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始まり

始まりー⑥

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「おい、戻るぞ。仲間が来たら面倒だ」

気づくと目の前にはカナリヤがいる。カナリヤの奥には木にもたれかかった男がいる。

「あ……ごめん…」

「そういうのいいから。早くして」

怒った口調で言う。

なんにも出来なかった。ただ見ているだけだった。怖くて立ち上がることすらできずにいた。

情けない。自分が情けなくて悔しい。こんなに弱くて俺はカナリヤを守れるのか?カナリヤに助けて貰ってばっかでいいのか?

一人ずっと自分を責めている。

カナリヤがいなかったら死んでいた。何も出来ずに呆気なく。

自分の手を見る。強くならなきゃいけない。まずそこから始めよう。自分を守れなきゃ人を守ることなんてできない。

そうと決まればこれから体力や剣術を身につける必要がある。それならお父様が教えてくださるだろう。

シャリングの家は侯爵家ではなく騎士団。

シャリングの父はシャルバリー王国第六騎士団長アナテスト・ハルバリスト。剣術に関しては父に聞いた方が早い。

(そこまで世間には知られていない騎士団である)

そうと決まれば早速お父様に連絡しよう。

そんなことを考えているうちに村に戻ってきた。カナリヤとシャリングの家の前にはハーネストが立っていた。

「あ、帰ってきた!心配したよ」

「ハーネスト。この国の騎士団を調べて名前とか挙げられる?」

「え?ああ、出来なくもないけど。やってみるよ」

「ありがとう」

カナリヤはハーネストの横を通り家に入っていった。シャリングは俯き暗い顔を浮かべながら横を通ろうとした。

「おい、何かあったのか?」

「え……?」

「あの建物に行ったのか?」

「……」

「図星か。もしかして敵に見つかったのか?」

ハーネストは勘がいい。隠し事はできないと思い正直に話した。

「ああ、背後から迫ってきた。俺はなんにもできなかったよ。カナリヤが居なきゃ俺死んでた」

「そうか……カナリヤ騎士団を片っ端から調べるのか。それで絞りこめるのか……」

「騎士団……」

すべての騎士団を調べるというのならば当然ハルバリスト家が騎士団であるとバレるだろう。

バレたところで特に問題は無いがグチグチ言われそうで怖い。嘘ついていたのは本当のことだし文句言える立場でもないしな。

「明日って特に行くとことかないですよね?」

「え?うん。カナリヤがなんにも言ってなかったらないんじゃないか?俺は明日村を回らなきゃ行けないから。どっか行くのか?」

「実家に一度戻ろうと思って」

「ああ、確かシャリングの実家は騎士団だよな?だからカナリヤの護衛についていたのか。調べて意味が理解できたよ」

ドアをバタンと閉めた。まさかハーネストにバレていたとは。けれど、カナリヤが言ってこないということはカナリヤには話してないのだろう。

騎士団があの建物に関わっているとしても自分の家は関わってないはず。それも確かめたかった。
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