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第1章──Captive World──
第8話 束の間の時間
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震えの止まらないキコルにスーツの上着を被せ、近くの宿に寄った。幸い、宿代は今持っているお金で何とか足りそうだ。
リムスとはこの世界での通貨で、1リムスは日本円の約5分の1の価値である。つまり5リムスで1円分なのだ。
現実世界と同じように通貨があり、1リムス硬貨、5リムス硬貨、10リムス硬貨、50リムス硬貨、100リムス硬貨、1000リムス紙幣、10000リムス紙幣がある。
物価の安いこの世界ではほとんど使うことの無い100000リムス紙幣というものもあるとキコルは言っていた。
部屋はキコルを配慮して別々の部屋を取ろうとしたが、一人にしないで欲しいというキコルの訴えでやむ無く同じ部屋を取る事にした。
「……テバットお願い…手握って…」
女の子の手を握るなんて小学生以来だし、20後半の男がそんな事したらすぐ御用になると思い少々躊躇ったが、キコルを落ち着かせるにはこうするのが最善なのだと自分に言い聞かせた。包み込むように握り、大丈夫だと何度も言い聞かせた。すると段々顔の緊張が和らいで来たように見える。
「ありがとうテバット。」
まだほんの少しだけ固さの残る笑みでキコルは答えた。
「ぼ、僕はただ言われた事をしただけで…!!」
理性を保つのに必死だった僕は片言になってしまった。だが、フフっとキコルが笑ったので良しとしよう。
「テバット、今日は明日に備えて休もう」
隣でナツメが催促して来るので頷く。何故かベッドは一つしか無く、二人で寝る訳にも行かないためキコルはベッドに、僕は硬い床で寝ることにした。
翌日、案の定身体中が悲鳴をあげた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?痛ってぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「テバットおじさんみたいだね」
腰を擦りながら起き上がった僕はナツメに馬鹿にされながらも起こしに行くと、キコルは悪夢でも見ているのか唸りながら涙を流して寝ていた。
「キコル!大丈夫か!?」
強めに揺すって起こすと、キコルは泣きながらゆっくりと起き上がった。酷い隈だった。すると突然咳き込んで呼吸が荒くなる。何とか落ち着かせると、キコルは口を開いた。
「……私とテバットが×××××で殺される夢を見たの」
手を覆い話すキコルの声は震えていた。途中何を言っているか聞き取れなかったが。
「この子多分酷い精神的ダメージを負ってる。今日は外に連れ回さない方がいいと思う」
僕もナツメと同じ考えだった。今日殺されるかも知れないのに無闇に外になんて連れ出したら何をされるか分からない。
「…キコル、今日は絶対に外に出たらダメだからな」
「……分かった…」
そう言うと再びベッドに潜って寝てしまった。
特にすることも無かったためステボを起動して見ていると、難題の中にも2つの項目があることに気づく。
「おいナツメ、試練ってなんだ…?」
「あっ、完全に存在忘れてたよアハハ…」
あまりの天然っぷりに半ば呆れていた。
「人の命かかってんのに能天気だな…お前…」
「ごめんごめん、で、試練にはなんて書いてるの?」
「『1.技能:Accelerate Five minutesを習得せよ』『2.深淵からの来訪者を撃退せよ』と書いてあるな」
あまりにも横文字の多い文面に終始苦笑いで答えた。
「番号があるって事はこの順に進めていけって事か?」
「恐らくそうだろうね。試練に概要とかないの?」
「えーっと…あ、あった。『神界から参りし奇跡の双子の寵愛を受けよ』だってさ……これ昨日しておけば良かったな…絶対時間かかるじゃないかこれ…」
「私も言っておけば良かったよ…1つの事に気取られ過ぎたね……」
「……あのさナツメ、思ったんだけど俺をこの世界に飛ばしたやつ絶対厨二病だろ…」
「そこは触れないであげて…」
重い空気が立ち込める。それを打破したのは寝ていたはずのキコルだった。
「……私、その双子知ってるかも」
リムスとはこの世界での通貨で、1リムスは日本円の約5分の1の価値である。つまり5リムスで1円分なのだ。
現実世界と同じように通貨があり、1リムス硬貨、5リムス硬貨、10リムス硬貨、50リムス硬貨、100リムス硬貨、1000リムス紙幣、10000リムス紙幣がある。
物価の安いこの世界ではほとんど使うことの無い100000リムス紙幣というものもあるとキコルは言っていた。
部屋はキコルを配慮して別々の部屋を取ろうとしたが、一人にしないで欲しいというキコルの訴えでやむ無く同じ部屋を取る事にした。
「……テバットお願い…手握って…」
女の子の手を握るなんて小学生以来だし、20後半の男がそんな事したらすぐ御用になると思い少々躊躇ったが、キコルを落ち着かせるにはこうするのが最善なのだと自分に言い聞かせた。包み込むように握り、大丈夫だと何度も言い聞かせた。すると段々顔の緊張が和らいで来たように見える。
「ありがとうテバット。」
まだほんの少しだけ固さの残る笑みでキコルは答えた。
「ぼ、僕はただ言われた事をしただけで…!!」
理性を保つのに必死だった僕は片言になってしまった。だが、フフっとキコルが笑ったので良しとしよう。
「テバット、今日は明日に備えて休もう」
隣でナツメが催促して来るので頷く。何故かベッドは一つしか無く、二人で寝る訳にも行かないためキコルはベッドに、僕は硬い床で寝ることにした。
翌日、案の定身体中が悲鳴をあげた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?痛ってぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「テバットおじさんみたいだね」
腰を擦りながら起き上がった僕はナツメに馬鹿にされながらも起こしに行くと、キコルは悪夢でも見ているのか唸りながら涙を流して寝ていた。
「キコル!大丈夫か!?」
強めに揺すって起こすと、キコルは泣きながらゆっくりと起き上がった。酷い隈だった。すると突然咳き込んで呼吸が荒くなる。何とか落ち着かせると、キコルは口を開いた。
「……私とテバットが×××××で殺される夢を見たの」
手を覆い話すキコルの声は震えていた。途中何を言っているか聞き取れなかったが。
「この子多分酷い精神的ダメージを負ってる。今日は外に連れ回さない方がいいと思う」
僕もナツメと同じ考えだった。今日殺されるかも知れないのに無闇に外になんて連れ出したら何をされるか分からない。
「…キコル、今日は絶対に外に出たらダメだからな」
「……分かった…」
そう言うと再びベッドに潜って寝てしまった。
特にすることも無かったためステボを起動して見ていると、難題の中にも2つの項目があることに気づく。
「おいナツメ、試練ってなんだ…?」
「あっ、完全に存在忘れてたよアハハ…」
あまりの天然っぷりに半ば呆れていた。
「人の命かかってんのに能天気だな…お前…」
「ごめんごめん、で、試練にはなんて書いてるの?」
「『1.技能:Accelerate Five minutesを習得せよ』『2.深淵からの来訪者を撃退せよ』と書いてあるな」
あまりにも横文字の多い文面に終始苦笑いで答えた。
「番号があるって事はこの順に進めていけって事か?」
「恐らくそうだろうね。試練に概要とかないの?」
「えーっと…あ、あった。『神界から参りし奇跡の双子の寵愛を受けよ』だってさ……これ昨日しておけば良かったな…絶対時間かかるじゃないかこれ…」
「私も言っておけば良かったよ…1つの事に気取られ過ぎたね……」
「……あのさナツメ、思ったんだけど俺をこの世界に飛ばしたやつ絶対厨二病だろ…」
「そこは触れないであげて…」
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