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黄金の国
隠密の人
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ようやく城の中へと戻ってきたが、ソラのいる部屋が分からない。
ローザの話では一番奥だということだったが、城の中の構造が分からない。
移動しようと一歩出ようとすると、走る足音が近づいてくる。
私は思わず、階段を数歩下りる。
誰かが走り抜けるのを見て、走った方向に何かがあるのではと追いかけようとした時だ。
「待って。」
すぐ後ろから声がして動きを止めると、たくさんの足音がまた通り過ぎる。
今出れば見つかっていたかもしれない。
後ろを振り向くと誰もいない。
「この先に行くと、ドラゴンがいる。」
声は聞こえるのに、姿が見えない。
私は何もない空間に話しかける。
「ヒサメ様の、隠密の人?」
「うん。」
肯定の返事はされたが、そこからお互い黙ってしまう。
「えっと、ヒサメ様は黄金の国に到着してますか?」
「うん。」
会話が続かない。
そういえばヒサメ様が、口下手だって言ってたような気がする。
「ソラのところに行きたいんです。案内してもらえますか。」
「扉の前に騎士がたくさんいる。」
「他にその部屋に入るルートはありませんか。」
沈黙の後、隠密の彼は姿を現した。
相変わらず全身白い彼は、天使の姿のようだ。
そうして、白い彼は手を広げる。
「窓から入る。ボクに掴まって。」
そう言われたが、彼は私とさほど身長に差はない。
しかも、白くて細くて華奢だ。
大丈夫かな。
「早くして。見つかる。」
「あ、はい。じゃあ・・・」
私は恐る恐る彼の首に腕を回して、体重を預けようとする。
「重・・・。」
「え、すみません!!」
「いや、いい。行くよ。」
そうして彼の白い美しい翼が大きく広がる。
そこから、広い廊下を凄いスピードで抜けて、一つ開いている窓から外に出る。
城を外から見ると城壁が凍っている。
風が吹雪いており、ここから見える限り町も銀世界になっている。
黄金の国が凍っているというのは、ローザから聞いていたがここまでとは。
そうして高い塔の一番上に上がり、そこから窓を覗く。
そこには、泣いているソラがいた。
「ソラ!!」
外から声をかけてみたが、この吹雪の中、声は届かない。
窓ガラスを割らないと。
短剣を取り出して一瞬躊躇する。
鞘に納めているとはいえ、さきほどの液体がもう出てこないとは言えない。
私は短剣を鞄に入れて、水晶を取り出した。
その水晶を思いっきり窓に叩きつける。
窓ガラスにひびが入ると同時、水晶にもひびが入る。
「あ、それ、白銀の国の水晶。」
「そうだけど、今は窓ガラスを割らないと!高価なものだったのなら、頑張って弁償します!」
「いや、そうじゃなくて。」
私は彼の声を遮るように、思いっきり水晶を窓ガラスに投げつけた。
派手に窓ガラスが割れる音がした。
水晶も粉々に砕け散った。
その音にソラが振り向いた。
「キュキュ!!」
割れた窓から手を入れて、鍵を開けて中に入る。
そうして、ソラを抱きしめる。
「ソラ、お待たせ。魔法、こんなに強くなってたんだね。」
「キュウ。」
「この傷?大丈夫、何ともない。ソラ、この魔法止められる?」
ソラが頷くと、外の吹雪が次第に止んでいく。
いずれ扉の氷が解けて騎士が入ってくる。
その前にここから出ないと。
そう思ったが、私が入ってきた窓にソラが入りそうにない。
今まで暴走によって魔力を消費していたソラは疲れており、窓からふらふらと入ってきた隠密の彼も何故か疲れている。
私、そんなに重たかったってこと?
少しむっとしながらも私もここまで来るまでたくさん歩いて疲れていた。
周りにはたくさんの果物が置かれていて、ソラが丁重にもてなされていたことは分かる。
「ソラ、ちょっと果物貰っていい?」
「キュウキュウ。」
「一つも食べてないの?じゃあ、この三日くらい食べてなかったの?」
一日は眠らされていたとはいえ、何も食べないままではこのまま動けない。
私は転がっていた丸い果実を二つ拾い上げる。
「ソラ、ご飯食べよう。あの扉の氷が溶けたら、国王のところに行こう。」
このまま逃げたとしても、黄金の国が追ってくるだけだ。
この国で起こっていることを解決しなくては、また同じことの繰り返しだろう。
それなら、国王に何があったのかちゃんと確認しないといけない。
私とソラが果実に齧りついていると、白い彼も果物を一つ取った。
「ヒサメ様、今国王に謁見してる。」
「え、今、ですか?」
「うん。」
もぐもぐと果実を食べる彼は、いつまで経っても話を続けない。
しびれを切らして私から話を続けることにした。
「あの、シグレさんたちも来てます?」
「うん、騎士数名連れてる。ボクは命令でリビを探してた。」
「それって、私と会えたことヒサメ様は知ってます?」
「いや、まだ。ボクは水晶持ってないし。」
そんなことを答えながら、彼はもぐもぐと口を動かす。
「じゃあ、急がないとですよね?」
「うん。でも、扉が溶けるまでは動けないんでしょ。」
「貴方は飛べるでしょ?先にヒサメ様のところに戻って情報を。」
「あの人、自分の目で見ないと信じないから。知ってるでしょ。」
白い彼は無表情にそう言った。
彼はずっと、フブキを監視していたらしい。
けれど、ヒサメはフブキに会えるまで彼の言葉を半信半疑に聞いていたのだ。
人を信じることを恐れていたヒサメは、一人で行動することを選んでいた。
そんなヒサメを見続けてきた彼は、自分が信頼に値しないと思っているのだろうか。
「フブキさんに会えた今なら、貴方のこと信じてますよ。だからこそ、私のこと探しに来てくれたんでしょう?」
白い彼は、こちらを横目で見てから、また果実を齧る。
「あの水晶、壊れると持ち主が危険だって、シグレさんに伝わる。」
「え、それって、ちょっとまずいですか?」
「うん。ヒサメ様の魔力、徐々に上がってる。」
ヒサメは今シグレと共にいる。
そのシグレが水晶が割れたことによって私が危険だと察知する。
それをヒサメに伝えているとしたら、黄金の国で私になんらかの危害を加えられたと考えるはず。
ヒサメ様の魔力が上がってるって言った?
「あの、貴方はヒサメ様の魔力が見えるんですか?」
「うん。そういう一族だから。空間にある魔力を感知する。それが誰か知っていれば分かる。リビもそうやって見つけた。かなり魔力が減ってるから、難しかったけど。」
なるほど、その能力でフブキの居場所を把握していたわけか。
「それって、相当広い空間を把握できるってことですか?」
「うん。疲れるけどできる。」
今彼はその能力を使いっぱなしということだ。
だから、こんなにも疲れているのか。
「扉の外の騎士の人数、分かりますか。」
「15人。」
外からは氷を砕く音が聞こえる。
ソラの魔法が止まったことによって、氷の強度が弱まっている。
「ソラ、扉が開くと同時に外に飛び出すよ。」
「キュ!」
果実をいっぱい頬張るソラは、暴走によってかなり疲れているのに元気よく返事をしてくれる。
私は頭の包帯を緩めて、ぎゅっと力を込めて固く結ぶ。
手の包帯も血が滲んでいるが、痛みは我慢できる。
「魔法、使わない方がいい。」
白い彼に言われて顔をあげる。
「そんなに魔力が減ってますか。」
「うん。よく動けるね。扉が開いたら、この国をすぐに出たほうがいい。」
「でも、今ヒサメ様が国王と話しているんでしょう?それなら私も行かないと。」
ドクヘビが関わっているのなら、私も話を聞かないといけない。
ソラのこともあるし、国王がドクヘビと接触している可能性があるのならそのことについて詳しく聞かないと。
「リビが無事にこの国を出ることがヒサメ様の望みだと思うけど。したいようにすれば?怒られるのはキミだし。」
そう言いながら白い彼は姿が薄くなる。
それを私は呼び止めた。
「あ、あの、貴方名前は?」
「・・・なんでそんなこと聞くの。」
白い彼は信じられないものでも見るように私を見る。
「え、だって隠密の人って呼ぶの変でしょ。」
彼は少し迷いながら小さな声で答えた。
「ヒメ・・・ってヒサメ様は呼んでる。」
「ヒメさん、ですか。」
「ヒメでいい。さん付けとか気持ち悪い。」
ヒメは無表情なりに嫌な顔をすると、また姿を消してしまった。
多分一緒にいるのだろうが、姿を消している方がデフォルトなのだろう。
「ヒメは、戦闘についてはどうですか?」
「期待しないで。ボクは索敵向きだから。」
確かに魔力を察知したりする能力を持っているなら諜報員向きだ。
私もソラも今魔法はあまり使えない。
やはり、逃げ切るしかないか。
激しい音を立てて、扉の前の氷が砕かれる音がする。
そろそろか。
ソラの背に乗って、扉が開いた瞬間に突破する。
「ソラ、準備いい?」
「キュ!!」
砕く音が次第に大きくなり、そうして勢いよく扉が開いた。
ローザの話では一番奥だということだったが、城の中の構造が分からない。
移動しようと一歩出ようとすると、走る足音が近づいてくる。
私は思わず、階段を数歩下りる。
誰かが走り抜けるのを見て、走った方向に何かがあるのではと追いかけようとした時だ。
「待って。」
すぐ後ろから声がして動きを止めると、たくさんの足音がまた通り過ぎる。
今出れば見つかっていたかもしれない。
後ろを振り向くと誰もいない。
「この先に行くと、ドラゴンがいる。」
声は聞こえるのに、姿が見えない。
私は何もない空間に話しかける。
「ヒサメ様の、隠密の人?」
「うん。」
肯定の返事はされたが、そこからお互い黙ってしまう。
「えっと、ヒサメ様は黄金の国に到着してますか?」
「うん。」
会話が続かない。
そういえばヒサメ様が、口下手だって言ってたような気がする。
「ソラのところに行きたいんです。案内してもらえますか。」
「扉の前に騎士がたくさんいる。」
「他にその部屋に入るルートはありませんか。」
沈黙の後、隠密の彼は姿を現した。
相変わらず全身白い彼は、天使の姿のようだ。
そうして、白い彼は手を広げる。
「窓から入る。ボクに掴まって。」
そう言われたが、彼は私とさほど身長に差はない。
しかも、白くて細くて華奢だ。
大丈夫かな。
「早くして。見つかる。」
「あ、はい。じゃあ・・・」
私は恐る恐る彼の首に腕を回して、体重を預けようとする。
「重・・・。」
「え、すみません!!」
「いや、いい。行くよ。」
そうして彼の白い美しい翼が大きく広がる。
そこから、広い廊下を凄いスピードで抜けて、一つ開いている窓から外に出る。
城を外から見ると城壁が凍っている。
風が吹雪いており、ここから見える限り町も銀世界になっている。
黄金の国が凍っているというのは、ローザから聞いていたがここまでとは。
そうして高い塔の一番上に上がり、そこから窓を覗く。
そこには、泣いているソラがいた。
「ソラ!!」
外から声をかけてみたが、この吹雪の中、声は届かない。
窓ガラスを割らないと。
短剣を取り出して一瞬躊躇する。
鞘に納めているとはいえ、さきほどの液体がもう出てこないとは言えない。
私は短剣を鞄に入れて、水晶を取り出した。
その水晶を思いっきり窓に叩きつける。
窓ガラスにひびが入ると同時、水晶にもひびが入る。
「あ、それ、白銀の国の水晶。」
「そうだけど、今は窓ガラスを割らないと!高価なものだったのなら、頑張って弁償します!」
「いや、そうじゃなくて。」
私は彼の声を遮るように、思いっきり水晶を窓ガラスに投げつけた。
派手に窓ガラスが割れる音がした。
水晶も粉々に砕け散った。
その音にソラが振り向いた。
「キュキュ!!」
割れた窓から手を入れて、鍵を開けて中に入る。
そうして、ソラを抱きしめる。
「ソラ、お待たせ。魔法、こんなに強くなってたんだね。」
「キュウ。」
「この傷?大丈夫、何ともない。ソラ、この魔法止められる?」
ソラが頷くと、外の吹雪が次第に止んでいく。
いずれ扉の氷が解けて騎士が入ってくる。
その前にここから出ないと。
そう思ったが、私が入ってきた窓にソラが入りそうにない。
今まで暴走によって魔力を消費していたソラは疲れており、窓からふらふらと入ってきた隠密の彼も何故か疲れている。
私、そんなに重たかったってこと?
少しむっとしながらも私もここまで来るまでたくさん歩いて疲れていた。
周りにはたくさんの果物が置かれていて、ソラが丁重にもてなされていたことは分かる。
「ソラ、ちょっと果物貰っていい?」
「キュウキュウ。」
「一つも食べてないの?じゃあ、この三日くらい食べてなかったの?」
一日は眠らされていたとはいえ、何も食べないままではこのまま動けない。
私は転がっていた丸い果実を二つ拾い上げる。
「ソラ、ご飯食べよう。あの扉の氷が溶けたら、国王のところに行こう。」
このまま逃げたとしても、黄金の国が追ってくるだけだ。
この国で起こっていることを解決しなくては、また同じことの繰り返しだろう。
それなら、国王に何があったのかちゃんと確認しないといけない。
私とソラが果実に齧りついていると、白い彼も果物を一つ取った。
「ヒサメ様、今国王に謁見してる。」
「え、今、ですか?」
「うん。」
もぐもぐと果実を食べる彼は、いつまで経っても話を続けない。
しびれを切らして私から話を続けることにした。
「あの、シグレさんたちも来てます?」
「うん、騎士数名連れてる。ボクは命令でリビを探してた。」
「それって、私と会えたことヒサメ様は知ってます?」
「いや、まだ。ボクは水晶持ってないし。」
そんなことを答えながら、彼はもぐもぐと口を動かす。
「じゃあ、急がないとですよね?」
「うん。でも、扉が溶けるまでは動けないんでしょ。」
「貴方は飛べるでしょ?先にヒサメ様のところに戻って情報を。」
「あの人、自分の目で見ないと信じないから。知ってるでしょ。」
白い彼は無表情にそう言った。
彼はずっと、フブキを監視していたらしい。
けれど、ヒサメはフブキに会えるまで彼の言葉を半信半疑に聞いていたのだ。
人を信じることを恐れていたヒサメは、一人で行動することを選んでいた。
そんなヒサメを見続けてきた彼は、自分が信頼に値しないと思っているのだろうか。
「フブキさんに会えた今なら、貴方のこと信じてますよ。だからこそ、私のこと探しに来てくれたんでしょう?」
白い彼は、こちらを横目で見てから、また果実を齧る。
「あの水晶、壊れると持ち主が危険だって、シグレさんに伝わる。」
「え、それって、ちょっとまずいですか?」
「うん。ヒサメ様の魔力、徐々に上がってる。」
ヒサメは今シグレと共にいる。
そのシグレが水晶が割れたことによって私が危険だと察知する。
それをヒサメに伝えているとしたら、黄金の国で私になんらかの危害を加えられたと考えるはず。
ヒサメ様の魔力が上がってるって言った?
「あの、貴方はヒサメ様の魔力が見えるんですか?」
「うん。そういう一族だから。空間にある魔力を感知する。それが誰か知っていれば分かる。リビもそうやって見つけた。かなり魔力が減ってるから、難しかったけど。」
なるほど、その能力でフブキの居場所を把握していたわけか。
「それって、相当広い空間を把握できるってことですか?」
「うん。疲れるけどできる。」
今彼はその能力を使いっぱなしということだ。
だから、こんなにも疲れているのか。
「扉の外の騎士の人数、分かりますか。」
「15人。」
外からは氷を砕く音が聞こえる。
ソラの魔法が止まったことによって、氷の強度が弱まっている。
「ソラ、扉が開くと同時に外に飛び出すよ。」
「キュ!」
果実をいっぱい頬張るソラは、暴走によってかなり疲れているのに元気よく返事をしてくれる。
私は頭の包帯を緩めて、ぎゅっと力を込めて固く結ぶ。
手の包帯も血が滲んでいるが、痛みは我慢できる。
「魔法、使わない方がいい。」
白い彼に言われて顔をあげる。
「そんなに魔力が減ってますか。」
「うん。よく動けるね。扉が開いたら、この国をすぐに出たほうがいい。」
「でも、今ヒサメ様が国王と話しているんでしょう?それなら私も行かないと。」
ドクヘビが関わっているのなら、私も話を聞かないといけない。
ソラのこともあるし、国王がドクヘビと接触している可能性があるのならそのことについて詳しく聞かないと。
「リビが無事にこの国を出ることがヒサメ様の望みだと思うけど。したいようにすれば?怒られるのはキミだし。」
そう言いながら白い彼は姿が薄くなる。
それを私は呼び止めた。
「あ、あの、貴方名前は?」
「・・・なんでそんなこと聞くの。」
白い彼は信じられないものでも見るように私を見る。
「え、だって隠密の人って呼ぶの変でしょ。」
彼は少し迷いながら小さな声で答えた。
「ヒメ・・・ってヒサメ様は呼んでる。」
「ヒメさん、ですか。」
「ヒメでいい。さん付けとか気持ち悪い。」
ヒメは無表情なりに嫌な顔をすると、また姿を消してしまった。
多分一緒にいるのだろうが、姿を消している方がデフォルトなのだろう。
「ヒメは、戦闘についてはどうですか?」
「期待しないで。ボクは索敵向きだから。」
確かに魔力を察知したりする能力を持っているなら諜報員向きだ。
私もソラも今魔法はあまり使えない。
やはり、逃げ切るしかないか。
激しい音を立てて、扉の前の氷が砕かれる音がする。
そろそろか。
ソラの背に乗って、扉が開いた瞬間に突破する。
「ソラ、準備いい?」
「キュ!!」
砕く音が次第に大きくなり、そうして勢いよく扉が開いた。
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