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革命編 八章:冒険譚の終幕

欠片の到来

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 マシラ共和国の傭兵ギルドで集まったアルトリア達とマギルス達は、共にグラシウスに連行されるような対処かたちで客室まで通される。
 そして集められた客室にて、それぞれが用意された長椅子ソファーに腰掛ける面々の中でグラシウスが各々の目的と用件を聞きながら頭を悩ませつつ言い纏めた。

「――……そっちの魔人達ふたりの要件については、普通の手続きでやれるけどよ。……お前等に渡した報酬を全部、今から各国へ返せってのは……流石に……」

「アタシも同じ事を思って言ったんだがな。どうしても、コイツアリアが返すって聞かなかった」

「当たり前よ。とにかく、私達にそんな報酬は要らない。第一、まだ世界の滅亡は回避されたわけじゃないもの。だから報酬を貰う理由も無いわ」

「えっ!?」

 報酬を各国へ返却するよう求めるアルトリアは、そうした理由を話す。
 すると初耳であるその話を聞き、グラシウスは瞳を見開きながら驚きを向けた。

 それを聞いていたマギルスは、改めて首を傾げながらアルトリアへ問い掛ける。

「お姉さん達がおじさんエリクと離れて動いていたのは、それを解決する為なんだよね。それで、おじさんと同じように創造神オリジン欠片たましいを探してたんだ」

「やっぱり、エリクも欠片そっちを探してたのね。話は聞いたけど、なんでログウェルと私の母親メディアを探す事になってるの?」

「んっとね。メディアって人は、ログウェルって七大聖人セブンスワンのお爺さんに拾われて育てられたんだって。でも、メディアって人は『白』い人と同じ感じで生まれたみたいだよ」

「『白』と同じ?」

「ほら、マナの実から人間ひとになったって話。メディアって人も、天界そらに在ったマナの樹から生まれたみたい」

「!?」

「……私の母親メディアが、マナの実から誕生した生命ニンゲン……!?」

「それでね、巫女姫から聞いた話だと。そういう人達は昔も居て。七つになった創造神オリジンの魂を取り込んでたみたい。だからメディアって人も欠片それを持ってて、魔大陸まで集めに行ったんじゃないかって話だよ」

 エリクや巫女姫からその話を聞いていたマギルスは、今まで得た情報を簡潔ながらもアルトリア達に伝える。
 それを聞いた二人は驚愕を浮かべながら言葉を詰まらせると、静まった場においてグラシウスが表情を強く渋らせながら声を発した。

「……何の話かよく分からんが、また世界が滅びそうってのはマジな感じか?」

「そうそう」

「だったら尚の事、お前等に渡した報酬かねはその為に使え。各国もそれを知ったら、絶対にそう言うだろうよ」

「!」

「渡された金を報酬だと思うな。お前等の目的を助ける為に、各国が用意した準備金だと考えろ。……強さはともかく、傭兵を長くやってる先輩としての助言だ」

 グラシウスは彼等に渡された報酬かねに関してそうした私見を述べ、改めて報酬の返却を拒否する。
 世界の滅亡という共通の危険性を抱えている以上、その理由は至極真っ当な意見に思えた。

 それに対して各国に対する返却を求めていたアルトリアは、更に表情を渋らせながら呟く。

「……分かったわよ。でも勝手に渡して来た準備金モノをどんな事に使っても、各国には文句を言わせないわよ」

「いいんじゃねぇか? それで。……とりあえず、そっちの預金引き出しの件と報酬かねの受け渡しは了解した。白金貨規模の受け渡しだと俺の承認も必要になる。ちょっと手続きをしてくるから、待ってろ」

「はーい」

「よろしくお願いねぇ」

 納得したアルトリアを確認したグラシウスは、マギルス達の要件を済ませる為に客室から出て行く。
 するとその場に残された者達の中で、改めるようにケイルがマギルスへ問い掛けた。

「……それで、『聖剣』だっけか? なんでエリクはそんなモンを……」 

「えっとね。その『聖剣けん』はマナの樹で作られてて。持てるのは創造神オリジン欠片たましいを持ってる人だけなんだって」

「……なるほどな。その『聖剣けん』を使って、欠片を持ってる奴を探すつもりなのか」

「でもね、その『聖剣《けん》』って怖いんだよ。魔力を持ってるモノを何でも壊したり、それに斬られると到達者エンドレスでも傷が治らないんだって。昔はそれで【勇者】って人が魔族と戦ってたみたい」

「【勇者】に『聖剣』って、御伽噺おとぎばなしに出て来るような話だな。……で、なんでエリクだけ来てないんだ?」

「『聖剣それ』を持ったままだと、転移が出来なかったんだよ。持ってる人にも、魔力の効果を消しちゃうんだって」

「なるほどな。魔人や魔族からしたら、天敵の武器ってわけだな。……アリア、どうした?」

 改めてエリクが居ない理由を聞いたケイルは、隣に座るアルトリアへ話し掛ける。
 しかし彼女は思い悩む様子を見せながら顔を俯かせ、何か考えている様子を見せていた。

 それに気付いたケイルが呼び掛けると、アルトリアは顔を上げながら苦笑の面持ちを浮かべて呟く。

「……『白』が言ってたでしょ。私やエリクには創造神オリジンの因子が色濃く受け継がれてるって」

「ん? ああ、そういえば言ってたな」

「その理由が、やっと分かったわ。……創造神オリジンのマナの樹から生まれた『マナの実』。それが私の母親だって言うなら、私にその因子が色濃い理由にもなるわよね。納得よ」

「……どうした?」

「別に。……化物と呼ばれていた私は、本当に化物の子供だった。ただ、それだけの話だわ」

「……」

 自分が他の人間達とは異なる化物ものから生まれた存在だと、アルトリアは改めて理解する。
 そして自嘲するような微笑みを浮かべていると、ケイルは表情を厳しくさせながら鋭い声を向けた。

「……お前はお前だ。それ以上でも以下でもない」

「!」

「アタシはそう思うし、エリクだってそう思ってるはずだ。マギルス、お前はどうだ?」

「んー。僕は首無族デュラハンだし、そもそも人間じゃないもんね。だから、別にって感じ?」

「だろ。アタシ達にとっても、お前がどんな奴から生まれたかなんて関係ない。……だからって気にするなとは言わないがな、気にし過ぎるなよ」

「……そうね」

 自身の母親メディアが『マナの実』だった事を改めて知ったアルトリアに、ケイルはそうした言葉を向ける。
 それを彼女なりの励ましだと理解したアルトリアは、苦笑を浮かべながらも頷きながら応じた。

 そして互いに必要な情報共有を終えた後、ケイルが改めて今後の提案を述べる。

「とりあえず、これからどうするかだな。アイツがどんな方法で来るか分からないが、合流し易い場所で待ってた方がいいだろ。一旦、帝国に戻ろうぜ」

「……そうしましょうか」

「マギルスも、それでいいか?」

「いいよー!」

「クビア。お前はどうする?」

「私は報酬を貰ったらぁ、自分の領地に帰るわぁ。今は帝国そこの貴族をやってるからぁ、結構忙しいのよぉ」

「帝国の貴族? なんでまた」

「貴方達が居ない間にぃ、色々とあったのよぉ」

「そうか。……まぁ、この御嬢様に付き合ったせいで疲れたし。エリクが戻るまで休憩しながら、色々と公爵を頼って準備をしよう。金の使い道も、そこで考えればいいだろ」

 今後の行動を提案するケイルに、アルトリアもマギルスも異論を挟まずに応じる。
 するとそれから微細な情報を確認し合う中でグラシウスが戻ると、エリクの預金から白金貨五千枚がクビアの預金に支払われ、無事に取引は成立となった。

 それから彼等は傭兵ギルドを出ると、クビアは転移魔術で彼等と別れる。

「――……何か協力が必要なら言ってねぇ。お金次第でやってあげるからぁ」

「相変わらず、現金な女ね」

「誉め言葉として受け取っておくわぁ。それじゃあねぇ――……」

 クビアは人気の少ない場所で紙札を使った転移魔術を使い、自身の領地へ戻る。
 それを見送った三人もまた、それぞれに顔を合わせた。

「じゃあ行くか。アリア、頼むぞ」

「はいはい」

「アリアお姉さん、転移魔法が使えるんだよね。いいなぁ、僕も使える?」

「アンタの場合、覚えるなら魔法より魔術でしょ」

「それもそっか」

「それじゃあ、行くわよ。私に掴まって」

「はーい」

 二人はアルトリアの肩や腕に手を触れた後、マシラ共和国の首都から姿を消す。
 こうしてエリクを除く一行は合流し、ガルミッシュ帝国でその帰還を待つ事で話は進められた。

 そうした状況の中、場面は上空そらに浮かぶ天界エデンの白い大陸へ移る。
 白い大陸に置かれている箱舟ノア艦橋ブリッジに待機していた義体姿のアルフレッドは、あるモノを観測していた。

「――……なんだ、この反応。……生命反応が二つ、この大陸に近付いている……?」

 自身の義体からだに備わる感応装置センサーが大陸に近付く生命反応を感知し、それを確認する為にアルフレッドは箱舟ふねの外へ出させる。
 すると生命反応を感知する方角へ視線を向け、義眼の視界を拡大させながら様子を窺っていた。

 そこでアルフレッドは、義体ながらも驚愕の感情を露にさせる。

「……まさか、アレは……」

 彼の義眼に移ったのは、ある二人の人影。
 それが凄まじい速さで上空そらを駆けながら、自分が居る場所に向かって来ている事を理解した。

 そして捉えたその人物の姿に、アルフレッドの感情は驚きに染まる。
 しかしそんな彼の驚きを他所に、その人物は口元を微笑ませながら呟いた。

「――……ここも懐かしいわね、ログウェル」

「そうじゃのぉ」

「それにあそこなら、丁度良さそう。――……あの子達がどれだけ自分の権能ちからを成長させたか、楽しみだな」

 その人物は隣で飛ぶ人物ログウェルの名を呼び、微笑みを見せる。
 しかしその口からは不穏な言葉が述べられ、ある者達が狙いである事を定かにさせていた。
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