係だし」
「そういやお前補助係だったな…案内頼むぜ!」
珍しく頼もしいナツメを頼りに走り続けると、小一時間程で目的の場所に着くことが出来た。
隣街であるアステル街から少し外れた場所に、蔦で覆われこじんまりとしたレンガ造りの家がそびえ立っている。ノックを4回鳴らすと、どうぞと中から少しハモった様な返事が来た。
「ごめんくださーい……」
ドアを開け、恐る恐る入るとすぐ近くに双子のマキとルキらしき2人がその先を塞ぐように横に並んで立っていた。
右側にはセンター分けの前髪で高めのシニヨンの金髪、髪とは対称的な青紫色の瞳、黒を基調とした聖職者の様な服装の子供が、左側には黄金色の瞳に掛かるくらい長い前髪に少しウェーブのかかった青紫色のマッシュショートで、これまた白を基調とした聖職者風の子供。見た所、どちらも10歳前後の子供の様だ。
「「ようこそ。私達の 栖へ」」
さすが双子と言えるほど完璧なハモり。まるで予め設計されたかのような不気味ささえ感じた。
「導かれし来訪者よ、此方はマキ。」
「汝はルキ、何用でここまで到ったか」
見た目相応の高い声なのに何故か古風な言い回しが余計不気味に感じた。どうやら黄金色の方がマキ、青紫色の方がルキらしい。声はよく似ており、姿を隠されたらきっと聞き当てるのは難しいだろう。
「実はキコルという名の女の子を助ける為に、貴方たち二人の力が必要なんです」
『キコル』というワードを出した瞬間二人の目の色が変わった。先に口を出したのはマキの方だ。
「キコルを知っているなら話は別。こんな堅い言い方はしなくても良いですね」
急に雰囲気の変わったマキに鳥肌が止まらなくなった。
「怖がらないで、アタシたちは貴方達を襲うつもりは無いから」
ルキも口調が変わり何が何だか分からなくなってきた。透かさず両手を上げ情けない声で返答する。
「ぼ、僕達キコルを助ける為にお二人の力を借りないといけないんです…」
「「寵愛」」
震えていた僕にマキとルキは唯其れだけを告げた。
「…え?」
「なんかヤバそうな人達だよね…」
ナツメも囁いてくる。僕も同じことを考えていた。
「私を馬鹿にするのは良いけど、マキ兄様の事を侮辱するのなら容赦しない」
目にも留まらぬ速さで眼前に迫って来たルキは、長い袖で隠れていた右手の青紫色の長い爪を首に当ててきた。当てられた部分から一筋の血が流れる。
「……やめなさいルキ。らしくないですよ」
「……私とした事が…どうにかしていた様です。お許しください兄様」
何とか制止したマキはルキの右手を首から払う。
「申し訳ございません。ルキは人の心情を読むのに長けているのですが、接するのは苦手で…」
「そ、そうだったんですね…アハハ……」
完全にビビりあがった僕は平常心を保つので精一杯で、この2人に余計な事を思ってはならないと心に決めたが、ルキが目を見開いてこちらを見ていたのでもう考えるのをやめた。
「ところで…お二人の寵愛を受けるというのはどうしたら良いのですか…?」
「キミの左腕に我々の呪文と共に刻印を刻めば良いのです」
呪文や刻印という響きに胸をワクワクさせていると、ルキが口を挟んだ。
「兄様、儀式の前にキコルや私達の事をお話になっては?」
「おや、そうですね。少々焦らす様な形になってしまいますが、我々の話を聞いて頂けますか?」
顔は笑っているが妙な威圧感があり、拒否権は無いと見える。
「分かりました…」
半ば押される形で答えると、2人は椅子に腰掛けるよう催促する。レンガ造りの家の中は意外にも木がふんだんに使われた様式で、ログハウスを連想させる。席に着き姿勢を整えると、マキは重い口を開いた。
「ではお話致しましょう。我々やキコルを含めたこの世界に7人存在する神の子の事を」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
追い出された万能職に新しい人生が始まりました
東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」
その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。
『万能職』は冒険者の最底辺職だ。
冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。
『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。
口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。
要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。
その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ハズレ召喚として追放されたボクは、拡大縮小カメラアプリで異世界無双
さこゼロ
ファンタジー
突然、異世界に転生召喚された4人の少年少女たち。儀式を行った者たちに言われるがまま、手に持っていたスマホのアプリを起動させる。
ある者は聖騎士の剣と盾、
ある者は聖女のローブ、
それぞれのスマホからアイテムが出現する。
そんな中、ひとりの少年のスマホには、画面にカメラアプリが起動しただけ。
ハズレ者として追放されたこの少年は、これからどうなるのでしょうか…
if分岐の続編として、
「帰還した勇者を護るため、今度は私が転移します!」を公開しています(^^)

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる