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カナリヤの真相

カナリヤの真相ー⑦

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「それであいつはルリスを俺たちがよく遊んでいた湖の近くに埋めたみたいだ。カナリヤは小さい頃に親をなくしててな、ルリスが本物の姉みたいな存在だったんだ。カナリヤはルリスのことが大好きでいつもそばにいた。そんな人が目の前で殺されるなんてキツイだろ……」

「……」

「あいつがお前にこのことを言わなかったのは危険に晒したくなかったんじゃないか?」

何も言わずシャリングはコップに入っているお茶を覗きながら考えた。

カナリヤは大事な人を無くして、大事な人を殺した人に復讐しようとしている。

自分がもしも大切な人が目の前で殺されたらどうなってしまうだろう。平常心を保てない。

「そんなことも知らずに俺は……」

「お前に言わないのもカナリヤの優しさなんだよ。分かってやれ」

「カナリヤに謝んなきゃな」

「後でにしな。今カナリヤは遠くに行ってるから」

ハーネストは立ち上がり棚からクッキーを出した。皿に移してテーブルに出した。

「じゃあ、カナリヤはルリスを殺した相手に復讐しようとしているんだよな?なんで王に復讐しようとしているんだ?」

「あそこの建物を知っているのはサンザリカという奴だけでなく王も知っているだろ。あの建物さえ無ければあんなことにはならなかった。カナリヤから全てを奪ったやつに復讐しようとしているんだよ」

「それって……国一つを敵に回しているようなものだろ?そんな危険なことをしようとしているのか……」

「それほどルリスの存在は大きかったんだろうな」

次々にハーネストはクッキーを口に放り込んだ。シャリングは俯いてから顔をあげた。

「俺はそれでもカナリヤの力になりたい」

「そうか……けどこれだけは言うぞ。あの建物の存在を知った以上いつ命を狙われるか分からないからな。それは覚悟しとけよ」

「…分かってる」

ドンドン

ドアを誰かが叩いた。ハーネストは立ち上がり玄関のドアを開けた。

そこにはカナリヤがいた。

「あ、カナリヤ。稽古は終わったの?」

「うん」

「あ、後ろにいるのってミーシャ?」

カナリヤの足にスリスリ擦り着いていたのは黒猫のミーシャだった。

「ちょっといい?」

「あの事?それなら今シャリングに言ったよ」

「は?言ったの?」

カナリヤは少しキレ気味だった。

「だっていつまで経ってもカナリヤが教えてくれないってシャリングが言うから」

「あっそ」

カナリヤはハーネストの横を横切った。リビングに入り、シャリングと目が合う。

「あ、カナリヤ……」

カナリヤはシャリングの言葉を無視して台所に向かった。

(まあ、無視されるだろうな。まあカナリヤの真実が分かって良かった。カナリヤ、ルリスの為にあそこまでやるのか。ウイルスを作ったり……)

「あんた私のやりたいことを知ってどう思った?絶句した?」

急に話しかけられシャリングは驚いた。
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