人生やり直したら溺愛された件について

桜霞

文字の大きさ
上 下
1 / 13

1話

しおりを挟む
 今思い返せば最低で最悪な人生だったと思う。腹が立てばメイドに熱い紅茶をかけ、不快に思えば地位と権力と金を武器に私の思うままに従わせる。
 そして今度は私の愛する夫、このソシエル帝国の若き太陽と崇められるリンデン皇帝が側室という、地位のみを与えられた下人同等の人間を孕ませたことに嫉妬した私はあの見窄らしい女、リビミアの食事に毒を盛った。
 毒と言ってもそんなに効力があるものじゃない。私の目的は、お腹の子を殺すことだった。それには十分な強さではあったけれど。

 私の目論見通りリビミアは倒れお腹の子は流れた。次は私だ。次は皇后である私が皇帝に愛される番だ。そう信じて疑わなかった。

 それから数日後の夜、私は皇帝に夜を共に過ごそうと誘われた。ほら、やっぱり私なんだ。あんな乏しい身分の側室より育ちもよく、教養もあり外見まで兼ね備えた私の方が好きなんでしょう、と心の中で少し高笑いをした。
 それなのに__!

「皇后、そなたがリビミアの食事に毒を持ったことが調査の結果わかった。」

「は……?」

「こちらには証拠もある。何を言ったところで無駄な足掻きだ。そして、そなたの死刑執行も決まった。それまでせいぜい反省するといい。牢獄の中でな。」

 やっと愛してもらえる、そう思ったのに告げられたのは愛の言葉なんてものではなく死刑執行が決まったということ。
 なんでこんなことになってしまったんだろう。分かってる。こんなことを招いたのは私の醜い嫉妬だ。それでも、お腹の子を殺したというだけで死刑なのか。それもあんな女の子供だ。この国になんの支障もないことは明らかだろう。

「リビミアの子供ということは私の子供でもあるのだ。つまりお前は皇族を殺人した、ということになるのだ。」

 もう、何も感じなかった。
 この人は皇后である私を愛さなかった。それに飽き足らず側室を作り、その側室ばかりに愛を注いだ。私は寂しかっただけなのに。
 全てが馬鹿馬鹿しくて、胸が痛くて。けれど、涙は勝手に溢れてきてしまう。愛されなくても、嫌われていても私は皇帝を愛していた。けれど私は、その愛した人に殺されるらしい。

 もう、全てがどうだっていい。あとは来世に希望を持とう。皇帝なんかとは無縁で、私を愛してくれる人がいる世界線。
 こんな世界なんか、皇帝なんか、全部全部大嫌いだ。全部全部、なくなってしまえばいいのに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

異世界転生したら幼女でした!?

@ナタデココ
恋愛
これは異世界に転生した幼女の話・・・

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

処理中です...