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逃亡編 一章:帝国領脱出

鞄と服

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 定期船の乗船手続きを終え、港町の商店が立ち並ぶ場所までアリアとエリクは訪れた。
 幾つかアリアが商店内を覗きつつ何かを探すようにしているので、エリクはアリアに聞いた。

「何を、探しているんだ?」

「うーん。旅をする為の背負えるタイプの鞄が売られてる御店と、旅用の服を買える御店。あとは私と貴方用の装備に、最後は消耗品諸々と、野営する時に使う旅用のテントとかランプとか。そういう必需品が買える雑貨屋かな」

「そ、そんなに行くのか?」

「当たり前よ。二人旅になるんだからそれなりに荷物は必要になるでしょうし、割高だけど港町だからこそ集められる物は集めておいて、あとは一気に移動しちゃう方が良いからね」

「そうか。分かった」

「あっ、あそこ鞄で売ってるわね。行きましょ」

 幾つかの店に行く事を話すアリアに、エリクは何とか理解しようと聞きつつ、最終的にはアリアに判断を委ねた。
 旅用の丈夫な革鞄を売る店を見つけると、エリクが背負うのに丁度良い茶色で大型の皮革製を銀貨三十枚で購入。

 そして二人用に腰に巻ける革ポーチを、銀貨三十枚で購入した。

 更にアリアが首や肩から提げる鞄を銀貨二十枚で購入すると、その鞄を両者試すように背負い、次の店を探しに向かった。

「どう、エリク。歩く分にはそのリュック、邪魔ではない?」

「ああ、それほど邪魔ではない」

「じゃあ、戦闘になるとしたら?」

「……そうだな、相手次第だな」

「弱い相手ならそのまま、強い相手なら脱がなきゃダメか。分かったわ」

 そうして旅を想定する中で、咄嗟の事態に着けている鞄の確認をしつつ、次に旅用の服を扱う店を探した。
 二人が歩いている今の道に並ぶ店は、どれも旅人用に扱える品を用意した店であり、アリアは簡単に店を見つけて入っていく。
 服を扱う店の中をアリアは眺めながら、先にエリクの服を見繕おうとした。

「まずは、エリクの服ね」

「俺のか? 俺は別に、このままでも……」

「ダメ。旅路中はそのままでもいいけど、宿のある町や首都に寄る時にはある程度、人から見られても怪しまれない程度の服を用意しなくちゃ」

「このままでは、ダメか?」

「ダメ」

「……分かった」

「よろしい」

 エリクにも納得させたアリアは、店の中でエリクが着れる服を探した。
 何度も何度もエリクの前に服を持って行き、入りそうな服をエリクの体の正面に着け、店主に色々と話しながら相談して、数着のエリクの服が用意された。
 そしてその中の数着を選び、アリアは金貨を一枚払い、十数枚の銀貨をお釣りとして貰った。

 そしてその服をエリクの鞄に入れ、次はアリア自身の服を選んだ。

「うーん……。ここ、男物の服は多いけど、女物の服は少ないわね。……ねぇ、店主さん。女物の旅用の服とか扱っている御店、知ってます?」

「女物の旅行服かぁ。旅する女ってのも少ねぇから、大体どこも似たり寄ったりだと思うよ」

「そっか、そうよね。……じゃあ私も、旅路中は男物の服で良いかな。体のラインも隠せるし」

 店主に聞いたアリアは、女物の品揃えの薄さを納得し、結論として小柄な服を何着か購入した。
 二人が旅で使う外套《マント》は、そのまま黒布の外套を使う。
 しかし正体がバレた際の事も考え、アリアは茶色と白の布地を購入した。
 後日に二人分の外套として、着用して使えるように縫うらしい。
 そうして買った服をエリクの鞄に納めつつ、店主にお礼を言ったアリアは次の店を探した。

 次は装備品の購入。
 つまり魔物や魔獣、そして人間などと戦う際に必要となる武器と防具を売る場所を探し歩いた。

「エリク。貴方の武器は、その大剣だけ?」

「ああ。あと、胸の短剣は投擲にも使う」

「そういえば、前に投げてたわね。その大剣、状態はどうなの?」

「頑丈な鎧を着た相手を殴り潰す為のものだから、頑丈には出来ているな」

「そっか。じゃあ、しばらくはそのままね。その両手剣を失った時に使える、軽めのロングソードを、私が一本腰に下げておきましょうか。そうすれば、仮に貴方が武器を失っても、私が投げ渡す事ができるものね」

「そうか。任せる」

「防具も必要よね。エリクは胸当てと、肘と膝の部分しか無い軽装鎧なのね」

「大剣を振るうのに、重量鎧は邪魔だったからな」

「じゃあエリクには、頭を守る兜と、篭手を買いましょう。どうせなら鎧と膝と肘の金具も新調しちゃいましょう、ボロボロじゃない。盾は必要?」

「盾は要らないな。どうしても必要なら、大剣を盾代わりにする」

「そっか。じゃあ探しましょうか、武器屋と防具屋さん。後は雑貨屋ね」

「分かった」

 そうしてアリアとエリクは話しつつ、次の店を探して町中を歩いた。
 買い食いをして楽しそうに町を歩くアリアと、それに不思議と心に穏やかさを感じるエリクの買い物は、まだまだ続いた。
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