上 下
894 / 1,360
革命編 四章:意思を継ぐ者

怪物の変貌

しおりを挟む

 元ルクソード皇国の騎士ザルツヘルムに追い詰められ自身の生命に危機が至る狼獣族エアハルトは、急激な成長を見せながら拮抗して見せる。
 そしてついに『敵』として見定められ、二人は激しい接戦を繰り広げ始めた。

 一方その頃、別の出入り口から会場を出た妖狐族クビアは、帝城内じょうないの廊下を走りながら階段を駆け上がる。
 その後ろからは這う姿勢ながらも凄まじい速度で追う泥の怪物ベイガイルが迫り、クビアを捕食しようと通る場所を破壊しながら追跡を続けていた。

 更に追い付けない本体ベイガイルから無数が腕のように伸び、クビアを捕らえようと蠢きを見せている。
 そして四階まで続く階段を登り切ったクビアは伸びる泥を回避し、南側の廊下へ走りながら左手に持つ紙札を壁に貼り付けた。

「――……かべッ!!」

 クビアがそう叫ぶと同時に、貼り付けた紙札に魔力が迸る。
 すると廊下の壁が突如として浮かび上がり、道を塞ぎながらあたかも行き止まりのような風景を作り出した。

 そして遅れながらも階段を登り切った怪物は行き止まりの壁を見た後、西側へ続く廊下に目を向かい始める。
 そうした怪物の動向を魔力感知で探っていたクビアは、走りながらも口元を微笑ませた。

「やっぱりぃ、私達みたいに魔力を感じ取れるわけではないみたいねぇ」

 今まで逃げながらも観察し続けていたクビアは、魔人や魔族のように怪物ベイガイルが魔力を感知していない事を悟る。
 故に魔力で作り出した幻影の壁を実物だと認識し、別の方角へ走り出した事を察知していた。

 そして追跡を逃れた好機を逃さず、クビアは目指すべき南西の部屋まで走り続ける。

「南西のぉ、一番奥ぅ――……ここ、よねぇ!?」

 クビアは南西側を目指しながら廊下を曲がり、その廊下の行き止まりに辿り着く。
 そして周囲を探りながら扉がある部屋を目撃し、その扉に手を掛けながらも鍵が掛けられている事を察すると、魔力で強化した身体能力で扉を蹴破った。

 更に蹴破った扉を踏み付けながら、クビアは室内に入る。
 そこは本棚の置かれた書斎に見えたが、それに構わずクビアは室内を急ぎながら捜索し始めた。

「金庫ぉ、金庫って何処よぉ!」

 暗い室内に対してクビアは右手に持つ扇子の先に炎を作り出し、焦る様子を見せながら周囲を探る。
 しかし壁一面に本が並べられている室内に金庫らしいモノは置かれておらず、クビアは焦りながらも必死に思考を巡らせた。

「金庫が無いわよぉ……。ここの部屋じゃないのぉ……!?」

 金庫の無い部屋に入ったのだと考えたクビアは、別の部屋へ入ろうと廊下へ出ようとする。
 しかしその時、廊下の奥から迫る悪寒と嫌悪感が増した事を感知し、そのまま廊下を出ずに室内の壁へ紙札を張り付けながら蹴とばした扉を幻影で作り出した。

 そして幻影の扉越しに、嫌悪する表情を浮かべて廊下に響く呻き声を聞く。

「――……ニグゥ……。ウマイ……ニグゥ……!!」

「……さっきの音でぇ、呼び寄せちゃったかしらねぇ……」

 自身が蹴破った扉の倒れる音を思い出しながら、暗闇に閉ざされている廊下の先に怪物が来ている事をクビアは察する。
 そして閉ざされた廊下と行き止まりの部屋から出て行けば、奴隷の契約書も見つからないまま怪物に捕食されることをクビアは予測できてしまった。

 それでもクビアはある事を考え、幻影の扉から離れて室内へ戻る。
 そして訝し気な視線で周囲を見回し、自身の考えを呟いた。

「……そうよねぇ。見える場所に金庫なんか置いてたらぁ、それこそ盗んでくださいと言わんばかりよねぇ……。……何処に隠してるのかしらぁ」

 クビアは奴隷の契約書が目に見える金庫かたちでは無い事を考えながら、廊下に出られない現状でやれるだけの事をする。
 壁側に設けられている本棚の奥や絨毯の引かれた床を注意深く観察するクビアは、室外から響き聞こえる怪物の声に焦りながらも金庫を探し続けた。

 そしてある本棚を目にして幾つかの本を抜くと、その奥に壁の色合いとは異なるモノが在る事を察する。
 その部分の本を抜き取りながら奥を確認したクビアは、安堵の息を漏らしながら金庫に手を伸ばした。

「あったぁ。これで、契約書を取れば――……あっ」

 金庫の小扉に手を伸ばした後、クビアは安堵した表情を思わず強張らせる。
 それは金庫に設けられている数字の回転錠であり、それを見たクビアは苦悩の表情を見せた。

「……金庫を開ける番号、聞いてないわよぉ……」

 金庫の暗証番号が分からず、クビアは溜息を漏らしながら試しに回転錠の数字を回す。
 一通り回しながらも鍵が開けられる様子が無い為、クビアは強行策を選んだ。

「もぉ、金庫を破壊するしかないわねぇ……。……金庫これは鉄みたいだしぃ、焼き切れるでしょうけどぉ……。……問題はぁ、怪物アレよねぇ」

 小声で呟くクビアは、外から聞こえる怪物の呻き声が先程より近くなっているのに気付く。
 更に探している相手クビアが何処かの部屋に隠れている事を察しているのか、別の部屋を閉ざしていた扉を破壊して中を探る怪物の動き方をしていた。

 この状況で部屋に金庫を焼き切るような音を出せば、間違いなく怪物はこの部屋に押し寄せる。
 そして入り口を防がれた挙句に室内に侵入されれば、契約書を持ち出し奴隷契約を解除するという目的を果たせない事を察していた。

「……やるしか、ないのかしらねぇ」

 クビアは必死に思考を巡らせ、金庫内の契約書を持つ出し怪物を避ける手段を考える。
 そして苦慮しながらも一つの方法へ辿り着き、胸元から四枚の紙札を取り出した。

 それからすぐ、クビアの居る部屋から凄まじい轟音が鳴り響く。
 それを聞いた怪物は音を聞き分け、廊下の壁を削り這いながら音の響く部屋の壁を破壊した。

 そして顔を入れて赤い目を泥の隙間から見せる怪物は、本棚の敷かれた壁際に立つクビアの姿を確認する。 

「――……ニグゥッ!!」

 クビアに対して泥の左腕を伸ばした怪物は、クビアが立つ壁際を泥で塗りたくるように衝突させる。
 それによりクビアを捕らえた事を確信したようにニヤける怪物だったが、着き込んだ壁際を見ながら驚きを浮かべた。

「……ァレ……?」

 怪物は泥から伝わる感触から、クビアの魔力が取り込めていない事を察する。
 そして泥の手を壁から退かした後、怪物は驚くべき光景を目にした。

 それはクビアが健在のまま存在し、更に崩し倒したはずの本棚などが無事である様子を見せている。
 何が起こっているか分からぬ怪物は、それから何度もクビアに向けて泥の腕を直撃させた。

 しかしクビアは泥の手をすり抜けるようにその姿を見せ、怪物は不可解な状況に困惑する。
 そして赤い火花を見せる本棚の前に立つクビアは、開け放たれた金庫から契約書を受け取りながら口元を微笑ませた。

『――……残念ねぇ、お馬鹿さんぅ』

「ァア……?」

 そうした様子を見せるクビアだったが、その声は何処か遠く、更にその姿と風景が霞むように揺れる。
 そして今まで見えていたクビアと本棚の光景が一瞬で消え失せた後、侵入された部屋より奥に設けられた廊下の壁を通り抜ける何かが、垂れる泥を跳び避けて怪物の背後を通り抜けた。

「!」

「――……じゃあねぇ、お馬鹿さぁん!」

 そうした声を向けるクビアは、再び廊下を疾走しながら左手に持つ書類に目を通す。
 そして自分とエアハルトの名前が書かれた奴隷契の約書を探し出すと、そのまま階下を目指して走り続けた。

 クビアがこの窮地を脱した理由は、怪物が破壊した部屋の外壁。
 そこには二枚の紙札が張られており、それぞれに別の効力を果たしていた。
 
 まずクビアは、取り出した四枚の紙札から二枚を自身が居る部屋に貼り付ける。
 そして三枚目の紙札を廊下側の扉に貼り付けて幻影の壁を作り出し、四枚目の紙札は幻影の壁越しから手前の扉に貼り付けた。

 そこで自室と隣室に貼り付けた紙札を経由し、クビアは自分自身が居る部屋の全体像をそのまま隣室に幻影として映し出す。
 それから別の紙札を取り出して金庫に貼り付け、幻影を映し出す部屋が攻撃されている間に鍵部分を焼き切り、幻影で作り出した扉と壁を通り抜けながら廊下へ出ると、そのまま契約書を手に持ち怪物の背後を走り抜けたのだ。

 幻影の魔術を使用した巧妙な室内トリックに嵌った怪物は、クビアを追う為に廊下へ出て行く。
 そして追うように廊下を曲がりながらも、新たに作られた幻影の壁によりその姿を見失った。

 しかし怪物は、それから奇妙な動きを見せる。
 まるで捕食できずに自分を翻弄するクビアのあざけりに怒りを抱く様子を見せながら、低い呻き声を響かせた。

「……ヨクモォ……ヨクモワタシヲ、バカニシヤガッテェォ……ッ!!」

 今まで発していた呻き声が次第に変化を遂げ、確かな意思が宿り始める。
 そして怪物の泥が更に蠢きを高め、その声と連動しながら奇妙な様子を起こし始めた。

 黒い泥は廊下で少しずつ縮まり、依り代としている肉体ベイガイルに凝縮するように集まり始める。
 それと同時に唸りを強めた怪物の咆哮が、城内に響き渡った。

「――……ォオオオ……ッ!! オォオオオ――……ッ!!」

 怪物は凄まじい咆哮を上げ、その叫びが階段を降り始めるクビアにも届く。
 それと同時にクビアは悪寒を強め、目を見開きながら階段を飛び降りるように駆け下り始めた。

「……何よぉ、この感じぃ……。……さっきよりぃ、もっとヤバい感じがするわぁ……!!」

 クビアは怪物の変化を魔力感知で感じ取り、異変が起きた事に気付く。
 しかしそれを確認する為に戻る気は無く、契約書を手にしながら会場を目指した。

 一方で怪物側も、クビアが予想するような変化が迎えられる。
 その変化は十五メートル近くに膨れ上がっていた大きな泥の塊が、その十分の一程に縮まりながら人と同じ姿を模っていた。

 その姿となった怪物は、人の姿で床を見下ろしながら呟く。

「……許さない……ッ!!」

 そう述べた後、怪物は右拳を握りながら大きく振り抜き、右拳を床へ激突させる。
 すると廊下が叩き砕かれ、一気に一階まで降りていたクビアは悪寒を強めながら必死に走った。

 しかし次の瞬間、クビアが走る廊下の天井が突如として崩れ落ちる。
 その瓦礫に押し潰されないように飛び退いたクビアは、表情を歪めながら呟いた。

「……ちょっとぉ、なんなの――……ッ!」

 埃が舞う廊下を見るクビアは、瓦礫の上に立つ一つの人影を目にする。
 その人物の全身が見えた時、クビアは表情を険しくさせた。

 そこに現れたのは、黒い泥が依り代としていた共和王国の外務大臣ベイガイル。
 しかしその姿は大きく変貌しており、背中には元々あった蝙蝠の翼を巨大が適度に合う形となり、頭部には二本の黒い角が生えている。
 更に全身は人の肌とは異なる黒色に染められており、人の姿でありながらも一目でそれが異形である事を察するしかなかった。

 クビアは悪い意味で状況が変化した事を察し、契約書を丸めて胸元に入れた後、紙札を左手に取り出しながら右手の扇子を広げる。
 そのクビアと相対するように、ベイガイルの顔をした何かが唸り声を声を向けた。

「……私を馬鹿にするモノは、誰であろうと絶対に許さんぞぉおオオオオオオッ!!」

「ッ!!」

 その怒りとも言うべき咆哮が上がり、周囲の壁や床に亀裂を走らせる。
 それと同時に放たれる強い悪寒を感じ取りながら、クビアは逃げられない事を悟り怪物と対峙する事を選んだ。

 こうしてクビアは自分達の奴隷契約書を確保しながらも、追跡している怪物は新たな進化を迎える。
 その変貌した姿は、まるで未来のアルトリアが悪魔の種により悪魔化した様子を、更に醜悪にした光景モノとなっていた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!

アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。 「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」 王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。 背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。 受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ! そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた! すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!? ※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。 ※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。 ※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

やはり婚約破棄ですか…あら?ヒロインはどこかしら?

桜梅花 空木
ファンタジー
「アリソン嬢、婚約破棄をしていただけませんか?」 やはり避けられなかった。頑張ったのですがね…。 婚姻発表をする予定だった社交会での婚約破棄。所詮私は悪役令嬢。目の前にいるであろう第2王子にせめて笑顔で挨拶しようと顔を上げる。 あら?王子様に騎士様など攻略メンバーは勢揃い…。けどヒロインが見当たらないわ……?

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

処理中です...