社畜の彗星は銀髪の妖精と3つの難題(クエスト)に挑む

木蔦空

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第1章──Captive World──

第3話 囚われの世界

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意気込んだは良いものの、具体的にこれからどうすればいいか分からない。

「テバット、×バツ印を押してみて」

いつの間にか元に戻ったらしいナツメの言う通りにしてみると謎の文は消え、今度は画面左側の項目欄の1つで赤いビックリマークが点滅していた。タップすると『Captive World囚われの世界挑戦チャレンジ』と書かれたページに飛び、その中にまた3つのビックリマークがあるのに気付く。それらは難題クエスト攻略クリア条件で、つまりこのCaptive World囚われの世界で3つの難題クエスト攻略クリアしないと彗樹の死が回避できないと理解した。だが、難題の攻略条件しか明記がなく、実際に自分の目で確かめるしか無かった。

「早く行こうよ」

ステボを覗き込んでくるナツメの声はまるでこれから始まる大冒険に希望を抱く子供の様で少しムカついた。人の命がかかっているのに何故こんなにも呑気でいられるのか。

「……」

ナツメを無視して『囚われの世界の挑戦』をタップするとステボが消え、突然空間が歪み始めた。巨大な渦らしき物が現れ、為す術なく吸い込まれる。昔から絶叫系が苦手な僕にとって恐怖以外の何物でもなかった。脳が揺れる感覚が気持ち悪くて、目の前が真っ白になる。

気付くと、何かにもたれかかっていた。レンガの壁の様だ。だが、よく見るとそれはレンガ造りの煙突で、僕は屋根の上にいるようだった。立ち上がった途端にびゅうっと風が吹き、思わずよろめく。下を見ると中々の高さがあったため何とか踏ん張るが、足が震えて止まらなくなった。実は高所恐怖症なのだ。近くで見ていたナツメが吹き出し顔が熱を帯びる。

「笑ってないで助けてくれよ!」

「ゴメンゴメン、ビクビクしてるの面白くて。梯子はしごがあるからそこから降りれると思うよ!」

宙に浮いたまま腹を抱えて笑うナツメにイラつきつつも、近くにあった金属製らしい梯子を使って地上に降りる。安全を確認し辺りを見回すと、他にもレンガ造りの建物が幾つも立ち並び、まるで中世ヨーロッパの様だ。

「すげぇなこれ…本物かよ……」

思わず声が出る。それほどまでに目の前に広がる世界は現実世界と同じ様な光景だった。

「ここ本物っぽいでしょ。あ、でもVRMMO仮想現実大規模多人数同時参加型オンラインゲームとはちょっと違うかな」

「えっ、違うのか?」

「うん。だってさ多人数同時参加型ってあるけど、ここに来たの私達だけみたいだよ?本当にVRMMOなら私の他にプレイヤーがいるはずだもん」

「んじゃ結局ここはどこなん…」

「異世界!」

言い終わる前に言われてしまった。さっきの仕返しだろうか。

「異世界?最近流行りの?」

「そうそう!」

「なんたって僕が…」

「死にかけたから…??」

「でも普通死んでから来るんじゃないのか?」

ここまで言うと何故かナツメが涙目になり始めたので口を噤む。

「わ、悪かった。僕はここで難題クエスト攻略クリアしなきゃいけないんだったな!そうとなれば手掛かり探すぞ!」

「うん…」

若干ナツメに振り回されながらもこうして僕の異世界ライフは始まった。
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