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逃亡編 一章:帝国領脱出
乗船手続き
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旅に必要な買い物を済ませる前に、港へ行き定期船に乗船する手続きを行う為に、アリアとエリクは港の方へ向かった。
大小様々な船が海が広がる港に着けられ、船乗りや漁師達が船の近くで、必要な作業を行っている姿が見える。
それを横目でエリクは見ている中で、アリアはその場に集う船乗りや漁師に聞き、南に向かう定期船の場所を聞いた。
「定期船なら、あっちの方にある白と青混じりの旗の船だよ」
「そうですか。教えて頂きありがとうございます」
「それより嬢ちゃん、可愛いね。良かったら今晩、一緒にどうだい?」
「ごめんなさい。後ろにいるお父さんが、許してくれないと思うので」
「へっ? あっ、そ、そっか。それじゃあ、な……」
誘う船乗りの言葉を受け流しつつ、後ろに居るエリクに意識を向けさせたアリアは、大柄で大剣を携えるエリクを父と呼んだ。
船乗りはそれを聞いてエリクを見ると、引き笑いをしながら下がりつつ作業に戻った。
それを見送ったエリクは、アリアに話し掛けて聞いた。
「どういうことだ?」
「よっぽどの馬鹿か無法者じゃない限り、父親の目の前で娘をナンパできる度胸がある人は、滅多にいないってこと」
「……よく分からないが、そうなのか」
「そうなの。だから旅の間は、相棒じゃなくて親子って事にしてると都合が良いのよ。それに、エリクの顔と体が大きいから、大抵の人は怯えちゃうのよ」
「そうか。それが助けになるなら、それでいい」
そんな会話をしつつ、定期船がある場所まで赴いた二人は、白と青が混ざる旗がある大型の船に近付き、そこで作業している若い船員に話し掛けた。
「お尋ねします。この船は南へ向かう定期船で、間違いありませんか?」
「ん? ああ、そうだよ。乗船希望かい?」
「はい。どちらに行けば乗船の手続きをできるか、お伺いしても?」
「だったら、あっちの建物の中で乗船者の受付してるから、そこで手続きすればいいぜ」
「ありがとうございます。助かりました」
「……それより、今晩は暇だったりは?」
「ごめんなさい。旅の為に、後ろの父と色々と用事を済ませますので」
「えっ、あっ。そ、そうか」
定期船の乗船手続きを行う場所を聞き出し、先程と同じようにナンパされるアリアは後ろに居るエリクを父と紹介して回避した。
若い船員は引き笑いながら作業へ戻り、エリクは納得したように頷いた。
「なるほどな」
「効果大有りでしょ。まともな神経した男なら、父親の前で娘をどうこうしようとは思わないわよ」
「まともじゃない神経の男がいたら?」
「その時は、そうね。しつこいようなら、ぶっ飛ばして構わないわ」
「分かった」
エリクの問いにアリアは答え、そういう事態になった時の事を予め伝えておく。
そんな事を話しつつ受付を行う建物に入り、アリアは受付を行っている中年女性へ話し、乗船手続きに必要な名前を書き、試しにエリクにも名前を書かせてみた。
エリクは教え通り、偽名の名前を受付用紙に書き、『アリス』と『エリオ』の偽名親子が、定期船に乗船できるように手続きが出来た。
そして乗船金額となる銀貨二十枚を渡し、乗る船の部屋鍵が付いた銅板と鉄鍵を受け取った。
乗船手続きを終えた二人は港を離れつつ、アリアは微笑みつつエリクに話した。
「明日の昼前に出発予定らしいから、明日は朝食を済ませてから宿を出て、船に乗りましょう」
「分かった」
「それじゃあ、次は買い物ね。歩く旅もきついけど、船旅もきついから、色々と用意しないと」
「そうなのか?」
「エリクって、船に乗るのは初めて?」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、船酔いの薬も多めに用意してもらえてるといいけれど……」
「船に乗るのに、薬が必要なのか?」
「実際に乗ってみなければ分からないけど、薬が必要な人もいるのよ。……私みたいに」
「ん?」
「何でもないわ。じゃあ、買い物に行くわよ!大きめの鞄も買って、エリクには持ってもらうからね。それじゃあ、行きましょう!」
「ああ、分かった」
そうしてエリクとアリアは、旅に必要な物を買う為に町の中央まで戻った。
そこでエリクは思わぬ時間を費やされてしまうことを、まだ知らなかった。
大小様々な船が海が広がる港に着けられ、船乗りや漁師達が船の近くで、必要な作業を行っている姿が見える。
それを横目でエリクは見ている中で、アリアはその場に集う船乗りや漁師に聞き、南に向かう定期船の場所を聞いた。
「定期船なら、あっちの方にある白と青混じりの旗の船だよ」
「そうですか。教えて頂きありがとうございます」
「それより嬢ちゃん、可愛いね。良かったら今晩、一緒にどうだい?」
「ごめんなさい。後ろにいるお父さんが、許してくれないと思うので」
「へっ? あっ、そ、そっか。それじゃあ、な……」
誘う船乗りの言葉を受け流しつつ、後ろに居るエリクに意識を向けさせたアリアは、大柄で大剣を携えるエリクを父と呼んだ。
船乗りはそれを聞いてエリクを見ると、引き笑いをしながら下がりつつ作業に戻った。
それを見送ったエリクは、アリアに話し掛けて聞いた。
「どういうことだ?」
「よっぽどの馬鹿か無法者じゃない限り、父親の目の前で娘をナンパできる度胸がある人は、滅多にいないってこと」
「……よく分からないが、そうなのか」
「そうなの。だから旅の間は、相棒じゃなくて親子って事にしてると都合が良いのよ。それに、エリクの顔と体が大きいから、大抵の人は怯えちゃうのよ」
「そうか。それが助けになるなら、それでいい」
そんな会話をしつつ、定期船がある場所まで赴いた二人は、白と青が混ざる旗がある大型の船に近付き、そこで作業している若い船員に話し掛けた。
「お尋ねします。この船は南へ向かう定期船で、間違いありませんか?」
「ん? ああ、そうだよ。乗船希望かい?」
「はい。どちらに行けば乗船の手続きをできるか、お伺いしても?」
「だったら、あっちの建物の中で乗船者の受付してるから、そこで手続きすればいいぜ」
「ありがとうございます。助かりました」
「……それより、今晩は暇だったりは?」
「ごめんなさい。旅の為に、後ろの父と色々と用事を済ませますので」
「えっ、あっ。そ、そうか」
定期船の乗船手続きを行う場所を聞き出し、先程と同じようにナンパされるアリアは後ろに居るエリクを父と紹介して回避した。
若い船員は引き笑いながら作業へ戻り、エリクは納得したように頷いた。
「なるほどな」
「効果大有りでしょ。まともな神経した男なら、父親の前で娘をどうこうしようとは思わないわよ」
「まともじゃない神経の男がいたら?」
「その時は、そうね。しつこいようなら、ぶっ飛ばして構わないわ」
「分かった」
エリクの問いにアリアは答え、そういう事態になった時の事を予め伝えておく。
そんな事を話しつつ受付を行う建物に入り、アリアは受付を行っている中年女性へ話し、乗船手続きに必要な名前を書き、試しにエリクにも名前を書かせてみた。
エリクは教え通り、偽名の名前を受付用紙に書き、『アリス』と『エリオ』の偽名親子が、定期船に乗船できるように手続きが出来た。
そして乗船金額となる銀貨二十枚を渡し、乗る船の部屋鍵が付いた銅板と鉄鍵を受け取った。
乗船手続きを終えた二人は港を離れつつ、アリアは微笑みつつエリクに話した。
「明日の昼前に出発予定らしいから、明日は朝食を済ませてから宿を出て、船に乗りましょう」
「分かった」
「それじゃあ、次は買い物ね。歩く旅もきついけど、船旅もきついから、色々と用意しないと」
「そうなのか?」
「エリクって、船に乗るのは初めて?」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、船酔いの薬も多めに用意してもらえてるといいけれど……」
「船に乗るのに、薬が必要なのか?」
「実際に乗ってみなければ分からないけど、薬が必要な人もいるのよ。……私みたいに」
「ん?」
「何でもないわ。じゃあ、買い物に行くわよ!大きめの鞄も買って、エリクには持ってもらうからね。それじゃあ、行きましょう!」
「ああ、分かった」
そうしてエリクとアリアは、旅に必要な物を買う為に町の中央まで戻った。
そこでエリクは思わぬ時間を費やされてしまうことを、まだ知らなかった。
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