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過去

過去ー④

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「待っててお茶を持ってくるよ。紅茶とグリーンティーどっちがいい?」
 
「紅茶」

「君は?」

「あ、紅茶で」

「OK」 

ハーネストは台所に向かった。カナリヤはその間椅子に寄りかかり伸びをしていた。シャリングはここがどこなのか気になってしょうがなかった。

カナリヤに聞いたところで無駄だろうと分かってたので聞かなかった。

「はい、紅茶だよ」

ハーネストがお盆にコップとお菓子を乗せて持ってきた。

「ありがとう」

「それで?どうしたの?」

コップをカナリヤとシャリングの目の前に置き椅子に腰掛けカナリヤに聞いた。

「一軒空き家とかない?」

「ああー、あるよ。ちょうど最近隣に住んでた方が亡くなって今は誰も住んでいないよ」

「そこ、私たちが使ってもいい?」

「ああ、いいよ」

「そこ、案内して」

「OK、ちょっと待ってて。鍵あるから持ってくるよ」

ハーネストは急いでどこかへ行ってしまった。 

(鍵?鍵ってそこの家のか?なんでハーネストが持ってるんだ?)

「なあ、カナリヤ。ハーネストってここの村長みたいなの?」

「ええ、そうよ」

見事に当てた。

「持ってきたよ。じゃあ行こうか」

三人は外に出た。ハーネストに着いていき、一軒の家の前に着いた。ちゃんと整備されている。

「はい、どうぞ」

「お邪魔します」

シャリングは小さい声で言った。カナリヤは何も言わずズンズン歩いていった。一通り部屋を見たあと玄関に戻ってきた。

「じゃあもう少したったらここ使わせてもらっていい?」

「ああ、いいよ」

「今日はこれでいいよ。私たち一回ここの家見てから帰るからハーネストは先戻ってて。鍵はまた返しに行くよ」

「分かった」

ハーネストはチラリとシャリングを見てから家を出た。物凄い敵意を向けられたように感じた。

「入って。二階に部屋があるからどっちか選んで。好きな方でいいから。私はリビングにいる」

言われた通り二階に上がった。確かに二つ部屋があるが別にどちらでも変わらないだろうと思い左の部屋を選んだ。

何となく右と左と言ったら左をいつも選ぶ。部屋のドアを開けるともうベッドや机、椅子、棚が置いてあった。

しっかりしてるなと思いながら部屋を見渡した。思ったよりも広かった。日差しの当たりが良かった。

(さすが田舎)

都会と違ってまたいい所がある。

「カナリヤ。部屋決めたぞ」

「あそう」

「あのさなんで家を必要としているの。城があるじゃん」

シャリングが質問した。カナリヤはバッグから色々と取りだしていた手を止めた。

「私の目的は王からの信頼を無くすことよ。そして国を追い出されること。その時ように、この家を確保しておく。私達、皇太子に毒を盛ったでしょ?本当はそれで、私が治してもっと王の信頼を大きくしようと思った。だけど、マリヤが来て変わった。私が治すのではなく、マリヤに治させ、王の信頼をマリヤに向けさせる。そして私の信頼度は落ちていき遂には国を追い出される。これが私の作戦の一つ」

止まっていたカナリヤの手が動き始めた。シャリングはカナリヤのやろうとしていることを知ることが出来たが違和感を感じた。

あのカナリヤがそう簡単に作戦を話すのか。あんなに固く口を閉じていたのにあっさりと話した。

なにか裏があるシャリングはそう確信した。カナリヤはシャリングをチラりと見た。

そしてフッと笑った。

「あんたさ今、なんでこいつは今までなんにも言ってくれなかったのに急に言い出したんだ、とか思ってたでしょ?」

図星だった。

「なんでだろうね」

面白そおかしく言った。

「また何か企んでいるんだろ?」

「ええ、そうよ。あ、あと、このこと別に王に話してもいいわよ?そっちの方が私から見ればありがたいことだし」

「君さ僕のこと信用してないの?」

「する訳ないでしょ?もしかして信用されているとでも思った?」

何故かシャリングはショックを受けた。カナリヤは自分のことを信用してくれていなかった。どこかで信じてくれていると思っていた自分が情けなく感じた。

カナリヤとは仲良くなっていると思っていたのに、カナリヤにとっては別にシャリングは特別な存在でも何でもなかった。

シャリングはカナリヤから見れば、ただの付き人でしかなかった。
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