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あれから数日、今日は私の死刑執行日らしい。朝起きたときから辺りがざわざわしていて、そんなに私が死ぬのが嬉しいのかと嫌になる。私のしたことは皇帝を愛すがゆえだったのに、なぜ私が皇帝に殺されないといけないのか。本当に全てが嫌になってしまう。
「……馬鹿みたい。みんな、みんな消えちゃえばいいのに。」
1人で静かに呟いたその言葉は牢獄の暗闇に吸い込まれていった。あと数時間もしたら私はきっと殺されているだろう。それなら最後の悪足掻きに自分で首を絞めて死んでしまおうか、なんて事を考えていると人の足音が聞こえた。
あぁ、終わりか____。
2人の騎士は私を牢獄から出したかと思えばそのまま処刑場まで引きずった。仮にも元は皇后だったというのに、この扱いなのかと少し腹が立ってしまう。
「元皇后イリシス、そなたを皇族殺人犯として死刑を執行する。」
仮にも私は皇帝の正妻であり、幼い頃からの仲だったのだ。少しは悲しんでくれるのでは、最後は私に情を見せてくれるのでは、だなんて最後の薄い希望すらも打ち砕かれてしまった。
リンデンは処刑を初めて目にする側室を気遣い優しく抱きしめていたのだ。所詮はこんなものなのか、と呆れると同時に涙が頬を伝った。どれだけ性根が悪くてもやはり私も人間である限り、本能的に生きたいと思ってしまう。まあ、そんなことは叶うはずもないのだけれど。
「来世は真っ当な善人として生きろ、イリシス。」
その言葉を最後に、私の短い人生は幕を閉じた。
____はずだった。
「…ス様、イリ……!イリシス様!起きてください!」
「は、?」
「今日は10歳の誕生日のパーティーなのですよ。起きて準備を致しましょう!」
何を言っているのか分からなかった。私はたしかに死んだはずだった。あの涙が頬を伝った感覚も、首を切られた感覚も全て覚えているし、あれは絶対に現実だった。
なのに、今私はイリシスとして生きているのだ。一体、何がどうなっているのかいくら思考を巡らせても分かるはずもなく、今はとりあえずメイドの言う通りにパーティーの準備をしようと起き上がり鏡を見た。
そこにはたしかに小さい頃のイリシスが映っていた。
本当に、何がどうなっているの……?
「……馬鹿みたい。みんな、みんな消えちゃえばいいのに。」
1人で静かに呟いたその言葉は牢獄の暗闇に吸い込まれていった。あと数時間もしたら私はきっと殺されているだろう。それなら最後の悪足掻きに自分で首を絞めて死んでしまおうか、なんて事を考えていると人の足音が聞こえた。
あぁ、終わりか____。
2人の騎士は私を牢獄から出したかと思えばそのまま処刑場まで引きずった。仮にも元は皇后だったというのに、この扱いなのかと少し腹が立ってしまう。
「元皇后イリシス、そなたを皇族殺人犯として死刑を執行する。」
仮にも私は皇帝の正妻であり、幼い頃からの仲だったのだ。少しは悲しんでくれるのでは、最後は私に情を見せてくれるのでは、だなんて最後の薄い希望すらも打ち砕かれてしまった。
リンデンは処刑を初めて目にする側室を気遣い優しく抱きしめていたのだ。所詮はこんなものなのか、と呆れると同時に涙が頬を伝った。どれだけ性根が悪くてもやはり私も人間である限り、本能的に生きたいと思ってしまう。まあ、そんなことは叶うはずもないのだけれど。
「来世は真っ当な善人として生きろ、イリシス。」
その言葉を最後に、私の短い人生は幕を閉じた。
____はずだった。
「…ス様、イリ……!イリシス様!起きてください!」
「は、?」
「今日は10歳の誕生日のパーティーなのですよ。起きて準備を致しましょう!」
何を言っているのか分からなかった。私はたしかに死んだはずだった。あの涙が頬を伝った感覚も、首を切られた感覚も全て覚えているし、あれは絶対に現実だった。
なのに、今私はイリシスとして生きているのだ。一体、何がどうなっているのかいくら思考を巡らせても分かるはずもなく、今はとりあえずメイドの言う通りにパーティーの準備をしようと起き上がり鏡を見た。
そこにはたしかに小さい頃のイリシスが映っていた。
本当に、何がどうなっているの……?
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