【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku

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宝石山

採掘場の異変

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フブキはその日のうちに退院して、商人の荷物を下ろすのを手伝っていた。
「休んでていいんだよ!?この村までの護衛でフブキ君の仕事は終了だったんだから!」
「いえ、俺は最後寝てしまったので荷下ろしくらいはさせて下さい」
「君刺されたんだよ!?動いて傷開いたらどうするんだい!」
「獣人は頑丈なんで、大丈夫ですよ」
商人2人が心配するなか、フブキは重たい荷物を家の中に全て運び込んでしまった。
表で見ていた私のところにフブキは駆け寄ってきた。
「リビ、来てたのか」
「はい、私達は宝石山に向かうので別れの挨拶をと思いまして」
するとフブキは少し屈んで私と視線を合わせた。
「そのことなんだが、俺も宝石山に用があるんだ。商人の護衛はここまでで別の仕事の件なんだが、リビたちと一緒に行ってもいいか?」



こうして私とソラとジャーマ、そこに加わったフブキは宝石山に登ることになった。
「腕の立つフブキさんも一緒というのは心強いですね」
そう言ってジャーマは快く同行を許可した。
おそらくジャーマはフブキが怪我をしているから、一人で登山するよりも人数が居たほうが安全だと思ったのだろう。
山は思っていたよりも緩やかで登りにくくはなかった。
人が出入りする山だから道が補整されているのがありがたい。
ソラはわりとフブキに懐いていて、フブキもソラを可愛がってくれている。
もしかして、光属性の2人だから相性が良いのだろうか。
途中ソラの言葉が分かることをフブキに驚かれながら、半分まで登ってきたところで昼食をとった。
「もう間もなく採掘場なのですが、おかしいですね。いつもなら採掘者の方を見かけたりするのですが」
ジャーマはそう言って周りを見回すが人の気配はない。
「皆さん採掘場の中にいらっしゃる、ということでしょうか」
私の質問に対し、ジャーマは顎に手を置いて考え込む。
「可能性はあると思いますが、採掘は交代制です。朝昼夜と分かれているはずなので、いつもは休憩中の方とお会いして話したり手紙を渡したりしていたのですよ」
「何か緊急事態が起こったのかも知れません」
フブキの一言に私もソラもジャーマも頷いた。
「事故が起きたのかもしれませんし、急いで採掘場に行ったほうがいいかもしれませんね」
動く準備をし始めるジャーマをソラも片付けを手伝っている。
私も片付けようと立ち上がると、フブキに肩を掴まれて耳打ちされた。
「可能性の話だが、リビ。戦えるか」
フブキの表情は真剣で何かを感じ取っているらしかった。
「今使える魔法は麻痺とルリビの効果ちょっと、というところですかね」
私がポケットに入れていたルリビを見せるとフブキは驚き半分呆れ半分のような顔をした。
「ルリビ持ち歩いてるやつ初めて見たな。一応魔法を使う準備をしておいてくれ。嫌な予感がするんだ」



フブキの言葉に頷いて私達は採掘場へと急いで向かった。
その嫌な予感というものは的中したらしく、採掘場の洞窟の入口には人が倒れていた。
ジャーマは直ぐ様駆け寄って採掘者の人だと確認した。
「大丈夫ですか!?一体何が…」
鋭い切り傷が胸に3本入っていて、血が絶え間なく流れていく。
その傷を見て息を飲んだフブキを私は見逃さなかった。
でもそのことについて聞いている場合でない。
「フブキさん、光魔法の治癒が使えるはずですよね!?やってみてくれませんか」
「無理だ」
私の言葉に有無を言わさず即答したフブキは険しい表情をしている。
「俺の魔法は弱すぎる、彼の傷を治すことは出来ない」
地面に広がっていく赤い血が水溜りのようになっていく。
呼吸がどんどん浅くなって、そうして死んでしまう。
私は鞄から魔力を増幅する薬草を取り出した。
風上の村でソラとソルムが取ってきてくれていた残りだ。
乾燥させてドライ植物にしていても効果は変わらないから、持ち歩いていたのだ。
「フブキさんに魔力増幅の効果を付与します、時間がありません、やりましょう」
「しかし」
「私も魔法はめっちゃくちゃ弱いです!!でも魔力の増幅が出来るのは私だけ、治癒の魔法を使えるのはフブキさんだけです」
止まらない血に視線を落とし、フブキは頷いて男性の傷に触れた。
白い光はぼんやりと男性を照らす。
私も薬草を口に押し込んで、フブキの背に手を翳す。
増幅だけをフブキに付与する。
止まらない血、次第に消えていく命の灯火。
淡い黒い光と淡い白い光。
私とフブキの魔法は本当に弱い。
すると、ジャーマも倒れている男性に手を翳した。
「傷口を焼いて止血を試みます、その方があなた方の魔法も効果を発揮するでしょう。人に向けたことは、ありませんが」
ジャーマの手は震えていたが、ここにいる誰よりも魔力があった。
赤い炎で傷口を焼きつつ、フブキの治癒で内臓の破損を修復する。

ジャーマの火のおかげで血が止まり、フブキの治癒でどうにか一命を取り留めた男性をソラに乗せてもらい、ジャーマと共に村に降りてもらうことになった。
「ソラ、村までお願いね」
「キュ!」
自信満々のソラの体はふわりと浮かび上がる。
ジャーマは心配そうにソラから身を乗り出した。
「本当に二人で洞窟の中を確認するおつもりですか?私達が警備隊を連れてくるまで待っていては」
「他にも怪我人がいるかもしれません。状況を把握するためにも私とフブキさんで中に入ります。警備隊や救護できる方を連れてきてもらえると助かります」
「分かりました、太陽の国にも連絡を取って出来るだけ早く戻ってくるので無茶はしないで下さい」
ソラが飛び立ち、私とフブキは洞窟を進む。
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