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第十四章

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 それを拾い読んでみた。

「風の魔力は他の魔力とは違く少し不思議な魔力。他の魔力は扱う時は頭の中で想像するとそれが現実でおこる。しかし風の魔力は心を統一しながら使う。ただ頭の中で想像しただけでは発生しない。風と心を一緒にする」

 それを読み終わるとリリーアネは呟いた。

「風と心を一緒にする……」

 今までそんなこと一度も考えたことは無かった。ということはリリーアネは無意識に風と心を一緒にしていたことになる。

 しかし、今回いつものようにして魔力を使おうとしても風は教えてくれない。もっとちゃんと心を合わせなければいけないのか。

 難しい難題を突きつけられたがそれでもやるしかないと思い試そうと思った。

 本を一生懸命探していたフィークに紙を見せ

「頑張ってみる」

 と心に決め図書室を後にした。

 それからリリーアネは風によく当たる庭園で毎日のように魔力の練習をしていた。

 それでも一向に良くならない。一度諦めそうになったが諦めず頑張っていた。それを見ていたフィークは仕事を終わらせたあとはずっとリリーアネに付き添っていた。

 アドバイスをしたり風の魔力について調べたりした。

 そんな日々が二ヶ月以上続いたある日食事を終えたリリーアネが部屋へ戻るとテーブルの上に手紙が置いてあった。

 送り主は分からず宛先はリリーアネにだった。中身を開くとそこにはこんなことが書かれていた。

「風と一体化するイメージよ」

 ただ一言そう書いてあった。風と一体化?どうやって?そんなことが出来るの?リリーアネは不安で仕方なかった。

 その日は風が強く吹いていた。いけないかと一瞬諦めたがやってみる価値はあると思い外に出てみた。

 強い風がリリーアネを押しふらつきそうになる。やっとの思いで庭園の真ん中につき心を落ち着かせ風と一体するイメージで目を閉じた。

 リリーアネの耳に聞こえるのは風が吹く音だけ。お願い、過去の出来事を教えて。何があったの…

 リリーアネは願いずっと目を閉じ精神統一していた。聞こえてくるのは風の吹く音だけ。その瞬間リリーアネの目の前が真っ白になった。

 さっきまでいた庭園ではなく周りは真っ白な背景だった。

 上手く来れた、そう思いまた心の中で願った。私の過去の出来事を教えて。そう願うと真っ白だった背景は一気に変わりムービーのようなものが流れ出した。

 小さな女の子がお母さんとお父さんの手を握りながら楽しそうに歩いている。すぐに分かった。

「私だ…」

 これはリリーアネの小さい頃の姿だった。忘れていた思い出が一気に溢れ出てきてどんどん蘇ってきた。

 他にもお母様に本を読んでもらったり、綺麗な花を一緒に眺めていたり、懐かしい思い出が次々に流れ出した。

「思い出した…そうだ…私は…タルロス帝国の王女イザベラだ…」

 公爵家に生まれたナザリヤとタルロス帝国の第一王子として生まれたアナギラの間に生まれたのがリリーアネ……いやイザベラである。イザベラはナザリヤとアナギラに愛されていた。

 しかし、アナギラはイザベラが三歳の時に病気で亡くなった。幼かったイザベラはそれがよく分かっていなかった。いつかお父様は戻ってくると信じていた。

 そんなある日アナギラの代わりにイザベラの父になったのがクローシャ。今のタルロス帝国の王である。

 その頃のイザベラはどうしてもアナギラの事が忘れられずあまりクローシャの懐いていなかった。クローシャは元からイザベラに興味がなくほとんど喋らなかった。

 そんな中ナージェイス帝国に行った時お母様とお父様を待ってる最中庭園で青色カーネーションを見ていた。

 その時近くによってきた男の子がいた。顔立ちが綺麗でカッコよかった。それが今のフィークだった。だから、フィークは私のことを気に止めていてくれたのだろう。今この背景を目にしてやっとわかった。

 しかし事態は思わぬ方向に変わってしまった。今までクローシャはイザベラに興味がなく、いてもいなくてもどちらでも良かったためそこまで気にはとめなかった。

 だがイザベラが魔力を持たないと知ってから一切関わろうともせず軽蔑するようになった。

 それでもナザリヤはイザベラを心から愛していた。そしてイザベラが六歳の誕生日を迎えようとしてた日にクローシャはイザベラをクライス家に売った。

 「魔力を持たない人間などこの国の王家には必要ない」

 それがクローシャがイザベラに言った最後の言葉だった。
 
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