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始まり

始まりー①

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「絶句はしてないよ。俺がカナリヤと同じ立場だったら同じことをしてたと思うし。カナリヤのやっていることは正しいことか悪いことかは分からないけど、俺はカナリヤについて行こうと思った」

「……そ」

(あいつが絶句した顔を見たかったのに。なんだよ。全然面白くない顔だったわ)

「ミーシャ。こっちに来て」

カナリヤの合図と共にミーシャがリビングにはいってきた。シャリングはミーシャと会うのは二回目。

ミーシャの足には紙が付いていた。シャリングが気になり足から取って開いた。そこには

「十六」

とだけ書かれていた。何が十六なんだ?と疑問に思っているとカナリヤがシャリングの横から出てきた。

「貸して」

「あ、はい」

カナリヤはその数字を見るとビリビリに破き始めた。何か不吉な数字なのだろうか。

「なあ、その数字何を示しているんだ?」

「それは今日亡くなった人の数だ」

ハーネストがミーシャを撫でながら言った。今日亡くなった人の数?なんでそれがここに書かれているんだ?

「それはあの建物で亡くなった人の数の事だよ」

「あの建物って……カナリヤがみつけた?」

「そうだ」

「十六人もの人が亡くなっているのか?嘘だろ……そんなに……?」

「日に日に人数が増えている」

カナリヤがボソッと言った。

「じゃあ一刻も早く助けなきゃいけないじゃないか!」

「そんなの分かってるんだよ!けどな、それは簡単なことじゃないんだよ!」

カナリヤが怒鳴った。

「ごめん……テンパリすぎた」

「私たちだって一刻も早く助けてあげたいと思ってんだよ。だから今こうやってできる限りの事を行動に移しているじゃないか」

「それは王から信頼無くして復讐するんだろ?それの何が為になっているんだ?」

「マリヤの力は次第に弱くなっていく。マリヤが弱くなったところをついて私が作ったウイルスを国中にばら撒く。マリヤではもう治せない。そこで王は私に頼るしかないだろ?」

「国中に撒くのか?関係ない人達も巻き込むなんて、それは賛成できない」

シャリングがカナリヤの作戦を反対した。ハーネストは口を開けずに黙って二人の会話を聞いている。

「じゃあどうしろってんだよ」

「皇太子だけで良くないか?」

「皇太子は後にする。だが、そうすると一つ問題が発生するんだよ」

「問題?」 

「皇太子だけにするのなら城に潜入して皇太子の食べる物とかに入れなきゃならない」

「ウイルスって入れるの?」

「私の作ったウイルスは伝染力はほぼない」

「伝染力がない??じゃあ他の人からまた別の人に感染するのはないってことか?」

「そうだよ」

「まあそれなら問題は無い……とも言い切れないけど……」

「大丈夫だ。国撒くウイルスは弱い。すぐに治るだろ。その後皇太子にはもっと強いのを撒く。死にはしないくらいだろう」

カナリヤの顔には少し笑みが浮かんでいた。シャリングは背筋がゾッとした。
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