社畜の彗星は銀髪の妖精と3つの難題(クエスト)に挑む

木蔦空

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第1章──Captive World──

第9話 マキとルキ

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「知ってるのか!?」

寝ていたはずのキコルが突然口を開いた。難題クエスト攻略クリアの手掛かりとなる双子の事を知っていると言う。

「多分隣街の外れに住んでるマキとルキの事だと思うんだけど…それがね……」

起き上がったキコルは声を詰まらせた。

「どうかしたのか…?」

「話聞いていたけど、今日の夜までなんでしょ?今から行って間に合うか…」

「何だそんな事か。大丈夫だよ心配しなくても。」

キコルの肩に手を添えて励ますと少し顔がほころんだ。

「…だけどそうなると、キコルを1人にしなきゃいけなくなるんだよなぁ……」

「それなら心配ないよ。お爺ちゃんに来てもらえば良いから」

完全にあの老人のことが頭から抜けていた。だが、連絡ツールがないこの世界ではどうすれば良いのか。

「この宿お爺ちゃんのものだから大丈夫だよ」

「え"っ」

あまりの衝撃発言に喉から変な声が出た。

「テバット、此処がお爺ちゃんのものだから連れて来てくれたのかと思ってたんだけど違うの?」

「う、うん…知らなかった…でもどっちにしてもあの爺さんが近くにいるなら安心だな。で、今何処にいるか分かるか?」

「お爺ちゃんよくどっか行っちゃうからね…その辺で彷徨うろついていると思うんだけど」

「分かった…。見つけたらキコルのお守りしておくように言っとくよ」

そう言って肩を落としながら部屋を出ると、意外にもあっさり見つかった爺さんに要件を伝え、足早に隣街目掛けて走り出した。

「ステボじゃ地図展開出来ないから私が案内するね。一応補助係サポーターだし」

「そういやお前補助係だったな…案内頼むぜ!」

珍しく頼もしいナツメを頼りに走り続けると、小一時間程で目的の場所に着くことが出来た。

隣街であるアステル街から少し外れた場所に、つたで覆われこじんまりとしたレンガ造りの家がそびえ立っている。ノックを4回鳴らすと、どうぞと中から少しハモった様な返事が来た。

「ごめんくださーい……」

ドアを開け、恐る恐る入るとすぐ近くに双子のマキとルキらしき2人がその先を塞ぐように横に並んで立っていた。
右側にはセンター分けの前髪で高めのシニヨンの金髪、髪とは対称的な青紫色ヴァイオレットの瞳、黒を基調とした聖職者プリーストの様な服装の子供が、左側には黄金色こがねいろの瞳に掛かるくらい長い前髪に少しウェーブのかかった青紫色のマッシュショートで、これまた白を基調とした聖職者プリースト風の子供。見た所、どちらも10歳前後の子供の様だ。

「「ようこそ。私達の へ」」

さすが双子と言えるほど完璧なハモり。まるであらかじ設計プログラムされたかのような不気味ささえ感じた。

「導かれし来訪者らいほうしゃよ、此方こなたはマキ。」

うぬはルキ、何用でここまでいたったか」

見た目相応の高い声なのに何故か古風な言い回しが余計不気味に感じた。どうやら黄金色の方がマキ、青紫色の方がルキらしい。声はよく似ており、姿を隠されたらきっと聞き当てるのは難しいだろう。

「実はキコルという名の女の子を助ける為に、貴方たち二人の力が必要なんです」

『キコル』というワードを出した瞬間二人の目の色が変わった。先に口を出したのはマキの方だ。

「キコルを知っているなら話は別。こんな堅い言い方はしなくてもいですね」

急に雰囲気の変わったマキに鳥肌が止まらなくなった。

「怖がらないで、アタシたちは貴方達を襲うつもりは無いから」

ルキも口調が変わり何が何だか分からなくなってきた。透かさず両手を上げ情けない声で返答する。

「ぼ、僕達キコルを助ける為にお二人の力を借りないといけないんです…」

「「寵愛ちょうあい」」

震えていた僕にマキとルキはただ其れだけを告げた。

「…え?」

「なんかヤバそうな人達だよね…」

ナツメも囁いてくる。僕も同じことを考えていた。

「私を馬鹿にするのは良いけど、マキ兄様の事を侮辱ぶじょくするのなら容赦ようしゃしない」

目にも留まらぬ速さで眼前に迫って来たルキは、長いそでで隠れていた右手の青紫色ヴァイオレットの長い爪を首に当ててきた。当てられた部分から一筋の血が流れる。

「……やめなさいルキ。らしくないですよ」

「……わたくしとした事が…どうにかしていた様です。お許しください兄様」

何とか制止したマキはルキの右手を首から払う。

「申し訳ございません。ルキは人の心情を読むのに長けているのですが、接するのは苦手で…」

「そ、そうだったんですね…アハハ……」

完全にビビりあがった僕は平常心を保つので精一杯で、この2人に余計な事を思ってはならないと心に決めたが、ルキが目を見開いてこちらを見ていたのでもう考えるのをやめた。

「ところで…お二人の寵愛を受けるというのはどうしたら良いのですか…?」

「キミの左腕に我々の呪文と共に刻印イングレイヴを刻めば良いのです」

呪文や刻印イングレイヴという響きに胸をワクワクさせていると、ルキが口を挟んだ。

「兄様、儀式の前にキコルや私達の事をお話になっては?」

「おや、そうですね。少々焦らす様な形になってしまいますが、我々の話を聞いて頂けますか?」

顔は笑っているが妙な威圧感があり、拒否権は無いと見える。

「分かりました…」

半ば押される形で答えると、2人は椅子に腰掛けるよう催促する。レンガ造りの家の中は意外にも木がふんだんに使われた様式で、ログハウスを連想させる。席に着き姿勢を整えると、マキは重い口を開いた。

「ではお話致しましょう。我々やキコルを含めたこの世界に7人存在する神の子ギフテッドの事を」
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