社畜の彗星は銀髪の妖精と3つの難題(クエスト)に挑む

木蔦空

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第1章──Captive World──

第1話 目醒めの夜

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「…て……起きて」

女の子の様な高く明るい声が僕の意識を呼び覚ます。目を開くと、目の前に林檎りんご二個分くらいの大きさの美少女が僕の顔をのぞき込むようにして見ていた。この説明だと、とある猫のキャラクターを連想してしまうが細かい事は置いておく。綺麗きれい白銀はくぎんのくせっ毛は肩までのショートカット。こちらを見る黒い目はクリっとしており小動物を思わせるようで、それを囲う睫毛まつげはとても長い。白いロングワンピースから覗かせる手足は細く、少しでも触れれば折れてしまいそうだ。

「私の事そんなに見ないでよ」

「ごめんごめん、なんて初めて見るから…」

本人が妖精と言った訳では無いが、このビジュアルで妖精じゃないなら逆に何なのか問いたい。

「ふぅーん。まぁいいけど」

少し口を尖らせた彼女はそっぽを向いてしまった。なんか怒ってる?

彗樹さときは今なんで自分がここに居るかわかってないでしょ」

「分からないよ。ってか、なんで君は僕の名前を知ってるんだよ」

少し食い気味に言った。

「んじゃ今から説明するね。あ、それと君の事なら何でも知ってるよ。」

「もう何が何だかわかんないよ…」

思わず溜息ためいきをついた。

単刀直入たんとうちょくにゅうに言うと、彗樹は今仮死状態だよ。つまり自分で呼吸していない」

「えっ、でもがんなら仮死とかじゃなくて臓器不全とかになって死ぬんじゃないのか?」

悪夢から目覚めたように身体を素早く起こすと、頭の中の情報を掻き集めて目の前の妖精に訊ねる。

「さすが天才君。今の状態を言い換えるなら君は今誰かによって"生かされている"って事だよ」

「生かされている?誰に?何のために?そう言えばここ何処だ?」

日が沈む前の雲の上のような場所は幻想的だが重力がかかる感覚が無い。僕は空中を漂う幽霊のようだと思った。

「落ち着いて。私も何で彗樹がこの状態なのかも、誰によってここに連れてこられたのかは分からない。だけどここは分かるよ。ここはリ・ラウド・オリジン。生命の故郷」

「生命の故郷?って事はあの世じゃないのか!?」

「違う違う、ここはそんな所じゃないし。それにさっきも言ったように君はまだ死んでないよ」

「頭がパンクしそうだ…。それに僕はこれからどうしたらいいんだよ…」

さすがに僕の頭をもってしてもこの状況は理解できなかった。

「心配しなくても大丈夫!だってこの私が…」

「それより君誰だよ」

食い気味に聞く。流石にここまで話して名乗らないのは失礼だと思ったからだ。

「もーっ!最後まで言わせてよ!私の名前はナツメ!君の…いや、彗樹の補助係サポーターって言った方がいいかな?」

「はぁ?補助係サポーター?僕そんな頼りないか?」

「じゃあ聞くけど、この先どうすればいいか分かる?」

正論を突かれてぐうの音も出ない。

「分かりません…」

「よーっし!だからこのナツメちゃんに任せなさい!」

胸を張り、溌剌はつらつとした笑顔のナツメはどこか輝いて見え、暗くよどんでいた僕の心は一瞬にして奪い取られた。この子はきっと何の汚れも知らない純粋無垢じゅんすいむくな少女なのだろう。今まで人の顔ばかりを気にしてきた僕にとっては妖精と言うより女神みたいな存在だと思った。
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