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始まり

始まりー⑤

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シャリングは急いでカナリヤの元へ走った。いつも嫌な予感がする時はよくその予感は当たる。

心配になりカナリヤの元へ急いで走ったのだ。カナリヤは歩くスピードが速く追いつくのに精一杯だった。

「あんたなんで着いてきたの」

「し…心…心配に……なっ…て……」

走ってきたため息が荒くなる。上手く喋れなかった。

「あんたに心配されるほど私は弱いと思われてんのか」

「そういう訳では……」

「私のことは放っておいて」

カナリヤはそのまま歩き出す。

「放っておけるわけがないじゃないか!」

シャリングは今出せる限りの声で叫んだ。

「君は…今からあの建物に行くんだろ?そんな危険なところに一人で行かせられる訳な無いだろ!一人で抱え込まないで俺たちにも相談してくれよ。少しでも力になりたいんだ」

「相談した所で今この状況が変わるって言うの?確信があるの?」

「それは……分からない。でも…だからこそやって見なきゃ分からないだろ!やってもないのにそうやって決めつけんなよ!」

カナリヤは無言だった。ずっとシャリング見つめている。何を考えているのだろうか、さっぱり分からない。

今の言葉で少しでも考えを変えてくれただろうか。

「勝手にしな」

「本当か!」

シャリングは嬉しくて堪らなかった。認めてくれたのだと。しかし

「だけど私は人を信用しないから」

小さく細い声で言った。シャリングはピタリと喜びが止まった。

けれど前よりは一歩近づけたんじゃないかと。それだけでも嬉しかった。

カナリヤの足が止まった。シャリングは目の前を見る。そこには高さ推定三メートルはある塀が何百メートルと続いていた。

「ここが……」

「足音立てるな。気づかれる」

小さい声で注意した。確かに見つかったら殺されるかもしれない。ここからは慎重にしていこうと思った。

するとさっきまで前にいたカナリヤがどこにもいなかった。焦って周りを見ると隣の木の枝にカナリヤが座っていた。

ホッとして塀を眺めていると後ろから足音がした。カナリヤだと思い振り向くと剣を持った男がいた。

シャリングは恐怖で座り込んでしまった。男は剣を持ち上げシャリングに向かって剣を振った。

終わりだと思いシャリングは目をつぶった。しかし、いつまで経っても剣は当たってこなかった。

恐る恐る目を開けると目の前には男ではなくカナリヤがいた。カナリヤは剣を男の首につけていた。

シャリングは慌てて立ち上がろうとしたが足がまだ震えていて立てなかった。

カナリヤは何か男に言っていたが聞こえなかった。男は体が震えている。遠くから見ても分かった。
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