上 下
20 / 22

第二十章

しおりを挟む
「何も知らずに勝手に怒ったりしてしまってすみません。国王の気持ちも知らずに」

「どういうことだ?リリーアネ」

「この人は私のためにこんな危険なことをしてくれたんです」

「……ナザリヤに聞いたのか」

「はい、全部聞きました。私が魔力を持っていなく周りから命を狙われる危険があったからクライス家に引き渡したんですよね?」

 フィークは驚きクローシャを見た。クローシャは細い目でリリーアネを見ていた。

「クライス家に頼んでナーゼェイス帝国を襲わせたのも私のためなんでしょ?私が魔力を発生させられるように。あんな危険なことを」

「だが、あそこまで規模が広がるとは思いもしなかった。大勢の人々が大変な思いをさせてしまった。本当にすまない」

 クローシャはフィークに謝った。フィークは慌り返答に困った。
 
「その代わりこちらの兵や支援金をそちらに送る。足りなかったらもっと渡そう」

「い、いえ、そんな」

「これくらいはさせてくれ」

「それじゃあ…」

 ナーゼェイス帝国の兵が不足しているのが現状だったため兵を送ってくれるのはありがたい。支援金も国民に使おう。

「話は終わったかしら?」

 ナザリヤがドアの前に立っていた。

「クローシャは恥ずかしがり屋だったから今まで冷たく接してたのよ。私も最初は苦手だったわ。だけど、話を聞いてリリーアネをちゃんと思っているんだって分かったわ。最初っから言ってくれればいいのにね」

 ナザリヤはフフっと笑った。イザベラはどれだけ自分が恵まれているのか改めて知った。

「リリーアネ……じゃなくてイザベラ。良かったな。仲直り出来て」

「はい、フィーク様もありがとうございます。一回しか会ったことなかったのにここまでしてくれて」

「ああ、小さい頃の記憶戻ったんだったな。俺の事も思い出してたのか」

「はい」

「それじゃあ私はこれでそろそろ戻らなければいけないなので」

 フィークはクローシャに頭を下げドアの方へ行った。そして、ナザリヤに頭を下げ部屋を出ようとするとイザベラも着いてきた。

「イザベラはここに残りなよ。せっかく分かり合えたんだから」

「……そうだね……フィーク、またいらしてね」

「ああ、それじゃあ」

 フィークは馬車に乗りながらさっきのことを思い出した。イザベラが初めて呼び捨てで呼んでくれた。何故かそれが嬉しかった。

 あれから、一週間がたちタルロス帝国の支援もあり徐々にナーゼェイス帝国の街も回復していった。

 フィークがいつも通り仕事をこなしていると一通の手紙が届いた。送り主はイザベラだった。中に入っていたのはパーティーへの招待状と手紙だった。

 「フィーク様へ
 あれから一週間が経ち私たち一家も随分仲良くなりました。本当にありがとうございます。最近は三人で一緒に食事したり出かけたりしています。
 そちらは今どうですか?仕事で忙しいかもしれないのですが私たち三人集まったということなのでパーティーを開こうと思います。お時間があればぜひいらしてください。
             イザベラより」

「良かったな、上手くいって……ってこれ今日じゃないか!急いで支度しなければ」

 招待状に書かれていた日にちは今日だった。急いで着替え向かった。

 城に着くと出迎えてくれたのはイザベラだった。前よりも元気で笑っていた。

「ようこそ、来てくれました。どうぞこちらへ!」

「前より元気になったな」

「毎日が楽しいので」

 イザベラが来ていた白と水色のドレスが輝いているように見えた。大広間に着き、フィークに気づいたクローシャとナザリヤがこちらへ来た。

「よく来てくれました。今日は楽しんでください」

「こちらこそお呼びしていただき嬉しいです」

「お父様!ダンス踊りましょ」

 イザベラから誘っていた。だいぶ仲が良くなったのだろう。フィークはナザリヤと話していた。ナザリヤは嬉しそうに二人を見ていた。

「ナザリヤ様はあのパーティーの日にリリーアネが自分の娘だって気づいていらっしゃってたんですよね?」

 ポカーンとした顔でフィークを見てニコッと笑った。

「よく分かったわね。そうよ、あの日あなたの隣に立ってたイザベラを見てすぐ私の子だって気づいたわ。嬉しかったわ。無事でいてくれて。だけどあの子が記憶を失っていたのは衝撃的だったわ。クライスケ家はわざとやった事じゃないと思うの。クライス家がイザベラに冷たかったのは王家の血を引き継いでいるものだからどう接すればいいのかわからなくてその結果冷たく接してしまったんじゃないかしら。まあそこはあまり考えないようにするわ。ありがとね。あの子のそばにいてくれて」

「いえいえ」

「これからもあの子の事よろしく。あなただったらあの子を大切にしてくれると信じてるわ」

 ナザリヤはウインクをしてどこかへ行った。フィークは顔を赤くした。そしてイザベラの元へいき

「私と踊ってくれませんか?」

 イザベラは少し驚いていたがすぐに微笑み

「喜んで!」

と答えた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

夢食いの少女は夢を探す

悠奈
ファンタジー
鈴本優吾が大学で出会ったのは、悪夢を食べる性質を持つ〈獏〉である東堂あまねだった。ある生徒の悪夢をあまねが食べた場面に遭遇した優吾は、あまねの協力者として指名される。

透明色の魔物使い~色がないので冒険者になれませんでした!?~

壬黎ハルキ
ファンタジー
少年マキトは、目が覚めたら異世界に飛ばされていた。 野生の魔物とすぐさま仲良くなり、魔物使いとしての才能を見せる。 しかし職業鑑定の結果は――【色無し】であった。 適性が【色】で判断されるこの世界で、【色無し】は才能なしと見なされる。 冒険者になれないと言われ、周囲から嘲笑されるマキト。 しかし本人を含めて誰も知らなかった。 マキトの中に秘める、類稀なる【色】の正体を――! ※以下、この作品における注意事項。 この作品は、2017年に連載していた「たった一人の魔物使い」のリメイク版です。 キャラや世界観などの各種設定やストーリー構成は、一部を除いて大幅に異なっています。 (旧作に出ていたいくつかの設定、及びキャラの何人かはカットします) 再構成というよりは、全く別物の新しい作品として見ていただければと思います。 全252話、2021年3月9日に完結しました。 またこの作品は、小説家になろうとカクヨムにも同時投稿しています。

転移術士の成り上がり

名無し
ファンタジー
 ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

【完結】緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
〜花が良く育つので「緑の手」だと思っていたら「癒しの手」だったようです〜 王都の隅っこで両親から受け継いだ花屋「ブルーメ」を経営するアンネリーエ。 彼女のお店で売っている花は、色鮮やかで花持ちが良いと評判だ。 自分で花を育て、売っているアンネリーエの店に、ある日イケメンの騎士が現れる。 アンネリーエの作る花束を気に入ったイケメン騎士は、一週間に一度花束を買いに来るようになって──? どうやらアンネリーエが育てている花は、普通の花と違うらしい。 イケメン騎士が買っていく花束を切っ掛けに、アンネリーエの隠されていた力が明かされる、異世界お仕事ファンタジーです。 *HOTランキング1位、エールに感想有難うございました!とても励みになっています! ※花の名前にルビで解説入れてみました。読みやすくなっていたら良いのですが。(;´Д`)  話の最後にも花の名前の解説を入れてますが、間違ってる可能性大です。  雰囲気を味わってもらえたら嬉しいです。 ※完結しました。全41話。  お読みいただいた皆様に感謝です!(人´∀`).☆.。.:*・゚

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

愛想の無い姉と婚約破棄して可憐な妹と婚約したいとのことですがあなたみたいなアンポンタン姉妹揃ってお断りです

ハツカ
ファンタジー
姉との婚約を破棄して、妹と婚約したいですって? 私達は姉妹揃って、あなたのこと嫌いなんだけど?

華都のローズマリー

みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。 新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!

処理中です...