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螺旋編 五章:螺旋の戦争
必殺の活路
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アズマ国に所属し、五百年以上前から七大聖人を続ける『茶』のナニガシ。
彼が伝え広めた『当理流』と呼ばれる兵法は、アズマ国の武芸者達に現在でも伝えられている。
鍛錬し様々な動きを可能としながら武器を用いる基本の型を『表』、その基本を一定水準まで極めると『気術』を用いた型として『裏』を教えられ、五百年間に渡ってその技術は衰えるどころか進化した形でアズマ国の技術となっていた。
そして『当理流』には、『奥義』と称される技も存在している。
『気術』と呼ばれる技法は、基本的に気力を自身の身体に纏い武器にも付与する事で、爆発的に身体能力と武器の破壊力を増し、強力な敵と対峙する為に用いられる事が多い。
しかしその反面、魔法や魔術と呼ばれる技術とは異なり、距離の開いた相手や広範囲の敵に対しては射程距離と殲滅力が低く、人間同士の戦争では魔法や魔導兵器に一歩遅れると外部の者達は印象を抱いていた。
故にアズマ国の当理流は他国では印象が弱く、広く魔法を伝えるホルツヴァーグ魔導国やフラムブルグ宗教国、そして機械技術が優れた旧ルクソード皇国では知名度が低い。
それに対して『茶』のナニガシも過去の大戦や天変地異での戦いを経験し、それを克服する為の『奥義』を編み出した。
それが『表』と『裏』に続く、『空《そら》』の奥義。
空に浮かぶ『日』『月』『星』『雲』『雨』の五つを当理流術の型として振り分け、それを五人の弟子に伝えた『茶』のナニガシはそれぞれに流派を設けさせた。
それが長い年月を懸けて精練され、それぞれの流派で独自の技を生み出し昇華される。
拾われたケイルが師匠から学んだのは、『月』の流派。
刀身から放たれる気力を空に浮かぶ『月』に見立てて強力で巨大な斬撃を繰り出し、巨大な敵や大量の敵を一気呵成に殲滅するのが『月』の当理流だった。
しかしその威力に比例するように膨大な気力を消費してしまう為、生半可な気力量を持つ者が放てば一撃で気を失ってしまうという弱点もある。
故に『奥義』は、気力量の多い聖人とそれに準ずる者達にしか使えない。
聖人に進化する前のケイルもその類に漏れず、奥義である『月の型』を習いながらも極力の使用は避けていた。
そうして自らを縛っていたケイルが、『月の型』の使用に踏み切る。
硬い装甲と結界に覆われる巨人型に対して気力《オーラ》を通わせた斬撃が通じない以上、それ以上の破壊力がある奥義を使うしか現在の状況を覆す事は出来ないと、ケイル自身で判断した。
「――……トーリ流術、月の型。『望月』」
左腰から再び魔剣を抜刀したケイルは、巨人型の頭上まで跳び縦割りをするように剣を振り下ろす。
剣から放たれる気力《オーラ》が巨大な斬撃となり、巨人型の脳天を割り砕くように激突した。
その斬撃は結界を突破し、頭部の装甲に強い衝撃と傷を与える。
叩き潰された巨人型は頭から突っ込むように地面へ叩きつけられ、その下に居た他の魔導人形達を圧し潰すように巻き込んだ。
ケイルは再び身を翻しながら屋根に着地し、叩き付けた巨人型を見下ろす。
しかし巨人型は腕を使い上半身を起こし、立ち上がる様子を見せていた。
「……チッ。やっぱ内部を破壊するしかないか」
ケイルは舌打ちをしながらも、息を僅かに乱して額に汗を浮かべる。
気力の消耗が激しい奥義を連発しているにも関わらず、巨人型の硬い装甲を斬るまでには至れない。
巨人型が纏っている結界そのものが強力であり、それを突破する為に気力の斬撃が結界に触れると同時に、威力が落ちてしまうのが原因だった。
それを推察しているケイルは、更に強い奥義を使う事を考える。
しかしそれは威力と比例する膨大な気力を使ってしまう為、舌打ちをして渋る様子も見せていた。
「……仕方ない。溜めは長いが……」
諦め混じりの嘆息を漏らすケイルは、右手に持つ魔剣を再び鞘に収めて体内の気力を練り上げる。
そして立ち上がる最中だった巨人型が中腰のまま、変形し車輪の付いた足を駆動させて勢い付いた突撃を始めた。
「!」
『――……』
突撃して来る巨人型に対して、ケイルは眉を顰めながら視線を左に流す。
周囲の建物は魔導人形の攻撃で倒壊し、逃げ場の無いケイルは否応なく左へ跳んで建物から離れた。
離れた建物に巨人型は突撃し、倒壊していく。
そして舞い散る破片や瓦礫を空中で跳び避け、更に踏み台にしながらケイルは離れた地面へ着地に成功した。
しかしその下では四足型と球体型が待ち受け、一斉にケイルへ襲い掛かる。
周囲を囲むように四足型が凄まじい速さで駆けながら顎と歯を振動させてその牙を迫らせ、それを躊躇無く巻き込む射線で球体型は魔弾と魔砲を放つ手と腕を向けた。
ケイルは飛び掛かる四足型を抜刀した魔剣で切り裂き、それに合わせて発砲した球体型の魔弾と魔砲を跳び避ける。
走りながら前方を塞ぎ追い付く魔導人形も斬り裂くと、次の建物群を目指してケイルは走った。
しかしその意図を察したのか、魔導人形達はケイルが進む先の建物を次々と砲撃で破壊していく。
その光景に舌打ちするケイルは、背後の振動で巨人型も追って来ている事に気付いた。
「ウザってぇな……!!」
魔導人形の連携にケイルは悪態を吐き、進路を変えて別の建物群を目指す。
しかしそちら側も破壊され、ケイルは目の前を阻む魔導人形を破壊しながら考えた。
「――……どっか一辺に、奴等を集めて叩ければ……」
そう考えながらも、それを実行できる方法をケイルは思い付かない。
この都市はケイルにとって未知な部分が多く、地理に詳しくなかった。
地形を利用しようにも利用できる場所すら分からず、ケイルはただ目の前に立つ魔導人形達を斬り裂くしかない状況でもある。
そうした状況の中で、ケイルはある出来事を思い出していた。
それはアズマ国に渡り、修練を受けていた頃。
十歳になったケイルが『表』の修練を終え『裏』の修練に入る時、師匠となった男にこんな話をされていた。
『――……軽流、最も強い剣の振り方を知っているか?』
『え? ……そんなの、こう……じゃないですか?』
『ふむ。両手で掴み、上から振り下ろす。それが強いと思うか?』
『違うんですか?』
『確かに、そう振られる剣は強い。例え兜を身に着けていたとしても、脳天を叩き割れば兜は完全に割れずとも、中身は殺せるであろうな』
『だったら……』
『だが、その振り方は大振り過ぎて隙が出来る。もしお前が儂に対してそう振れば、その隙を逃さずに儂は斬り返すだろう』
『いや、だって。師匠は化物みたいに強いし……』
『そういう話をしておるのではない』
『じゃあ、強い剣の振り方ってどうやるんですか?』
『すぐ答えを求めたがるのは、お前の悪い癖だ。自分で考えてみろ』
『……』
『……しょうがない。軽流、覚えておけ。最も強い剣の振り方は――……』
ケイルの師匠は目の前で、強い剣の振り方を教える。
それを見た幼い頃のケイルは、眉を顰めて怪訝そうな表情を浮かべた。
過去の記憶を思い出したケイルは、横から狙い撃ってくる球体型の魔弾を避けながら跳び走る。
瓦礫を飛び越えながら射線を外したケイルは、今いる場所の近くにある物を思い出した。
「――……そうか。確か、この近くだったな……」
ケイルは何かを閃き、視線を向けた先へ走り出す。
それを追う魔導人形達を切り払いながら、ケイルは瓦礫の山となっているとある場所に辿り着いた。
そして周囲に残り地面へ突き刺さっている鉄骨を利用し、ケイルはそれを踏み台にして跳ぶ。
それと同時に後ろを振り返ると、巨人型が足の車輪を回しながらケイルに迫っていた。
それを中空で見たケイルは、口元を微笑ませながら左腰に戻している魔剣の柄に右手を運び、技を瓦礫の地面へ放つ。
「――……トーリ流術、裏の型。『籠断刀』」
『――……!』
ケイルは気力を纏わせた魔剣を素早く引き抜き、下の瓦礫に向けて四つの斬撃を放つ。
四つの刃が瓦礫を菱形に大きく斬ると、足を踏み入れた巨人型の下に敷かれた瓦礫が突如として崩落を始めた。
その崩落に巻き込まれ足を踏み外し落下した巨人型は、下に広がっていた地下の穴に入り込む。
その場所は地下施設の入り口があった場所であり、巨人型が出て来た場所でもあった。
『――……』
巨人型は上を見上げ、赤い単眼を光らせる。
その視線の先には、中空から落下したケイルが右手に魔剣を持ったまま落下していた。
それを見た巨人型は落下しながら手を伸ばし、ケイルを掴み潰そうとする。
それを防ぐようにケイルは小剣を左手で引き抜き、奥義で弾いた。
「――……トーリ流術、月の型。『小望月』」
赤い小剣も夥しい量の気力を纏い、巨大な斬撃となって巨人型の両腕を弾く。
その勢いで落下速度が速まった巨人型は、底である地下の床へ叩き付けられた。
そしてケイルは落下しながら両手に大小の剣を持ち、巨人型に切っ先を向ける。
両方の剣は気力を纏い、太く巨大な白い剣となって巨人型の結界に衝突した。
気力の剣は結界を突破し、硬い胸部の装甲に突き立てられる。
更に自身の体重と落下速度を利用し威力を強めたケイルの切っ先は、装甲の更に深くまで突き刺さった。
『――……!!』
「……師匠の言う通りだった。最も強い剣の振り方は、『突』だ!」
ケイルは深く突き刺さった気力の剣を握り回し、腕を動かす。
すると深く突き入れられた気力の刃が巨人型の装甲を抉り斬り、全身をバラバラに斬り裂いた。
「――……トーリ流術、月の型。『十六夜』」
ケイルは身を翻しながら着地し、瓦礫の上に立つ。
そしてバラバラにした巨人型を背にして、二つの剣を鞘に戻した。
彼が伝え広めた『当理流』と呼ばれる兵法は、アズマ国の武芸者達に現在でも伝えられている。
鍛錬し様々な動きを可能としながら武器を用いる基本の型を『表』、その基本を一定水準まで極めると『気術』を用いた型として『裏』を教えられ、五百年間に渡ってその技術は衰えるどころか進化した形でアズマ国の技術となっていた。
そして『当理流』には、『奥義』と称される技も存在している。
『気術』と呼ばれる技法は、基本的に気力を自身の身体に纏い武器にも付与する事で、爆発的に身体能力と武器の破壊力を増し、強力な敵と対峙する為に用いられる事が多い。
しかしその反面、魔法や魔術と呼ばれる技術とは異なり、距離の開いた相手や広範囲の敵に対しては射程距離と殲滅力が低く、人間同士の戦争では魔法や魔導兵器に一歩遅れると外部の者達は印象を抱いていた。
故にアズマ国の当理流は他国では印象が弱く、広く魔法を伝えるホルツヴァーグ魔導国やフラムブルグ宗教国、そして機械技術が優れた旧ルクソード皇国では知名度が低い。
それに対して『茶』のナニガシも過去の大戦や天変地異での戦いを経験し、それを克服する為の『奥義』を編み出した。
それが『表』と『裏』に続く、『空《そら》』の奥義。
空に浮かぶ『日』『月』『星』『雲』『雨』の五つを当理流術の型として振り分け、それを五人の弟子に伝えた『茶』のナニガシはそれぞれに流派を設けさせた。
それが長い年月を懸けて精練され、それぞれの流派で独自の技を生み出し昇華される。
拾われたケイルが師匠から学んだのは、『月』の流派。
刀身から放たれる気力を空に浮かぶ『月』に見立てて強力で巨大な斬撃を繰り出し、巨大な敵や大量の敵を一気呵成に殲滅するのが『月』の当理流だった。
しかしその威力に比例するように膨大な気力を消費してしまう為、生半可な気力量を持つ者が放てば一撃で気を失ってしまうという弱点もある。
故に『奥義』は、気力量の多い聖人とそれに準ずる者達にしか使えない。
聖人に進化する前のケイルもその類に漏れず、奥義である『月の型』を習いながらも極力の使用は避けていた。
そうして自らを縛っていたケイルが、『月の型』の使用に踏み切る。
硬い装甲と結界に覆われる巨人型に対して気力《オーラ》を通わせた斬撃が通じない以上、それ以上の破壊力がある奥義を使うしか現在の状況を覆す事は出来ないと、ケイル自身で判断した。
「――……トーリ流術、月の型。『望月』」
左腰から再び魔剣を抜刀したケイルは、巨人型の頭上まで跳び縦割りをするように剣を振り下ろす。
剣から放たれる気力《オーラ》が巨大な斬撃となり、巨人型の脳天を割り砕くように激突した。
その斬撃は結界を突破し、頭部の装甲に強い衝撃と傷を与える。
叩き潰された巨人型は頭から突っ込むように地面へ叩きつけられ、その下に居た他の魔導人形達を圧し潰すように巻き込んだ。
ケイルは再び身を翻しながら屋根に着地し、叩き付けた巨人型を見下ろす。
しかし巨人型は腕を使い上半身を起こし、立ち上がる様子を見せていた。
「……チッ。やっぱ内部を破壊するしかないか」
ケイルは舌打ちをしながらも、息を僅かに乱して額に汗を浮かべる。
気力の消耗が激しい奥義を連発しているにも関わらず、巨人型の硬い装甲を斬るまでには至れない。
巨人型が纏っている結界そのものが強力であり、それを突破する為に気力の斬撃が結界に触れると同時に、威力が落ちてしまうのが原因だった。
それを推察しているケイルは、更に強い奥義を使う事を考える。
しかしそれは威力と比例する膨大な気力を使ってしまう為、舌打ちをして渋る様子も見せていた。
「……仕方ない。溜めは長いが……」
諦め混じりの嘆息を漏らすケイルは、右手に持つ魔剣を再び鞘に収めて体内の気力を練り上げる。
そして立ち上がる最中だった巨人型が中腰のまま、変形し車輪の付いた足を駆動させて勢い付いた突撃を始めた。
「!」
『――……』
突撃して来る巨人型に対して、ケイルは眉を顰めながら視線を左に流す。
周囲の建物は魔導人形の攻撃で倒壊し、逃げ場の無いケイルは否応なく左へ跳んで建物から離れた。
離れた建物に巨人型は突撃し、倒壊していく。
そして舞い散る破片や瓦礫を空中で跳び避け、更に踏み台にしながらケイルは離れた地面へ着地に成功した。
しかしその下では四足型と球体型が待ち受け、一斉にケイルへ襲い掛かる。
周囲を囲むように四足型が凄まじい速さで駆けながら顎と歯を振動させてその牙を迫らせ、それを躊躇無く巻き込む射線で球体型は魔弾と魔砲を放つ手と腕を向けた。
ケイルは飛び掛かる四足型を抜刀した魔剣で切り裂き、それに合わせて発砲した球体型の魔弾と魔砲を跳び避ける。
走りながら前方を塞ぎ追い付く魔導人形も斬り裂くと、次の建物群を目指してケイルは走った。
しかしその意図を察したのか、魔導人形達はケイルが進む先の建物を次々と砲撃で破壊していく。
その光景に舌打ちするケイルは、背後の振動で巨人型も追って来ている事に気付いた。
「ウザってぇな……!!」
魔導人形の連携にケイルは悪態を吐き、進路を変えて別の建物群を目指す。
しかしそちら側も破壊され、ケイルは目の前を阻む魔導人形を破壊しながら考えた。
「――……どっか一辺に、奴等を集めて叩ければ……」
そう考えながらも、それを実行できる方法をケイルは思い付かない。
この都市はケイルにとって未知な部分が多く、地理に詳しくなかった。
地形を利用しようにも利用できる場所すら分からず、ケイルはただ目の前に立つ魔導人形達を斬り裂くしかない状況でもある。
そうした状況の中で、ケイルはある出来事を思い出していた。
それはアズマ国に渡り、修練を受けていた頃。
十歳になったケイルが『表』の修練を終え『裏』の修練に入る時、師匠となった男にこんな話をされていた。
『――……軽流、最も強い剣の振り方を知っているか?』
『え? ……そんなの、こう……じゃないですか?』
『ふむ。両手で掴み、上から振り下ろす。それが強いと思うか?』
『違うんですか?』
『確かに、そう振られる剣は強い。例え兜を身に着けていたとしても、脳天を叩き割れば兜は完全に割れずとも、中身は殺せるであろうな』
『だったら……』
『だが、その振り方は大振り過ぎて隙が出来る。もしお前が儂に対してそう振れば、その隙を逃さずに儂は斬り返すだろう』
『いや、だって。師匠は化物みたいに強いし……』
『そういう話をしておるのではない』
『じゃあ、強い剣の振り方ってどうやるんですか?』
『すぐ答えを求めたがるのは、お前の悪い癖だ。自分で考えてみろ』
『……』
『……しょうがない。軽流、覚えておけ。最も強い剣の振り方は――……』
ケイルの師匠は目の前で、強い剣の振り方を教える。
それを見た幼い頃のケイルは、眉を顰めて怪訝そうな表情を浮かべた。
過去の記憶を思い出したケイルは、横から狙い撃ってくる球体型の魔弾を避けながら跳び走る。
瓦礫を飛び越えながら射線を外したケイルは、今いる場所の近くにある物を思い出した。
「――……そうか。確か、この近くだったな……」
ケイルは何かを閃き、視線を向けた先へ走り出す。
それを追う魔導人形達を切り払いながら、ケイルは瓦礫の山となっているとある場所に辿り着いた。
そして周囲に残り地面へ突き刺さっている鉄骨を利用し、ケイルはそれを踏み台にして跳ぶ。
それと同時に後ろを振り返ると、巨人型が足の車輪を回しながらケイルに迫っていた。
それを中空で見たケイルは、口元を微笑ませながら左腰に戻している魔剣の柄に右手を運び、技を瓦礫の地面へ放つ。
「――……トーリ流術、裏の型。『籠断刀』」
『――……!』
ケイルは気力を纏わせた魔剣を素早く引き抜き、下の瓦礫に向けて四つの斬撃を放つ。
四つの刃が瓦礫を菱形に大きく斬ると、足を踏み入れた巨人型の下に敷かれた瓦礫が突如として崩落を始めた。
その崩落に巻き込まれ足を踏み外し落下した巨人型は、下に広がっていた地下の穴に入り込む。
その場所は地下施設の入り口があった場所であり、巨人型が出て来た場所でもあった。
『――……』
巨人型は上を見上げ、赤い単眼を光らせる。
その視線の先には、中空から落下したケイルが右手に魔剣を持ったまま落下していた。
それを見た巨人型は落下しながら手を伸ばし、ケイルを掴み潰そうとする。
それを防ぐようにケイルは小剣を左手で引き抜き、奥義で弾いた。
「――……トーリ流術、月の型。『小望月』」
赤い小剣も夥しい量の気力を纏い、巨大な斬撃となって巨人型の両腕を弾く。
その勢いで落下速度が速まった巨人型は、底である地下の床へ叩き付けられた。
そしてケイルは落下しながら両手に大小の剣を持ち、巨人型に切っ先を向ける。
両方の剣は気力を纏い、太く巨大な白い剣となって巨人型の結界に衝突した。
気力の剣は結界を突破し、硬い胸部の装甲に突き立てられる。
更に自身の体重と落下速度を利用し威力を強めたケイルの切っ先は、装甲の更に深くまで突き刺さった。
『――……!!』
「……師匠の言う通りだった。最も強い剣の振り方は、『突』だ!」
ケイルは深く突き刺さった気力の剣を握り回し、腕を動かす。
すると深く突き入れられた気力の刃が巨人型の装甲を抉り斬り、全身をバラバラに斬り裂いた。
「――……トーリ流術、月の型。『十六夜』」
ケイルは身を翻しながら着地し、瓦礫の上に立つ。
そしてバラバラにした巨人型を背にして、二つの剣を鞘に戻した。
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