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南国編 三章:マシラの秘術
親子の絵
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アレクサンデル王子は父親の部屋を訪れ、
アリアが居ることに無言で驚きながら、
その傍に居るゴズヴァールを見て少し遠回りをしつつ、
アリアに歩み寄って来た。
「元気にしてた?」
「……」
「そう、良かったわ。……貴方、ずっとここに居たの?」
「……」
「そう」
頷く王子の様子を見たアリアは、
その子の父親であるマシラ王を見た。
王子も父親の傍に近付き、
心配そうに父親の顔を見た。
「貴方のお父さん。死者の世界に行ったまま、戻って来れないみたいよ」
「……」
そう言ったアリアの言葉に王子は頷いた。
それを見たアリアは目を僅かに見開き、
驚きながらも優しく静かに聞いた。
「お父さんが向こうに行ったままなのを、知ってたの?」
「……」
「そう、知ってたのね。……まさか、もう秘術魔法を伝承してたの?」
「?」
「お父さんから、とても大事な何かを、習わなかった?」
「……」
アリアの質問に王子は頷いた。
それを見たアリアは驚きながらも、
苦々しい表情を浮かべてマシラ王を睨んだ。
「……こんな子供に、そんな危険な秘術を教えるなんて……」
幼く判断能力の無い子供に対して、
危険な秘術を教え伝えた事に、
アリアは怒りの感情が沸いた。
その感情が沸いた直後、
アリアに脳裏に僅かな閃きが浮んだ。
「……ちょっと待って。どうして子供に……。明らかに早過ぎるわ。もっと成長してから、血系秘術は教えるモノのはずなのに……」
思考するアリアは自身の脳内で考えを進めていく。
そしてとある結論に辿り着いたアリアは、
マシラ王と王子を見ながら呟いた。
「……そうか。そういう事なのね」
「?」
「だからマシラ王は、こんなに早く子供に……。いいえ、そもそもマシラ血族は、そうやって早い時期に子供に秘術を継承させて……」
「……」
「そうとしか考えられない。でもそれじゃあ、なんでマシラ王は戻って来れなく……。ちょっと、ゴズヴァール!」
思考を進め呟くアリアは、
突如として顔を伏せるゴズヴァールに怒鳴り呼んだ。
「……なんだ?」
「ゴズヴァール、王子が誘拐された時期はいつ頃!?」
「……二ヶ月前だ」
「やっぱり、そういうことね」
「……どういう事だ?」
「マシラ王が昏睡したのも、王子が誘拐された後じゃないの?」
「……そうだ」
「そう。でも、それならなんで王子が誘拐された後に……」
「何を、気付いた?」
「王子が誘拐された後、なんで王様は秘術魔法を使ったの?」
「……それは、どういうことだ?」
「使ったのよ。王子を誘拐された後に、王様は秘術魔法を。使う理由が何かあったの?」
「……馬鹿な。あの時に、秘術を使うような依頼も要請も、無かったはずだ」
「でも現に、マシラ王は秘術を使って、あちらの世界に行ったまま戻ってきてない」
アリアは疑問を吐き捨てるように告げると、
聞いているゴズヴァール自身も把握していない事態に、
目を泳がせながら思考を開始した。
そうして考える二人を他所に、王子がアリアの手を引いた。
「どうしたの?」
「……」
「こっちに来いってこと?」
「……」
頷くアレクサンドル王子に、
アリアは手を引かれるまま付いて行った。
それにゴズヴァールも気付き、付いて行く。
そして奥の部屋の扉を開けると、
王子の部屋と思しき子供部屋に入った。
そこには子供らしい物が置かれていたが、
アレクサンドル王子が駆けて手に取った物を、
再び戻って来た王子がアリア達に見せた。
それは、歳相応に子供らしい絵だった。
そこに書かれているのは、
男性と女性が子供を挟むように並び立ち、
手を繋いで並ぶ三人の姿。
「……貴方のお父さんと、お母さん?」
「……」
頷いた王子の答えを見たアリアは、
マシラ王の親子の絵だと理解した。
そしてアレクサンドル王子がそれを見せた理由に、
アリアは閃きと同時に気付いた。
「……そう。そういうことね」
「……」
「ゴズヴァール。聞きたい事があるわ」
「なんだ?」
「王子の母親。マシラ王の奥さんは?」
「マシラ王は結婚をしていない。しかし、恋仲の女官がいた。その女官が生んだのが、アレクサンドル王子だ」
「それで、その人は?」
「一年前に亡くなった。王子を産んだ後に病を患い、そのまま病に耐える体力が保てずに……」
「……確定ね」
「どういうことだ?」
「マシラ王が戻って来ない原因が、分かったってこと。そして、連れ戻す方法も分かったわよ」
「!?」
そう断言したアリアの言葉に、
ゴズヴァールは驚きながら言葉を失った。
そしてアリアはアレクサンドル王子と手を繋ぎ、
優しく尋ねるように聞いた。
「貴方のお父さんを、連れ戻したいの。協力してくれない?」
「……」
「大丈夫、お父さんは怒ったりしないわ。ううん、仮に怒ったとしても、私が逆に怒鳴って叱ってあげるわ。ね?」
「……」
「私、どうしても助けたい人がいるの。その人を助ける為に、貴方のお父さんと話す必要があるの。お願い。私に、貴方のお父さんを助けさせて」
そう優しく尋ねて説得するアリアに、
アレクサンドル王子はしばらく沈黙した後、小さく頷いた。
「ありがとう」
「……」
こうしてアリアは自身の為に、
マシラ王を死者の世界から呼び戻す為に、
アレクサンデル王子の協力を得たのだった。
アリアが居ることに無言で驚きながら、
その傍に居るゴズヴァールを見て少し遠回りをしつつ、
アリアに歩み寄って来た。
「元気にしてた?」
「……」
「そう、良かったわ。……貴方、ずっとここに居たの?」
「……」
「そう」
頷く王子の様子を見たアリアは、
その子の父親であるマシラ王を見た。
王子も父親の傍に近付き、
心配そうに父親の顔を見た。
「貴方のお父さん。死者の世界に行ったまま、戻って来れないみたいよ」
「……」
そう言ったアリアの言葉に王子は頷いた。
それを見たアリアは目を僅かに見開き、
驚きながらも優しく静かに聞いた。
「お父さんが向こうに行ったままなのを、知ってたの?」
「……」
「そう、知ってたのね。……まさか、もう秘術魔法を伝承してたの?」
「?」
「お父さんから、とても大事な何かを、習わなかった?」
「……」
アリアの質問に王子は頷いた。
それを見たアリアは驚きながらも、
苦々しい表情を浮かべてマシラ王を睨んだ。
「……こんな子供に、そんな危険な秘術を教えるなんて……」
幼く判断能力の無い子供に対して、
危険な秘術を教え伝えた事に、
アリアは怒りの感情が沸いた。
その感情が沸いた直後、
アリアに脳裏に僅かな閃きが浮んだ。
「……ちょっと待って。どうして子供に……。明らかに早過ぎるわ。もっと成長してから、血系秘術は教えるモノのはずなのに……」
思考するアリアは自身の脳内で考えを進めていく。
そしてとある結論に辿り着いたアリアは、
マシラ王と王子を見ながら呟いた。
「……そうか。そういう事なのね」
「?」
「だからマシラ王は、こんなに早く子供に……。いいえ、そもそもマシラ血族は、そうやって早い時期に子供に秘術を継承させて……」
「……」
「そうとしか考えられない。でもそれじゃあ、なんでマシラ王は戻って来れなく……。ちょっと、ゴズヴァール!」
思考を進め呟くアリアは、
突如として顔を伏せるゴズヴァールに怒鳴り呼んだ。
「……なんだ?」
「ゴズヴァール、王子が誘拐された時期はいつ頃!?」
「……二ヶ月前だ」
「やっぱり、そういうことね」
「……どういう事だ?」
「マシラ王が昏睡したのも、王子が誘拐された後じゃないの?」
「……そうだ」
「そう。でも、それならなんで王子が誘拐された後に……」
「何を、気付いた?」
「王子が誘拐された後、なんで王様は秘術魔法を使ったの?」
「……それは、どういうことだ?」
「使ったのよ。王子を誘拐された後に、王様は秘術魔法を。使う理由が何かあったの?」
「……馬鹿な。あの時に、秘術を使うような依頼も要請も、無かったはずだ」
「でも現に、マシラ王は秘術を使って、あちらの世界に行ったまま戻ってきてない」
アリアは疑問を吐き捨てるように告げると、
聞いているゴズヴァール自身も把握していない事態に、
目を泳がせながら思考を開始した。
そうして考える二人を他所に、王子がアリアの手を引いた。
「どうしたの?」
「……」
「こっちに来いってこと?」
「……」
頷くアレクサンドル王子に、
アリアは手を引かれるまま付いて行った。
それにゴズヴァールも気付き、付いて行く。
そして奥の部屋の扉を開けると、
王子の部屋と思しき子供部屋に入った。
そこには子供らしい物が置かれていたが、
アレクサンドル王子が駆けて手に取った物を、
再び戻って来た王子がアリア達に見せた。
それは、歳相応に子供らしい絵だった。
そこに書かれているのは、
男性と女性が子供を挟むように並び立ち、
手を繋いで並ぶ三人の姿。
「……貴方のお父さんと、お母さん?」
「……」
頷いた王子の答えを見たアリアは、
マシラ王の親子の絵だと理解した。
そしてアレクサンドル王子がそれを見せた理由に、
アリアは閃きと同時に気付いた。
「……そう。そういうことね」
「……」
「ゴズヴァール。聞きたい事があるわ」
「なんだ?」
「王子の母親。マシラ王の奥さんは?」
「マシラ王は結婚をしていない。しかし、恋仲の女官がいた。その女官が生んだのが、アレクサンドル王子だ」
「それで、その人は?」
「一年前に亡くなった。王子を産んだ後に病を患い、そのまま病に耐える体力が保てずに……」
「……確定ね」
「どういうことだ?」
「マシラ王が戻って来ない原因が、分かったってこと。そして、連れ戻す方法も分かったわよ」
「!?」
そう断言したアリアの言葉に、
ゴズヴァールは驚きながら言葉を失った。
そしてアリアはアレクサンドル王子と手を繋ぎ、
優しく尋ねるように聞いた。
「貴方のお父さんを、連れ戻したいの。協力してくれない?」
「……」
「大丈夫、お父さんは怒ったりしないわ。ううん、仮に怒ったとしても、私が逆に怒鳴って叱ってあげるわ。ね?」
「……」
「私、どうしても助けたい人がいるの。その人を助ける為に、貴方のお父さんと話す必要があるの。お願い。私に、貴方のお父さんを助けさせて」
そう優しく尋ねて説得するアリアに、
アレクサンドル王子はしばらく沈黙した後、小さく頷いた。
「ありがとう」
「……」
こうしてアリアは自身の為に、
マシラ王を死者の世界から呼び戻す為に、
アレクサンデル王子の協力を得たのだった。
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