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黄金の国
魔法の暴走
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なんだか肌寒い。
そうして目を開けると、石壁に霜が降りている。
なにこれ。
呼吸をすると白い息が漏れて、体が震える。
本当に寒い。
身を縮こまらせて周りを見わたすと、窓の外の水が凍っている。
急にどういうことなの。
立ち上がろうと床に触れるとまるで氷のように冷たい。
何が起きているのか分からないが、床の冷たさに耐えかねて私は埃をかぶっている布の方へ移動する。
布を一枚隔てただけでも冷たさは多少マシになる。
私は肩をさすりながら、窓の外を見る。
凍っている水がどの程度固まっているのだろうか。
窓ガラスを割り、氷を砕きながら地上に出ることは出来るだろうか。
そこまで考えて首を振る。
水の全てが凍っているとは限らない。
途中までしか凍っていない場合、水が流れ込んでくる可能性もある。
わざと水をこの牢屋に流し込んで、その水位があがることによって天井に届かせることも考えはした。
だが、あの床が開くかどうか分からないし、最悪溺死するような気もする。
命を天秤にかけることだけはするな。
ヒサメに言われたことがよぎって、水を入れるのは最終手段にするしかない。
私だって、できるだけ脱出は安全にしたい。
そうなると、窓からの脱出は最後だ。
他に出られる可能性のある場所を探さないと。
ローザは遺体を運び出す通路があるはずだと言っていた。
だが、この狭い部屋にわざわざ入って、遺体を処理するようなシステムなのだろうか。
私は王の間の床に落とし穴があったことから、この部屋にも同様に落とし穴があるのではないかと考えた。
何かのスイッチで床が開く。
そうしてこの部屋にもそれがあり、遺体は下の水に落ちる。
水の流れで遺体は一か所に集まり、その遺体は集団墓地などに埋められるのでは。
そこまで考えてから、私は床を確認し始めた。
石が並べられたようなその床はどこが切れ目か分からない。
どこかしらが開くようになっていれば、こじ開けられないだろうか。
冷たい床に手をついて、自分の白い息を避けながら切れ目を探す。
これかな、と思うところに短剣を刺して縦横に動かしてみる。
それを繰り返して、なんとなく開きそうな切れ目を見つけた。
短剣を今までで一番深く差し込んで、てこの原理で開こうとするが固くて開きそうもない。
私の力じゃ足りないのかもしれない。
それとも、魔力の減少で力もすり減っているのか?
渾身の力で両手で短剣を押し込んでも、1センチほどしか動かなかった。
だめだ、開かない。
力を入れたことによって、手の傷が開いて血が滲む。
頭の痛みもじんじんと強くなって、くらくらと眩暈がする。
やばい、意識が途切れる。
私はその冷たい床に倒れて、意識を手放す寸前。
「リビ様!!生きてますか!?」
息切れとともに、ローザの声が聞こえた。
小さな穴に毛布を押し込んでくれて、震える手で毛布を受け取る。
「ソラ様の部屋が開かないんです。扉が氷漬けになっていて、今騎士たちが扉を燃やそうとしています。これは、ソラ様の魔法ですか?」
ローザの言葉に、私は首を傾げながら毛布を体に巻く。
「ソラの魔法は確かに、氷ですが。でも、こんな大規模な魔法は見たことないです。」
でも、ソラは魔法がどんどん強くなっていると言っていた。
私と離れているうちに、ソラだって成長している。
だとしても、この城全体を凍えさせるほどの魔法をソラが?
「城が凍っているんですか?」
「城だけじゃない、この黄金の国が凍っているんです!地面や建物が氷漬けになっています。それが次第に国の外にまで広がっている。これって、あの絵本の話と一緒ですよね?」
ブルームーンドラゴンの伝説の話。
戦争を終わらせた世界を凍らせた魔法。
それが、ソラにもできるってこと?
いや、もう一つある。
「魔力の暴走、かもしれません。」
「やはり、そうですか。なんとかソラ様と接触して、止めないと。」
「この国の光の加護でソラは魔法が強化されている。その上、こんなことになってソラの負の感情がコントロールできなくなっているということです。」
ソラはただでさえ私と離れている時間が長かった。
ソラは泉の谷、私は白銀の国で過ごしていたから。
今回黄金の国に来るときもずっと私の傍を離れなかった。
人見知りしないソラが、騎士の誰にも懐こうとしなかった。
それは、ソラが私と離れていたことで既に心が不安定になっていたからだ。
そうして、今強制的に離されたことによってソラの魔法が暴走している。
暴走した場合、隔離したり気絶させたりすればいいみたいな話だったはずだが、こんな広範囲に魔法を及ぼす場合気絶一択だろう。
「なんとかソラのいる部屋に入るしかなさそうですね。この地下牢の床に開きそうな場所を見つけたんですが、私の力じゃ足りないんです。開くためのスイッチとか、もしくは長い金属の棒とかありませんか?」
出られるとしたらやはりこの床しかない。
「分かりました、持ってきます。この城の構造を把握するために文献を漁るより、棒を探す方が早いです。」
何かしらの棒を探しに行ったローザを待つ間、どんどん気温が下がっていく。
ソラの魔法が強くなっているせいだ。
暴走とはいえ、まだ子供だと思っていたソラがここまでの魔法を使えるとは思ってもみなかった。
それだけ暴走というものは負の感情によって魔力を強化させるのだ。
さらに光の加護のアシストで最悪の事態に陥っている。
毛布で体を覆ってはいるものの手や足が悴んできた。
これは本当に急がなければさらに体力を失っていく。
そうなれば、脱出するための体力さえ無くなってしまう。
寒さで震え、歯がカチカチと音を鳴らす。
身を縮こまらせ、毛布に顔を埋めて、それから考える。
もし、この床が開いたとして下は水だったはず。
だがその水は今凍ってしまっている。
降りるスペースが存在するのか、それとも割らなければ進めないのか。
私の残り少ない体力で果たして陸まで保つのか。
ぐるぐると考えを巡らせて、白い息を吐く。
いや、ソラを助けに行かないといけないんだから。
ここを出て、ソラのところへ行くんだ。
そう思うだけで自然と前向きになれる自分がいた。
そうして目を開けると、石壁に霜が降りている。
なにこれ。
呼吸をすると白い息が漏れて、体が震える。
本当に寒い。
身を縮こまらせて周りを見わたすと、窓の外の水が凍っている。
急にどういうことなの。
立ち上がろうと床に触れるとまるで氷のように冷たい。
何が起きているのか分からないが、床の冷たさに耐えかねて私は埃をかぶっている布の方へ移動する。
布を一枚隔てただけでも冷たさは多少マシになる。
私は肩をさすりながら、窓の外を見る。
凍っている水がどの程度固まっているのだろうか。
窓ガラスを割り、氷を砕きながら地上に出ることは出来るだろうか。
そこまで考えて首を振る。
水の全てが凍っているとは限らない。
途中までしか凍っていない場合、水が流れ込んでくる可能性もある。
わざと水をこの牢屋に流し込んで、その水位があがることによって天井に届かせることも考えはした。
だが、あの床が開くかどうか分からないし、最悪溺死するような気もする。
命を天秤にかけることだけはするな。
ヒサメに言われたことがよぎって、水を入れるのは最終手段にするしかない。
私だって、できるだけ脱出は安全にしたい。
そうなると、窓からの脱出は最後だ。
他に出られる可能性のある場所を探さないと。
ローザは遺体を運び出す通路があるはずだと言っていた。
だが、この狭い部屋にわざわざ入って、遺体を処理するようなシステムなのだろうか。
私は王の間の床に落とし穴があったことから、この部屋にも同様に落とし穴があるのではないかと考えた。
何かのスイッチで床が開く。
そうしてこの部屋にもそれがあり、遺体は下の水に落ちる。
水の流れで遺体は一か所に集まり、その遺体は集団墓地などに埋められるのでは。
そこまで考えてから、私は床を確認し始めた。
石が並べられたようなその床はどこが切れ目か分からない。
どこかしらが開くようになっていれば、こじ開けられないだろうか。
冷たい床に手をついて、自分の白い息を避けながら切れ目を探す。
これかな、と思うところに短剣を刺して縦横に動かしてみる。
それを繰り返して、なんとなく開きそうな切れ目を見つけた。
短剣を今までで一番深く差し込んで、てこの原理で開こうとするが固くて開きそうもない。
私の力じゃ足りないのかもしれない。
それとも、魔力の減少で力もすり減っているのか?
渾身の力で両手で短剣を押し込んでも、1センチほどしか動かなかった。
だめだ、開かない。
力を入れたことによって、手の傷が開いて血が滲む。
頭の痛みもじんじんと強くなって、くらくらと眩暈がする。
やばい、意識が途切れる。
私はその冷たい床に倒れて、意識を手放す寸前。
「リビ様!!生きてますか!?」
息切れとともに、ローザの声が聞こえた。
小さな穴に毛布を押し込んでくれて、震える手で毛布を受け取る。
「ソラ様の部屋が開かないんです。扉が氷漬けになっていて、今騎士たちが扉を燃やそうとしています。これは、ソラ様の魔法ですか?」
ローザの言葉に、私は首を傾げながら毛布を体に巻く。
「ソラの魔法は確かに、氷ですが。でも、こんな大規模な魔法は見たことないです。」
でも、ソラは魔法がどんどん強くなっていると言っていた。
私と離れているうちに、ソラだって成長している。
だとしても、この城全体を凍えさせるほどの魔法をソラが?
「城が凍っているんですか?」
「城だけじゃない、この黄金の国が凍っているんです!地面や建物が氷漬けになっています。それが次第に国の外にまで広がっている。これって、あの絵本の話と一緒ですよね?」
ブルームーンドラゴンの伝説の話。
戦争を終わらせた世界を凍らせた魔法。
それが、ソラにもできるってこと?
いや、もう一つある。
「魔力の暴走、かもしれません。」
「やはり、そうですか。なんとかソラ様と接触して、止めないと。」
「この国の光の加護でソラは魔法が強化されている。その上、こんなことになってソラの負の感情がコントロールできなくなっているということです。」
ソラはただでさえ私と離れている時間が長かった。
ソラは泉の谷、私は白銀の国で過ごしていたから。
今回黄金の国に来るときもずっと私の傍を離れなかった。
人見知りしないソラが、騎士の誰にも懐こうとしなかった。
それは、ソラが私と離れていたことで既に心が不安定になっていたからだ。
そうして、今強制的に離されたことによってソラの魔法が暴走している。
暴走した場合、隔離したり気絶させたりすればいいみたいな話だったはずだが、こんな広範囲に魔法を及ぼす場合気絶一択だろう。
「なんとかソラのいる部屋に入るしかなさそうですね。この地下牢の床に開きそうな場所を見つけたんですが、私の力じゃ足りないんです。開くためのスイッチとか、もしくは長い金属の棒とかありませんか?」
出られるとしたらやはりこの床しかない。
「分かりました、持ってきます。この城の構造を把握するために文献を漁るより、棒を探す方が早いです。」
何かしらの棒を探しに行ったローザを待つ間、どんどん気温が下がっていく。
ソラの魔法が強くなっているせいだ。
暴走とはいえ、まだ子供だと思っていたソラがここまでの魔法を使えるとは思ってもみなかった。
それだけ暴走というものは負の感情によって魔力を強化させるのだ。
さらに光の加護のアシストで最悪の事態に陥っている。
毛布で体を覆ってはいるものの手や足が悴んできた。
これは本当に急がなければさらに体力を失っていく。
そうなれば、脱出するための体力さえ無くなってしまう。
寒さで震え、歯がカチカチと音を鳴らす。
身を縮こまらせ、毛布に顔を埋めて、それから考える。
もし、この床が開いたとして下は水だったはず。
だがその水は今凍ってしまっている。
降りるスペースが存在するのか、それとも割らなければ進めないのか。
私の残り少ない体力で果たして陸まで保つのか。
ぐるぐると考えを巡らせて、白い息を吐く。
いや、ソラを助けに行かないといけないんだから。
ここを出て、ソラのところへ行くんだ。
そう思うだけで自然と前向きになれる自分がいた。
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