2 / 23
第1章──Captive World──
第1話 目醒めの夜
しおりを挟む「…て……起きて」
女の子の様な高く明るい声が僕の意識を呼び覚ます。目を開くと、目の前に林檎二個分くらいの大きさの美少女が僕の顔を覗き込むようにして見ていた。この説明だと、とある猫のキャラクターを連想してしまうが細かい事は置いておく。綺麗な白銀のくせっ毛は肩までのショートカット。こちらを見る黒い目はクリっとしており小動物を思わせるようで、それを囲う睫毛はとても長い。白いロングワンピースから覗かせる手足は細く、少しでも触れれば折れてしまいそうだ。
「私の事そんなに見ないでよ」
「ごめんごめん、妖精なんて初めて見るから…」
本人が妖精と言った訳では無いが、このビジュアルで妖精じゃないなら逆に何なのか問いたい。
「ふぅーん。まぁいいけど」
少し口を尖らせた彼女はそっぽを向いてしまった。なんか怒ってる?
「彗樹は今なんで自分がここに居るかわかってないでしょ」
「分からないよ。ってか、なんで君は僕の名前を知ってるんだよ」
少し食い気味に言った。
「んじゃ今から説明するね。あ、それと君の事なら何でも知ってるよ。」
「もう何が何だかわかんないよ…」
思わず溜息をついた。
「単刀直入に言うと、彗樹は今仮死状態だよ。つまり自分で呼吸していない」
「えっ、でも癌なら仮死とかじゃなくて臓器不全とかになって死ぬんじゃないのか?」
悪夢から目覚めたように身体を素早く起こすと、頭の中の情報を掻き集めて目の前の妖精に訊ねる。
「さすが天才君。今の状態を言い換えるなら君は今誰かによって"生かされている"って事だよ」
「生かされている?誰に?何のために?そう言えばここ何処だ?」
日が沈む前の雲の上のような場所は幻想的だが重力がかかる感覚が無い。僕は空中を漂う幽霊のようだと思った。
「落ち着いて。私も何で彗樹がこの状態なのかも、誰によってここに連れてこられたのかは分からない。だけどここは分かるよ。ここはリ・ラウド・オリジン。生命の故郷」
「生命の故郷?って事はあの世じゃないのか!?」
「違う違う、ここはそんな所じゃないし。それにさっきも言ったように君はまだ死んでないよ」
「頭がパンクしそうだ…。それに僕はこれからどうしたらいいんだよ…」
さすがに僕の頭をもってしてもこの状況は理解できなかった。
「心配しなくても大丈夫!だってこの私が…」
「それより君誰だよ」
食い気味に聞く。流石にここまで話して名乗らないのは失礼だと思ったからだ。
「もーっ!最後まで言わせてよ!私の名前はナツメ!君の…いや、彗樹の補助係って言った方がいいかな?」
「はぁ?補助係?僕そんな頼りないか?」
「じゃあ聞くけど、この先どうすればいいか分かる?」
正論を突かれてぐうの音も出ない。
「分かりません…」
「よーっし!だからこのナツメちゃんに任せなさい!」
胸を張り、溌剌とした笑顔のナツメはどこか輝いて見え、暗く澱んでいた僕の心は一瞬にして奪い取られた。この子はきっと何の汚れも知らない純粋無垢な少女なのだろう。今まで人の顔ばかりを気にしてきた僕にとっては妖精と言うより女神みたいな存在だと思った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
追い出された万能職に新しい人生が始まりました
東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」
その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。
『万能職』は冒険者の最底辺職だ。
冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。
『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。
口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。
要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。
その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。


クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる