76 / 169
組織の調査1
ヒバリの目的
しおりを挟む
私が会いたいと願っていたヒバリは、植物の学者であり闇の神官でもあったということだ。
この二人が同一人物だったということに驚きながらも、やはり疑問はある。
「白銀の国では、神から名を授かることになっていますよね。それって、神様が名前を告げて、それを神官様が聞き取るってことですか」
「いえ、神様は肯定か否定しかなさいません。ですので、名前を授けることはヒバリさんが神様に許可を得て始めたことだったのです。どうしてそんなことを始めたのか理由は誰にも分かりませんが、神様が許可を与えたということは、何か意味があったのだと思います。」
「つまり、名前自体はヒバリさんが考えて授けていた、ということですね?」
「そうなります。」
私ははじめ、闇の神が日本語を話しているものだと思っていたが、どうやらそうではないようだ。
この行動はヒバリが始めたこと。
それならば、そこに神の意思はない、のか?
ふと、ヒサメの耳がぴこっと揺れる。
「そのヒバリという神官が、リビ殿と同じ故郷の可能性があるということか。それならキミは、オレたちの名前の意味が分かるということか?」
「え、はい、そうですね。ヒサメ様たちの名前は、私の故郷の言葉なので。ヒサメというのは、氷の雨という意味です。」
「フブキは?」
「フブキというのは、吹雪いていることです。強い風と雪のことですね。」
「今まで神に授かったからと名前など気にしたことはなかったが、こんなに近くに意味を知っている者がいたとはな。リビ殿としては、ヒバリ殿の行動の理由に心当たりはないか?」
ヒサメに問われた私は頭を悩ませる。
「ヒバリさん、植物の名前にも故郷の言葉を使っているんです。“アカツキの花”とか“アサヒの花”もそう。おそらく、自分が見つけた植物には自由に名前をつけることが出来たからだと思うんですが、そこまでは理解できるんです。自分が馴染みのある言葉の方が名付けやすい。でも、わざわざ神に許可を取って、ヒサメ様たちの名前も名付け始めるのはなんだか、故郷の言葉を広めようとしてる、気もします。」
私の言葉にベルへが頷いた。
「もしかしたらヒバリさんは同郷の者に会いたかったのかもしれませんね。ここ夜明けの国に闇魔法の人間はヒバリさん以外に3人いましたが、いずれも故郷が違うとのことでした。それに、なんというか、ヒバリさん以外の人間は記憶が朧気になることが多かったように思います。」
私とヒサメは顔を見合わせて、ベルへに問う。
「あの、今は闇魔法の人間の神官様はいらっしゃいますか。」
「はい、1人いらっしゃいます。話してみますか?」
「お願いします!」
私たちはベルへに連れられて、大きな宵の間から移動し階段を上っていく。
その後ろを歩きながら疑問を投げかけてみた。
「ベルへさんはどうして、ヒバリさんが生きているかどうか分からないと仰ったのですか。彼が私と同じ故郷なら、彼は人間です。人間以外ありえません。だとしたら、もう生きていないと考えるのが普通ではないでしょうか。」
そんな言葉に、ベルへは深く頷いた。
「ええ、普通ならそうでしょう。ですが、ヒバリさんはずっと見た目が変わらなかったのです。出会った時からずっと。彼をエルフや他の種族だと言う者もいましたが、そうだとしても変わらなすぎる。それに、彼は人間だと鑑定士の方が仰っていました。私から見ても彼は人間以外には見えなかった。彼は、その若々しい見た目が嫌だったのか、顔を隠すような恰好をしていましたよ。」
泉の谷で聞いた時も、ヒバリは物腰の柔らかい20代半ばの好青年と言っていた。
本人が嫌がっていたということは、意図的ではなかったということだろうか。
「魔法で見た目が若かったのか、それとも年を取らないのか。ヒサメ様はどう思います?」
「年を取らない魔法など聞いたことがない。それに不老不死の魔法は存在しないぞ。この世界に生きる全ての者はいずれ死ぬ。寿命の長さはそれぞれだが、死を免れることができるのは神だけだ。」
「寿命を伸ばす魔法はどうですか?それなら死は免れないでしょう?」
「どうだろうな。今まで数多くの闇魔法が確認されているが、それは全てではない。鑑定されなかった者もいるし、人以外は鑑定すら出来ない。」
「鑑定士って人型限定なんですか?!」
階段に私の声が響いてしまった。
慌てて口に手をやれば、ベルへは笑っている。
ヒサメは耳を折り曲げながら、話を続ける。
「鑑定とは、前例と照らし合わせることによって魔力や魔法の種類を見極める。その前例が分かるのは相手と意思疎通できるから成立するんだ。魔獣や精霊や妖精、意思疎通が出来なければ前例は作れない。」
「それって、話ができれば闇魔法の種類が多く分かることにも繋がるってことですか。」
「そうかもな。だが、会話が出来たとして素直に応じてくれるかどうかは別だ。妖精は特に何をされるか分からない。」
そういえば妖精は寿命を取ったりするんだったか。
そんなことを思いながらふと口にした。
「奪った寿命を相手に付与できたら寿命を伸ばす魔法って言えませんか?」
私の言葉に隣のヒサメも前を歩いていたベルへも振り返る。
「それならあり得るな。妖精が寿命を奪うことはよく知られていることだ。奪えるなら与えることもできるかもしれない。」
「ええ、あの恐ろしい妖精が相手に寿命を付与するだなんて考えもつきませんでしたが、あり得ます。あらゆる者に好かれるヒバリさんなら、尚更可能性がありますよ!」
ベルへが力強く言うのでそうなのだろう。
泉の谷でも精霊の守り人を手懐けたり、エルフに好かれたりするような男らしいから、ヒバリは人外たらしなのかもしれない。
迷いの森にいた湖の妖精ユリさんも人間であるザハルさんに恋をしていた。
妖精も人間を好きになることがあるってことだ。
私の師匠であるツキさんだって、口には出さなくても日本人に恋を。
あれ?もしかして、ツキさんが好きな人って。
そんなことを考えていると図書館に着いた。
この二人が同一人物だったということに驚きながらも、やはり疑問はある。
「白銀の国では、神から名を授かることになっていますよね。それって、神様が名前を告げて、それを神官様が聞き取るってことですか」
「いえ、神様は肯定か否定しかなさいません。ですので、名前を授けることはヒバリさんが神様に許可を得て始めたことだったのです。どうしてそんなことを始めたのか理由は誰にも分かりませんが、神様が許可を与えたということは、何か意味があったのだと思います。」
「つまり、名前自体はヒバリさんが考えて授けていた、ということですね?」
「そうなります。」
私ははじめ、闇の神が日本語を話しているものだと思っていたが、どうやらそうではないようだ。
この行動はヒバリが始めたこと。
それならば、そこに神の意思はない、のか?
ふと、ヒサメの耳がぴこっと揺れる。
「そのヒバリという神官が、リビ殿と同じ故郷の可能性があるということか。それならキミは、オレたちの名前の意味が分かるということか?」
「え、はい、そうですね。ヒサメ様たちの名前は、私の故郷の言葉なので。ヒサメというのは、氷の雨という意味です。」
「フブキは?」
「フブキというのは、吹雪いていることです。強い風と雪のことですね。」
「今まで神に授かったからと名前など気にしたことはなかったが、こんなに近くに意味を知っている者がいたとはな。リビ殿としては、ヒバリ殿の行動の理由に心当たりはないか?」
ヒサメに問われた私は頭を悩ませる。
「ヒバリさん、植物の名前にも故郷の言葉を使っているんです。“アカツキの花”とか“アサヒの花”もそう。おそらく、自分が見つけた植物には自由に名前をつけることが出来たからだと思うんですが、そこまでは理解できるんです。自分が馴染みのある言葉の方が名付けやすい。でも、わざわざ神に許可を取って、ヒサメ様たちの名前も名付け始めるのはなんだか、故郷の言葉を広めようとしてる、気もします。」
私の言葉にベルへが頷いた。
「もしかしたらヒバリさんは同郷の者に会いたかったのかもしれませんね。ここ夜明けの国に闇魔法の人間はヒバリさん以外に3人いましたが、いずれも故郷が違うとのことでした。それに、なんというか、ヒバリさん以外の人間は記憶が朧気になることが多かったように思います。」
私とヒサメは顔を見合わせて、ベルへに問う。
「あの、今は闇魔法の人間の神官様はいらっしゃいますか。」
「はい、1人いらっしゃいます。話してみますか?」
「お願いします!」
私たちはベルへに連れられて、大きな宵の間から移動し階段を上っていく。
その後ろを歩きながら疑問を投げかけてみた。
「ベルへさんはどうして、ヒバリさんが生きているかどうか分からないと仰ったのですか。彼が私と同じ故郷なら、彼は人間です。人間以外ありえません。だとしたら、もう生きていないと考えるのが普通ではないでしょうか。」
そんな言葉に、ベルへは深く頷いた。
「ええ、普通ならそうでしょう。ですが、ヒバリさんはずっと見た目が変わらなかったのです。出会った時からずっと。彼をエルフや他の種族だと言う者もいましたが、そうだとしても変わらなすぎる。それに、彼は人間だと鑑定士の方が仰っていました。私から見ても彼は人間以外には見えなかった。彼は、その若々しい見た目が嫌だったのか、顔を隠すような恰好をしていましたよ。」
泉の谷で聞いた時も、ヒバリは物腰の柔らかい20代半ばの好青年と言っていた。
本人が嫌がっていたということは、意図的ではなかったということだろうか。
「魔法で見た目が若かったのか、それとも年を取らないのか。ヒサメ様はどう思います?」
「年を取らない魔法など聞いたことがない。それに不老不死の魔法は存在しないぞ。この世界に生きる全ての者はいずれ死ぬ。寿命の長さはそれぞれだが、死を免れることができるのは神だけだ。」
「寿命を伸ばす魔法はどうですか?それなら死は免れないでしょう?」
「どうだろうな。今まで数多くの闇魔法が確認されているが、それは全てではない。鑑定されなかった者もいるし、人以外は鑑定すら出来ない。」
「鑑定士って人型限定なんですか?!」
階段に私の声が響いてしまった。
慌てて口に手をやれば、ベルへは笑っている。
ヒサメは耳を折り曲げながら、話を続ける。
「鑑定とは、前例と照らし合わせることによって魔力や魔法の種類を見極める。その前例が分かるのは相手と意思疎通できるから成立するんだ。魔獣や精霊や妖精、意思疎通が出来なければ前例は作れない。」
「それって、話ができれば闇魔法の種類が多く分かることにも繋がるってことですか。」
「そうかもな。だが、会話が出来たとして素直に応じてくれるかどうかは別だ。妖精は特に何をされるか分からない。」
そういえば妖精は寿命を取ったりするんだったか。
そんなことを思いながらふと口にした。
「奪った寿命を相手に付与できたら寿命を伸ばす魔法って言えませんか?」
私の言葉に隣のヒサメも前を歩いていたベルへも振り返る。
「それならあり得るな。妖精が寿命を奪うことはよく知られていることだ。奪えるなら与えることもできるかもしれない。」
「ええ、あの恐ろしい妖精が相手に寿命を付与するだなんて考えもつきませんでしたが、あり得ます。あらゆる者に好かれるヒバリさんなら、尚更可能性がありますよ!」
ベルへが力強く言うのでそうなのだろう。
泉の谷でも精霊の守り人を手懐けたり、エルフに好かれたりするような男らしいから、ヒバリは人外たらしなのかもしれない。
迷いの森にいた湖の妖精ユリさんも人間であるザハルさんに恋をしていた。
妖精も人間を好きになることがあるってことだ。
私の師匠であるツキさんだって、口には出さなくても日本人に恋を。
あれ?もしかして、ツキさんが好きな人って。
そんなことを考えていると図書館に着いた。
11
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

錬金術師として召喚されたけど、錬成対象が食べ物限定だったので王宮を追い出されました。
茜カナコ
ファンタジー
キッチンカーでクレープ屋を営んでいた川崎あおいは、ある日異世界に召喚された。
錬金術師として扱われたが、錬成対象が食べ物だけだったため、王宮を追い出されたあおい。
あおいは、町外れの一軒家で、クレープ屋を始めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる