上 下
13 / 111
異世界少女

異世界少女ー③

しおりを挟む
「朝早くからすみません。カナリヤです。今よろしいですか?」

「いいぞ」

「失礼します」

ドアを開け一礼してから中に入った。カナリヤの部屋とは違いやはり立派だった。大きなベッドに真ん中には大きなソファ。
 
壁には絵画や家族写真が飾られている。

「ああ、薬師ではないか」

「はい、お会いしたのはこれで二回目ですね」

「そうだな、それで何か用か?」

「これジャスミン茶です。体にいいので是非オススメしたいと思いまして」

お盆からお茶を取り机に置いた。皇太子はジャスミン茶を見ながら

「へぇ、わざわざすまないな」

「いえ、私の勝手なので」
 
「頂こうか」

皇太子は一気に飲み干した。シャリングはビクビクしていた。いつ倒れてもおかしくない。

それなのにカナリヤは堂々としている。

「後ろにいるものは新しい付き人か?」
 
「はい。あの時は本当にありがとうございます」

「君名前は?」 

「シャリング・ハルバリストです」

「シャリングか。どうだ?楽しいか?付き人は」

トゲトゲした言葉だ。シャリングはどう答えるか…

「楽しいですよ。山に山菜取りに行ったり調合したりと体験したことの無いことばかりで。毎日楽しいです」

「そうか、そうか。それは良かったな」

皇太子はソファで伸びをして席を立った。

「すまないが、これからまだ仕事がある。また話しは今度にしてくれないか?」

「はい、お忙しいところお時間を下さりありがとうございました」

礼儀正しく挨拶し部屋を出た。シャリングの頭からは少し汗が出ていた。冷や汗だ。

「あんたなにそんなビクビクしてるの」

「誰だってドキドキするだろ。ていうか、あれ本当に毒か?全然効いてないみたいだったが」

「あんた馬鹿なの?」

直球に言われた。本気で思っているような顔をしてシャリングを見た。

「あそこですぐに毒が効いたら私たちが犯人だってすぐ分かっちゃうでしょ。だからあの薬の効果は何時間か経ったら症状が出始めるようになってるの」

頭がいい。そんなこと考えていなかった。確かにあの場ですぐに毒の効果が出てきてしまったら俺たちが確実に怪しまれる。

「本当カナリヤは頭いいな」

「これくらいは分かるでしょ」

(はい、そうですね…)

部屋に戻ったあとは少し休み街の方へ行き病院を回った。

カナリヤは歳も関係なく色んな人に優しく接していた。

改めてカナリヤは凄いんだなと感心させられた。シャリングはその間ずっとついて行っては立っているだけだった。

(暇だ)



それから病院を一通り回り終わり城に戻った時だった。庭園から人の声がした。

二人は急いで駆けつけた。そこには黒い髪に黒の瞳をした少女が座り込んでその周りに人が集まっている。

すぐに分かった。彼女が異世界からやってきた少女だろう。

カナリヤは遠くから少女を見ていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

完結 幽閉された王女

音爽(ネソウ)
ファンタジー
愛らしく育った王女には秘密があった。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

辺境伯令嬢は婚約破棄されたようです

くまのこ
ファンタジー
身に覚えのない罪を着せられ、王子から婚約破棄された辺境伯令嬢は…… ※息抜きに書いてみたものです※ ※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています※

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

処理中です...