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7話
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薄ら笑みを浮かべたお母様は私にベッドに入るように促し、私がベッドに入ったのを確認するとお母様はベッドの縁に腰を下ろした。
「フィリングリス家にはね、千年に一度天女の生まれ変わりが産まれるの。」
「天女の、生まれ変わり?」
「そうよ。ある日、生き永らえようとした欲張りな天女はある男に恋をしたの。その男はポリウェン家、つまり今の皇帝陛下の御先祖様だったの。そしてまたある日、その男も美しい天女に恋をしたわ。」
「それ本当の話なの?すごく素敵だわ。」
「ふふっ、そうね。でもこの話には続きがあるのよ。その男が戦争で致命傷を負ってしまったのよ。それも結婚しようという約束をしたすぐ後にね。それを嘆いた天女は自分の命の代わりに彼を生かすことを決めたのよ。けどその男はもう二度と愛する人に会えなくなる辛さに千年に一度合わせてもらうことを求めたの。」
「千年に一度だなんて少なすぎるわよ、私ならもっと逢いたいと願うわ。」
「私もそうするでしょうね。でも欲のない男は千年に一度でいいと言ったのよ。天女は千年後に会いましょうと言い涙を流し、その涙を彼の傷口に落としたの。一滴、また一滴と落とすうちに天女は次第に弱々しくなって行ったけれど、彼の傷口はみるみるうちに治っていった。そしてついに、天女が息絶えた時彼の傷は傷跡すら残らないほど綺麗に無くなったのよ。」
「そんな……。」
「それでも、天女はきちんと千年に一度、姿形も変えずに彼の前に現れたわ。彼も同じく、姿形も変えずに彼女の訪れを待つの。」
この手の話はあまり好きではない。どうせただの言い伝えに決まっているし、恋情なんて確証のないものを信じるのは、どうしても怖かったのだ。
「そして、その天女の子孫に当たるのが我が家、フィリングリス家よ。これをよく覚えておいて。いずれ、貴方の記憶が教えてくれるわ、これまでの軌跡を。じゃあおやすみ。いい夢を見るのよ、イリシス。」
お母様は私の額にキスを落として私の部屋を後にした。私の祖先が天女って、どういうことなの。あんな話が現実に起こっただなんて、とてもじゃないが信じられない。いや、確かに神力というものを使う神の御加護を受けている方や、精霊の力で神のお告げを聞いたり自然のを扱う精霊士と呼ばれる方もいるからあながち嘘ではないのかもしれない。
何が何だかわからなくて頭の中が混乱してしまう。けれど、いちばん恐ろしいのは今の話を聞いたときに、何故か懐かしいと感じてしまったこと。
私は考えることが怖くなってしまい目を閉じた。それでも、なかなか眠れなくて私が眠る頃には空が明るんできていた。
「フィリングリス家にはね、千年に一度天女の生まれ変わりが産まれるの。」
「天女の、生まれ変わり?」
「そうよ。ある日、生き永らえようとした欲張りな天女はある男に恋をしたの。その男はポリウェン家、つまり今の皇帝陛下の御先祖様だったの。そしてまたある日、その男も美しい天女に恋をしたわ。」
「それ本当の話なの?すごく素敵だわ。」
「ふふっ、そうね。でもこの話には続きがあるのよ。その男が戦争で致命傷を負ってしまったのよ。それも結婚しようという約束をしたすぐ後にね。それを嘆いた天女は自分の命の代わりに彼を生かすことを決めたのよ。けどその男はもう二度と愛する人に会えなくなる辛さに千年に一度合わせてもらうことを求めたの。」
「千年に一度だなんて少なすぎるわよ、私ならもっと逢いたいと願うわ。」
「私もそうするでしょうね。でも欲のない男は千年に一度でいいと言ったのよ。天女は千年後に会いましょうと言い涙を流し、その涙を彼の傷口に落としたの。一滴、また一滴と落とすうちに天女は次第に弱々しくなって行ったけれど、彼の傷口はみるみるうちに治っていった。そしてついに、天女が息絶えた時彼の傷は傷跡すら残らないほど綺麗に無くなったのよ。」
「そんな……。」
「それでも、天女はきちんと千年に一度、姿形も変えずに彼の前に現れたわ。彼も同じく、姿形も変えずに彼女の訪れを待つの。」
この手の話はあまり好きではない。どうせただの言い伝えに決まっているし、恋情なんて確証のないものを信じるのは、どうしても怖かったのだ。
「そして、その天女の子孫に当たるのが我が家、フィリングリス家よ。これをよく覚えておいて。いずれ、貴方の記憶が教えてくれるわ、これまでの軌跡を。じゃあおやすみ。いい夢を見るのよ、イリシス。」
お母様は私の額にキスを落として私の部屋を後にした。私の祖先が天女って、どういうことなの。あんな話が現実に起こっただなんて、とてもじゃないが信じられない。いや、確かに神力というものを使う神の御加護を受けている方や、精霊の力で神のお告げを聞いたり自然のを扱う精霊士と呼ばれる方もいるからあながち嘘ではないのかもしれない。
何が何だかわからなくて頭の中が混乱してしまう。けれど、いちばん恐ろしいのは今の話を聞いたときに、何故か懐かしいと感じてしまったこと。
私は考えることが怖くなってしまい目を閉じた。それでも、なかなか眠れなくて私が眠る頃には空が明るんできていた。
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