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組織の調査1
この世界で生きている
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そんな彼らの運命はあまりにも過酷ではないか?
思い詰めた私の口にコッペパンを押し込められる。
「むぐ!?」
「また、思考の海に飛び込んでいるぞ。今言ったのは全部空想だ。」
「でも、何か思うところがあっての空想でしょう?」
「翼を授けてもらえるというのが、空を飛べるものだと皆が思っている。しかし、神官様や聖女様が自由に暮らすことが出来ないことも皆が知っている。この矛盾に気づいたとき、天使の翼で空を飛ぶ神官様たちを誰も目にしていない事実がある。オレはそこから、さきほどの空想を思いついただけだ。」
ヒサメの空想とはいえ、私だって翼を持った人間を見たことなどない。
それはつまり、そもそも翼など存在しないか、この下界の存在ではなくなったせいで見えないのか。
いずれにせよ、真実が捻じ曲げられて伝わっていることはこの世に山ほどあるということだ。
「これじゃあ、闇魔法だけじゃなくて光魔法の人間も罰を受けているみたいですね。」
「罰?」
「この世界は、転移者への罰なのではないか。私たちは元の世界で死ぬことによりこちらに来ています。死因はバラバラですが、それぞれが思うところがある。光魔法の人間は祈りを捧げ続け、人の役に立たなければならない。闇魔法は偏見や差別に耐えながら、そしてまた人の役に立たなければならない。それが、神が私たちに課した罰なのかもしれない。でも、これもまたひとつの仮説にすぎません。全部が全部、神様の思い通りと思うと癪ですし!」
私はコッペパンを大きく頬張った。
するとヒサメは匙をおいて、私を見た。
その顔は驚きと悲しみを含んでいるように見えた。
「この世界に来る前に、死んだのか。」
「あれ、この話してませんでしたっけ?実はそうなんですよ、一回死んでて。」
ヒサメは俯くとそのまま動かなくなった。
あれ、怒らせただろうか。
「すみません、隠してたわけじゃなくて。楽しい話ではないし、必要だったのは転移者だということだけだったし。それに私結構ヒサメ様には色々話してるから、もう言った気になってたというか。」
「死因は?」
「ベランダからの転落です。事故みたいな感じだったんですけどね。高さがそれなりにあったし、多分即死だと思うんですけど。あんな馬鹿な死に方するなんて、本当にドジで・・・」
笑って言ってみたが、ヒサメは顔をあげない。
「痛かったか?」
「いや、覚えてないですよ。それに気づいたら迷いの森でしたし。ここから先はご存知の通り、ですよ。」
明るく言ったのも虚しく、ヒサメの表情は分からないまま。
「あの・・・、気味が悪いとか思うかもしれないですけど、ちゃんと人間ですから。死体とか幽霊とかじゃなくて、血の通ってる普通の」
私がそう言いかけたとき、ヒサメの片手が私の首を掴んだ。
ひぇっ、と声が出そうになった。
強い力を入れているわけではないが、首を掴まれたら誰だって怖い。
ヒサメの手の温度がじんわりと首に伝わってから、何秒経過したのだろう。
ぱっ、と手を離したヒサメは徐に立ち上がる。
「少し夜風に当たりに行こうか。」
そんな静かな声に私は頷くしかなかった。
この小さな町には散歩できる公園があり、私とヒサメはその場所を歩いていた。
冷たい風が時折吹いて、澄み切った空には星が見えている。
前を歩いているヒサメは食堂を出てからずっと黙ったまま。
気まずいなと思いながらも、私はヒサメの後ろをゆっくりとついていく。
「リビ殿は、体温が高いな。」
やっと喋ったかと思えば、そんなことをポツリというヒサメ。
先ほど首を掴んだのはまさか、体温を測ったのか?
「ヒサメ様の体温が低いんじゃないですか?」
さっき首を掴まれた恐怖を思い出し、私は少しぶっきらぼうに言い返す。
するとヒサメが急に立ち止まり、私はぶつかりそうになったがなんとか立ち止まる。
「死人というのは、驚くほどに冷たくてな。さきほどまであんなに温かかったのに、心臓から送る血液が止まるとあっという間に体温が低下していく。子供ながらに、もう戻ってくることはないのだなと分かってしまうほどにな。」
背を向けたままのヒサメの表情は分からない。
でもこれは、もしかしてヒサメ様のお母さんの話か?
「オレ自身、今まで何度も死にかけることはあった。大量の血が流れていく感覚、心臓の音が次第に小さくなっていく感覚。あれは、何度経験しても慣れないな。慣れてはいけないから、当然なのだろうが。」
ようやく振り向いたヒサメは表情を殺しているように見えた。
悲しさや苦しさ、自分の弱みを見せたくないのかもしれない。
「死ぬのは、怖かったか。」
「・・・分かりませんよ、そんなの。あの一瞬で、何を感じたのかなんて覚えていません。でも、今は死にたくないです。怖いので。」
そんな当たり前のような私の言葉に、ヒサメは口の端を上げた。
ヒサメの顔が月の光に照らされて、さまになっている。
ヒサメの手が伸びてきて、また首でも掴まれるのかと体をこわばらせると、その手は私の頭の上に置かれた。
「もう、死ぬなよ。」
手が離れていき、歩き出すヒサメ。
頭を撫でられて呆然とする私は我に返り、ヒサメの背中を追う。
ヒサメ様にはじめて頭を撫でられたのでは?
そんな素敵なシーンにときめいてなどいられない。
何故ならヒサメの目が、本気だったからだ。
本気で私に死ぬなと言っているのだこの人は。
死ぬときなんて選べるはずもないのに。
前を歩くヒサメの速度は決して速くない。
後ろを見ている訳でもないのに、私を置いていかない速度で歩いているんだ。
「…戻らないんですか。」
「もう少し歩きたい。帰るなよ?」
「帰るわけ、ないでしょう。」
今の私は騎士の制服を纏うヒサメ様の部下だ。
王を置いて一人で帰るわけにはいかない。
風で木の葉が揺れる音、それから私達の靴の音だけが響いて。
息を吸うと冷たい空気が入り込んで。
ああ、私は今この世界で生きているんだとふと思う。
目の前には大きな背中が見えて、そんな彼には真っ黒なふわふわの耳が二つ。
本物だと分かっている今でも改めて見ると不思議な感じ。
何かの音に反応しているのか、ぴこぴこと動くその耳を見ていたら可愛くてニヤけてしまう。
そんな顔を戻しつつ視線を上に上げれば満天の星が見える。
この世界にも、星に名前があるだろうか。
「どうした。」
私が立ち止まったことでヒサメが振り向く。
「あ、いえ、星が綺麗なので。」
私がそう言うと、ヒサメも夜空を見上げる。
「フブキも見てるだろうか、この夜空を。」
そんなことを真剣に呟くので、私はいつものように相槌をうつ。
「どうですかねー見てるといいですねー」
いつもの雰囲気に戻りつつあるヒサメに安心しながら、私は先程の表情を押し殺すヒサメを思い出す。
私が死ぬ時、フブキさんほどとは言わなくても悲しんでくれないかな。
そんな確認しようがない期待を抱いて、私はゆっくりとヒサメの後ろを歩いていくのだった。
思い詰めた私の口にコッペパンを押し込められる。
「むぐ!?」
「また、思考の海に飛び込んでいるぞ。今言ったのは全部空想だ。」
「でも、何か思うところがあっての空想でしょう?」
「翼を授けてもらえるというのが、空を飛べるものだと皆が思っている。しかし、神官様や聖女様が自由に暮らすことが出来ないことも皆が知っている。この矛盾に気づいたとき、天使の翼で空を飛ぶ神官様たちを誰も目にしていない事実がある。オレはそこから、さきほどの空想を思いついただけだ。」
ヒサメの空想とはいえ、私だって翼を持った人間を見たことなどない。
それはつまり、そもそも翼など存在しないか、この下界の存在ではなくなったせいで見えないのか。
いずれにせよ、真実が捻じ曲げられて伝わっていることはこの世に山ほどあるということだ。
「これじゃあ、闇魔法だけじゃなくて光魔法の人間も罰を受けているみたいですね。」
「罰?」
「この世界は、転移者への罰なのではないか。私たちは元の世界で死ぬことによりこちらに来ています。死因はバラバラですが、それぞれが思うところがある。光魔法の人間は祈りを捧げ続け、人の役に立たなければならない。闇魔法は偏見や差別に耐えながら、そしてまた人の役に立たなければならない。それが、神が私たちに課した罰なのかもしれない。でも、これもまたひとつの仮説にすぎません。全部が全部、神様の思い通りと思うと癪ですし!」
私はコッペパンを大きく頬張った。
するとヒサメは匙をおいて、私を見た。
その顔は驚きと悲しみを含んでいるように見えた。
「この世界に来る前に、死んだのか。」
「あれ、この話してませんでしたっけ?実はそうなんですよ、一回死んでて。」
ヒサメは俯くとそのまま動かなくなった。
あれ、怒らせただろうか。
「すみません、隠してたわけじゃなくて。楽しい話ではないし、必要だったのは転移者だということだけだったし。それに私結構ヒサメ様には色々話してるから、もう言った気になってたというか。」
「死因は?」
「ベランダからの転落です。事故みたいな感じだったんですけどね。高さがそれなりにあったし、多分即死だと思うんですけど。あんな馬鹿な死に方するなんて、本当にドジで・・・」
笑って言ってみたが、ヒサメは顔をあげない。
「痛かったか?」
「いや、覚えてないですよ。それに気づいたら迷いの森でしたし。ここから先はご存知の通り、ですよ。」
明るく言ったのも虚しく、ヒサメの表情は分からないまま。
「あの・・・、気味が悪いとか思うかもしれないですけど、ちゃんと人間ですから。死体とか幽霊とかじゃなくて、血の通ってる普通の」
私がそう言いかけたとき、ヒサメの片手が私の首を掴んだ。
ひぇっ、と声が出そうになった。
強い力を入れているわけではないが、首を掴まれたら誰だって怖い。
ヒサメの手の温度がじんわりと首に伝わってから、何秒経過したのだろう。
ぱっ、と手を離したヒサメは徐に立ち上がる。
「少し夜風に当たりに行こうか。」
そんな静かな声に私は頷くしかなかった。
この小さな町には散歩できる公園があり、私とヒサメはその場所を歩いていた。
冷たい風が時折吹いて、澄み切った空には星が見えている。
前を歩いているヒサメは食堂を出てからずっと黙ったまま。
気まずいなと思いながらも、私はヒサメの後ろをゆっくりとついていく。
「リビ殿は、体温が高いな。」
やっと喋ったかと思えば、そんなことをポツリというヒサメ。
先ほど首を掴んだのはまさか、体温を測ったのか?
「ヒサメ様の体温が低いんじゃないですか?」
さっき首を掴まれた恐怖を思い出し、私は少しぶっきらぼうに言い返す。
するとヒサメが急に立ち止まり、私はぶつかりそうになったがなんとか立ち止まる。
「死人というのは、驚くほどに冷たくてな。さきほどまであんなに温かかったのに、心臓から送る血液が止まるとあっという間に体温が低下していく。子供ながらに、もう戻ってくることはないのだなと分かってしまうほどにな。」
背を向けたままのヒサメの表情は分からない。
でもこれは、もしかしてヒサメ様のお母さんの話か?
「オレ自身、今まで何度も死にかけることはあった。大量の血が流れていく感覚、心臓の音が次第に小さくなっていく感覚。あれは、何度経験しても慣れないな。慣れてはいけないから、当然なのだろうが。」
ようやく振り向いたヒサメは表情を殺しているように見えた。
悲しさや苦しさ、自分の弱みを見せたくないのかもしれない。
「死ぬのは、怖かったか。」
「・・・分かりませんよ、そんなの。あの一瞬で、何を感じたのかなんて覚えていません。でも、今は死にたくないです。怖いので。」
そんな当たり前のような私の言葉に、ヒサメは口の端を上げた。
ヒサメの顔が月の光に照らされて、さまになっている。
ヒサメの手が伸びてきて、また首でも掴まれるのかと体をこわばらせると、その手は私の頭の上に置かれた。
「もう、死ぬなよ。」
手が離れていき、歩き出すヒサメ。
頭を撫でられて呆然とする私は我に返り、ヒサメの背中を追う。
ヒサメ様にはじめて頭を撫でられたのでは?
そんな素敵なシーンにときめいてなどいられない。
何故ならヒサメの目が、本気だったからだ。
本気で私に死ぬなと言っているのだこの人は。
死ぬときなんて選べるはずもないのに。
前を歩くヒサメの速度は決して速くない。
後ろを見ている訳でもないのに、私を置いていかない速度で歩いているんだ。
「…戻らないんですか。」
「もう少し歩きたい。帰るなよ?」
「帰るわけ、ないでしょう。」
今の私は騎士の制服を纏うヒサメ様の部下だ。
王を置いて一人で帰るわけにはいかない。
風で木の葉が揺れる音、それから私達の靴の音だけが響いて。
息を吸うと冷たい空気が入り込んで。
ああ、私は今この世界で生きているんだとふと思う。
目の前には大きな背中が見えて、そんな彼には真っ黒なふわふわの耳が二つ。
本物だと分かっている今でも改めて見ると不思議な感じ。
何かの音に反応しているのか、ぴこぴこと動くその耳を見ていたら可愛くてニヤけてしまう。
そんな顔を戻しつつ視線を上に上げれば満天の星が見える。
この世界にも、星に名前があるだろうか。
「どうした。」
私が立ち止まったことでヒサメが振り向く。
「あ、いえ、星が綺麗なので。」
私がそう言うと、ヒサメも夜空を見上げる。
「フブキも見てるだろうか、この夜空を。」
そんなことを真剣に呟くので、私はいつものように相槌をうつ。
「どうですかねー見てるといいですねー」
いつもの雰囲気に戻りつつあるヒサメに安心しながら、私は先程の表情を押し殺すヒサメを思い出す。
私が死ぬ時、フブキさんほどとは言わなくても悲しんでくれないかな。
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